スーパーカーも街で気軽に乗れる時代!アウディ「R8」は官能性と日常性との融合
&GP / 2019年4月22日 19時0分
スーパーカーも街で気軽に乗れる時代!アウディ「R8」は官能性と日常性との融合
スーパーカーという響きは、クルマ好きにとって特別なもの。
まるで地をはうかのように低く幅広いボディ、美しく人の目を惹きつけるデザイン、ハイパワーなエンジン、演出が盛り込まれたエキゾーストノート、そして何より、オーラや雰囲気といった言葉では表しにくい存在感…。それらを備えたスーパーカーには誰もが憧れるけれど、実際に時間をともにできる人はごく限られる。そういう意味で、やはり特別な存在なのだ。
ドイツのプレミアムブランド・アウディがラインナップする「R8」は、まさしく、そんなスーパーカーカテゴリーに属す1台だ。初代がデビューしたのは2007年。1670万円(当時)というエントリープライスで、「世界で最も手の届きやすいスーパーカー」として話題となったことを覚えている人も多いだろう。
■背後にV10エンジンを搭載するミッドシップ4WD
フルモデルチェンジを受け、2016年3月に日本での販売がスタートした現行のR8は、初代モデルに存在したV8エンジン搭載グレードを廃止し、V10エンジン仕様だけの設定となった。その結果、ランボルギーニ「ウラカン」やフェラーリ「488GTB」、マクラーレン「570Sクーペ」、そして日本のホンダ「NSX」がガチンコのライバルとなっている。
R8に搭載されるのは、5.2リッターのV型10気筒自然吸気エンジンで、イマドキ珍しく、多気筒の自然吸気エンジンにこだわり、その結果、標準仕様は540馬力、今回試乗した「プラス」と呼ばれる高性能モデルでは、610馬力というハイパワーを発生する。
そんなR8のハイライトといえば、“ASF(アウディ・スペース・フレーム)”と名づけられた、アルミ素材を中心とした強固なフレームにアルミパネルを貼ることで構成された軽量な車体。エンジンを乗員の後ろに配置するミッドシップレイアウトを採用するなど、エンジンやパッケージングなどは、スーパーカーの王道的な作りに沿っている。ちなみに現行モデルのトランスミッションは7速のデュアルクラッチ式で、駆動方式は日本未発売の特別なグレードを除き、フルタイム4WDとなる。
■兄弟モデルのランボルギーニとは異なる設計思想
公式アナウンスこそないものの、R8には広く知られた秘密がある。それは、ライバルともいうべきランボルギーニのウラカンと、車体やエンジンといった基本構造を共用しているということ。ランボルギーニはイタリアのスーパーカーブランドだが、実はアウディと同様、現在はフォルクスワーゲンの傘下に収まっており、立ち位置としてはアウディと深い関連がある(今後はアウディから離れ、同じフォルクスワーゲングループ内のポルシェとの関連が深まる見込み)。
しかしながら、実際に2台を乗り比べてみると、アウディとランボルギーニのクルマに対する考え方がしっかりと製品に落とし込まれており、それぞれの方向性はかなり異なるのが面白いところだ。
R8とラウラカンに共通するのは、走りの楽しさ、というよりも、刺激の強さだろう。スターターボタンを押して火が入るのと同時に、「ヴォン!」という音を伴って始動するエンジンは、まるでドライバーを歓迎してくれているかのよう。その響きは、多気筒の自然吸気エンジンらしい共鳴で、味わい深いのはいうまでもない。特に、始動直後などアイドリングの回転数が高い時は、その音だけで気分が高揚するほどだ。
そこからアクセルペダルを踏み込んで走り始めれば、まるでカタパルトから放たれる戦闘機のように勢いよく加速する。エンジンの回転が高まるに連れ、車内外には盛大なサウンドが響き渡り、パワーがどんどん盛り上がる。そうした感覚が、ドライバーを魅惑の世界へと招き入れてくれるのだ。大排気量の自然吸気エンジンならではの官能的なサウンドは、ターボ化されたフェラーリの488GTBやマクラーレンの570Sクーペ、そしてホンダのNSXではなかなか味わえないものだ。
高速時の走行安定性と、スラロームなどの細かいターンにおける俊敏性が両立されているのも、最新R8のすごさといえる。
先代のR8は、ランボルギーニとの差別化を図るためか、高速域での安定性を重視し過ぎた感があり、俊敏性に欠ける印象があった。新型はその辺りのバランスが最適化されており、優れた回頭性を武器に、タイトなコーナーが続く箱根の峠道を、まるで水を得た魚のようにスイスイ走り抜けていく。
■R8からはアウディの設計思想を濃密に感じられる
一方、R8がウラカンと明確に異なるのは、日常における使い勝手の良さだ。例えば視界。前方視界はさほど変わらないが、後方視界、特に斜め後方の視界は明確に異なる。斜め後方がよく見えないウラカンとは違って、R8は見やすくて運転しやすく、その上、車両感覚もつかみやすい。
また、段差を乗り上げる際も、フロントサスペンションにリフター(車高調整機能)が付いているとはいえ、車高が低過ぎて日常使いでは常にヒヤヒヤせざるを得ないウラカンに対し、R8はかなり大きな段差でも不安なく通過できる。極端な話をすると、コンビニへの買い物も気軽に行けちゃうほど日常性が高いのだ。こうした部分には、アウディとランボルギーニの設計思想の違いが如実に表れている。
ランボルギーニのウラカンを始めとする多くのスーパーカーは、かつてほどじゃじゃ馬ではなくなっているものの、日常的に付き合うにはそれなりに神経を使う必要があるし、不便も感じる。その点、アウディのR8は、走りの気持ち良さや見た目の派手さこそスーパーカーの王道でありながら、日常使いでもかなり付き合いやすいクルマに仕立てられている。
見た目はとがっているけれど必要以上にデリケートな部分はなく、乗っても驚くほど疲れない。そんな毎日付き合える、地に足の着いたスーパーカーこそがR8であり、クワトロを始めとする先進技術を武器にモノづくりを行ってきたアウディの思想を、このクルマからは濃密に感じられる。
<SPECIFICATIONS>
☆クーペ V10プラス 5.2TFSIクワトロ
ボディサイズ:L4425×W1940×H1240mm
車重:1670kg
駆動方式:4WD
エンジン:5204cc V型10気筒 DOHC
トランスミッション:7速AT(デュアルクラッチ式)
最高出力:610馬力/8250回転
最大トルク:57.1kgf-m/6500回転
価格:2915万円
(文/工藤貴宏 写真/&GP編集部)
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