【アルファロメオ ステルヴィオ試乗】え、これディーゼルなの?鋭く官能的な走りは常識破り
&GP / 2019年4月8日 19時0分
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【アルファロメオ ステルヴィオ試乗】え、これディーゼルなの?鋭く官能的な走りは常識破り
アルファロメオ、お前もかーー。「ステルヴィオ」の日本仕様にディーゼルエンジン搭載モデルが加わると聞いた時、最初に抱いたのはそんな気持ちだった。
アルファロメオといえば、イタリアが誇る“官能的な走り”が自慢のブランド。過剰ともいうべき気持ちよく曲がるハンドリングフィールに、回せば回すほど爽快感を感じられるエンジンを組み合わせるのが常套手段の、運転するだけで元気が出てくる乗り味の持ち主。いわば“走るエナジードリンク”とでもいうべき存在だ。
もちろん、低回転域でのトルクが太いディーゼルエンジンと、SUVなど車体が重いクルマとの相性がいいのは十分理解しているし、ディーゼルエンジンは燃費がいい(ステルヴィオではガソリンエンジン車に対して約45%も燃費が向上!)上に、燃料となる軽油の単価が安いから、ランニングコストが安く済む。また、購入時などの税金面で減税や免税を受けられる上、輸入車の多くは同じ装備内容のガソリンエンジン車より車両価格を安く設定しているから、買い得感が高い。そうした数々のメリットは認めるが、でも、アルファロメオのディーゼルなんて…。
■世界最軽量のディーゼルエンジンが走りに効く!
今回、ディーゼルエンジン搭載モデルが追加されたステルヴィオは、アルファロメオにとって初めてのSUV。日本では2018年夏から販売がスタートしている。
アルファロメオはそれまで、SUVに対して関心がなかったのか、同ブランドのラインナップにSUVは存在していなかった。なぜならアルファロメオは“背の低いスポーティなクルマ”こそが、昨今のアルファロメオのブランド価値と捉えていたからだ(かつては背の高い商用車を手掛けていたこともあったが…)。しかし世界的なSUVブームは、アルファロメオの考えを一変させ、ステルヴィオを作り出した。その存在を知った時、筆者は「アルファロメオ、お前もか」という思いを抱いたことを覚えている。
ステルヴィオのボディサイズは、全長4690mm、全幅1905mmと大柄で、マツダ「CX-5」(全長4545mm×全幅1840mm)よりひと回り大きく、BMW「X3」(全長4720×全幅1890mm)辺りが直接的なライバルとなる。大柄な分、キャビンのスペースはゆったりしていて、前後シートともに居住性が高い。この辺りはボディサイズの恩恵をしっかりと感じられる部分だ。
とはいえ、大柄なSUVでも走りにこだわるのは、やはりアルファロメオ。2017年9月には、“スポーツカー開発の聖地”といわれる、1周約20kmのドイツの過酷なサーキット・ニュルブルクリンクにおいて、量産SUVとして世界最速のラップタイム、7分51秒7を刻んでいる。記録を打ち立てたのは、ステルヴィオの高性能バージョン「クアドリフォリオ」だが、ニュル最速のSUVと聞けば、優れた走行性能の持ち主であることをイメージできるだろう。ちなみにステルヴィオのタイムは、2018年末、メルセデスAMGの「GLC 63S」に破られてしまったが、今なお世界最速レベルのSUVであることに変わりはない。
ステルヴィオの基本構造はセダンの「ジュリア」とほぼ共通で、前後重量配分はスポーツカーの黄金比である50:50。駆動方式は後輪駆動ベースの4WDで、後輪駆動を基本とし、電子制御によって必要に応じて前輪へと駆動トルクを送る“トルクスプリット式”を採用する。SUVでありながら、居住空間を広げられるなど、パッケージング面で有利な前輪駆動プラットフォームを採用しなかった理由は、気持ちのいいハンドリングフィールと、アクセルワークでコーナーを駆けぬける楽しさを追求するため、と謳われている。
そんなステルヴィオに新設定されたのが、排気量2142ccの4気筒ディーゼルターボ。“アドブルー”と呼ばれる尿素水による化学反応で、排出ガスを浄化している。このエンジン、アルファロメオのディーゼルとしては初めてエンジンブロックをアルミ製とし、エンジン単体で155kgという、最高出力160馬力以上の2〜2.2リッターディーゼルエンジンの中で、世界最軽量を実現している。
アウトプットは、3500回転で210馬力の最高出力を生み出し、最大トルクは1750回転で47.9kgf-mを発生。停止状態から100km/hまでの加速に要するタイムは6.6秒と、非常に力強いユニットだ。
■ディーゼルエンジンなのに回して楽しい!
経済性に優れ、力強いのは認める。けれど、エンジンフィールはアルファらしく楽しいのか? ステルヴィオのディーゼル仕様で心配だったのは、まさにそこ。いかに優秀なエンジンであっても、楽しくなければアルファロメオとしての魅力に欠けるからだ。
結論からいえば、ステルヴィオ・ディーゼルの楽しさは、期待を大きく上回るものだった。何より驚いたのは、高回転域(といってもディーゼルエンジンなので、3000回転超の領域から)でもパワー感が失われないこと。アクセルペダルを踏み込んでエンジンを回す喜びを、ディーゼルエンジンでもしっかり味わえる。これはちょっとした常識破りだ。
近年、マツダやBMWの4気筒ディーゼルエンジンが高い評価を得ているが、いずれも高回転域では、パワーやトルクの頭打ちが気になる。ガソリンエンジンのように、回転を上げるとググッと力強さが盛り上がっていくのではなく、ある程度の回転になると、スーッという加速の伸びが失われてしまうのだ。低回転域が力強いため、加速の伸びが失われる感覚がより強く感じられるのも事実。4気筒のディーゼルエンジンは、高回転域まで回しても楽しくない、というのが、ある種の常識となっていた。
しかし、ステルヴィオのディーゼルエンジンは、低回転域では通常のディーゼルエンジンと同様、ググッとくる力強いトルクを感じられ、さらに、エンジン回転を高めていっても、頭打ち感にガッカリすることなく、力強さが“盛り上がる”。特に、ドライブモードを「N(ナチュラル)」、「A(アドバンスドエフィシエンシー)」、「D(ダイナミック)」から選べる“Alfa DNA”でDモードをセレクトすれば、エンジンの反応がひと際シャープに感じられる。
こうしたアクセルペダルを踏み込む歓びは、まさにアルファロメオならでは。アルファロメオのエンジニアたちは、自分たちに求められているものが何なのかをしっかり理解しているのだ。
ちなみに、ディーゼル車を語る上で必ず話題に上る振動と音だが、振動に関しては全く気にならなかった。一方の静粛性は、とびきり静か、というわけではないものの、それなりに良好。走り出してしまえば、全く気にならないレベルだった。
■軽快なフットワークはディーゼルでも健在!
一般的に、ディーゼル車はエンジン単体の重量を重いため、ガソリン車に比べてフットワークが鈍重に感じられるケースが多い。ガソリンエンジンを積むステルヴィオは、コーナーへと進入する際、SUVとは思えないほどの素早さでスッと切り込んでいくのが美点だったため、それがディーゼル仕様ではスポイルされているのではないかと、正直、不安だった。しかしステルヴィオ・ディーゼルは、そうした鈍さが皆無。ガソリン車と同じく、SUVとしては最高レベルのクイックな挙動を楽しめる。
それは、50:50の前後重量配分や低い重心高、そして、世界最軽量のエンジン単体といった、物理の原則を味方につけたメカニズム類の賜物。曲がることに関しても、ディーゼルエンジン搭載によるウィークポイントは見つけられなかった。ステアリングコラムに備わるシフトパドルの操作感も良く、積極的にマニュアル変速しながら走りを楽しみたくなったほどだ。
そして最後に、ステルヴィオ・ディーゼルでやはりうれしいのが、経済性の高さだ。ディーゼルエンジンを積むグレード「2.2ターボディーゼルQ4」の価格は617万円。これは装備類が同レベルのガソリン仕様「2.0ターボQ4」の655万円に対し、38万円も安い。そこへ免税や減税なども加味すれば、購入時の総額はガソリン仕様と比べ、60万円以上も安くなる。その上、燃料代を始めとするラインニングコストも安いのだから、オーナー予備軍にとってはとても魅力的な選択肢となるだろう。
「アルファロメオにディーゼルなんて似合わない」。このクルマに接する際は、そうした思い込みや常識を、まずは捨てることだ。ステルヴィオ・ディーゼルは「ディーゼルだから」という偏見なしに接すれば、しっかりアルファロメオらしさを実感できる1台だ。
<SPECIFICATIONS>
☆2.2ターボディーゼルQ4
ボディサイズ:L4690×W1905×H1680mm
車重:1820kg
駆動方式:4WD
エンジン:2142cc 直列4気筒 ディーゼル ターボ
トランスミッション:8AT
最高出力:210馬力/3500回転
最大トルク:47.9kgf-m/1750回転
価格:617万円
(文/工藤貴宏 写真/&GP編集部)
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