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「軽だからね」の言い訳ナシ!個性的な“顔”がウリの三菱「ekクロス」は走りもいいぞ

&GP / 2019年4月27日 18時0分

「軽だからね」の言い訳ナシ!個性的な“顔”がウリの三菱「ekクロス」は走りもいいぞ

「軽だからね」の言い訳ナシ!個性的な“顔”がウリの三菱「ekクロス」は走りもいいぞ

「何これ、カッコいいじゃん!!」――。三菱自動車の新しい軽自動車「ek(イー・ケイ)クロス」と対面した時の第一印象は、まさにその言葉でした。

デビュー前から、「デリカD:5」に通じるデザイン要素を採り入れてくるのでは? との情報が伝わってきてはいましたが、フロント回りは「まさに兄弟!」といったルックスです。

ということで、SUVテイストの強いエクステリアこそ予想通りではありましたが、実際にekクロスと対面してみると、思っていたよりも二枚目。しかも、触れてみたり、走ってみたりすると、大胆さを感じさせる顔つきをも上まわる、驚きに満ちた魅力的な1台だったのです。

■三菱自動車らしいSUVテイストの強いたたずまい

3月28日、三菱自動車の軽自動車「ekワゴン」が6年ぶりにフルモデルチェンジし、販売がスタートしました。ekシリーズとしては4代目。日産自動車とのジョイントベンチャー・NMKVが企画・開発を行ったモデルとしては2代目となります。

今回ご紹介するekクロスは、そんなekワゴンをベースとしたSUVテイストのクロスオーバーモデル、というのが大枠ですが、デリカD:5と共通のイメージでまとめられたエクステリアを見れば、そんな説明など不要かもしれませんね。

ekクロスのエクステリアは、フロント回りやリアバンパーこそekワゴンや共同開発車・日産「デイズ」とは異なりますが、それ以外の外板部品は実は共通。つまりボンネットも3モデル共通なので、「各車のキャラクターを限られたパーツで上手く表現したものだな」と感心させられます。

ちなみに、ekクロスのデザインコンセプトは“THE CUTE BEAST”、つまり、愛らしい獣なのですが、三菱車のフロント回りのデザインコンセプトである“ダイナミックシールド”をベースに、縦型3灯式LEDヘッドライトとその上にポジションランプを配しており、なかなか勇ましいたたずまい。さらにホイールアーチなどには、専用のデカールを貼ることで、SUV的な力強さを表現しています。

そして、エクステリアにおいて「これは頑張ったな!」と思うのがボディカラー。ekクロスにはサンドイエローメタリック×ホワイトソリッドを始めとするツートーンカラーが5パターン、さらにモノトーン(単色)カラーが6色設定されています。ホワイトパールやブラックマイカといった、定番のモノトーンももちろん用意されますが、大半は若々しくエネルギッシュな色調。ボディカラー選びが楽しくなりそうですね。一方、ekクロス、ekワゴン、デイズにはそれぞれ異なるカラーも用意されていますから、製造ラインはさぞや大変なのでは?…と考えてしまうのも事実。実際、開発を担当されたデザイナーの方によると、製造現場にはかなり頑張ってもらったそうです。

またインテリアも、標準仕様は黒を基調としたファブリックシートですが、上位グレードにはオプションとして、合成皮革×ファブリックの“プレミアムインテリア”も設定されています。これはアウトドア向けのカジュアルウエアを思わせる色合いと風合いで、ekクロスのイメージにまさにピッタリ。

レザーやスエード調生地のように高価な素材ではないものの、デザイナーのセンスで見事に一本を勝ち取ったという印象です。ちなみに、こうした色使いやテキスタイルの選択の上手さだけでなく、ダッシュボード回りの質感も上質。運転席に座ってしまうと、横幅さえ意識しなければ軽自動車だと感じることのない出来栄えです。

■ボディサイズは変わらずとも使い勝手は大きく向上

軽自動車の場合、モデルチェンジの際には独特の難しさがあります。それは、ボディの外寸に明確な規格があり、もはや車体の拡大ができない、ということ。その寸法を守りながら、使い勝手や安全性をいかに向上させるのか? これが実はとても難しいのです。

ちなみに、ekクロスは全長3395mm、全幅1475mm、全高はFF仕様が1640mm、4WD仕様が1660mmと、まさに軽自動車規格いっぱいのボディサイズ。しかし新型では、ホイールベースを65mm延長することで、室内空間を大きく拡大しています。具体的には、リアシートのヒザ回りが70mm拡大。さらに、リアシートには前後スライド機能が備わっており、身長180cmを超える筆者でも、後席でゆったりと足を組むことができました。

またリアシートは、荷室側からスライドレバーで前後に動かせるので、キャンプ用品やベビーカーといった大き目の荷物を積む時も、“リアのドアに回ってシートを前後させて…”という手間がありません。

些細なことではありますが、スライドレバーもシート上部の分かりやすい位置に配置されるなど、使い勝手も良好です。

■SUVの三菱自動車らしく悪路走破力にもこだわる

特徴的なエクステリアと並んで、ekクロスのキモとなるのがその走り。搭載されるのは新開発エンジンで、ekクロスには排気量659ccの直列3気筒ターボと、その自然吸気仕様が用意されますが、いずれも電気モーターとリチウムイオン電池とを組み合わせたマイルドハイブリッド仕様となっています。ちなみに、トランスミッションはCVTのみの設定ですが、AT車の変速時のように、速度と回転数に合わせたステップや段階的な加速音を再現し、CVT特有の違和感を解消しています。

エンジンスペックは、ターボ仕様が最高出力64馬力/最大トルク10.2kgf-m、自然吸気仕様が同52馬力/同6.1kgf-mという値。数字だけを見れば、いずれもトルクが微増した程度に見えますが、いずれも最大トルクの発生回転数が引き下げられていて、しかもトルクが持続するようなセッティングとなりました。つまり、軽自動車にとってツラいシーンのひとつである、発進加速や中間加速の伸びが改善されているのです。

そのルックスから想像できる走破力についても、期待を裏切ることはありません。FF仕様と4WD仕様とが設定されますが、雪道やぬかるみでの発進をサポートする“グリップコントロール”が、駆動方式を問わず全グレードに採用されています。これは、片側の駆動輪が空転すると、スリップした駆動輪をブレーキで制御し、グリップしている駆動輪の駆動力を確保することで発進をサポートするシステム。ekクロスはオフロードを意識したクロスカントリー車ではありませんが、こうしたデバイスにより、雪道やキャンプ場などで感じる不安はかなり軽減されるのではないでしょうか。

■街中から高速道路まで快適なドライブ

予習が済んだところで、ekクロスでテストドライブへと出掛けてみましょう。

まずキーを受け取ったのは、自然吸気モデル。結論からいえば、その走りに全く不満はありません。スタートから街中の流れに乗る程度の加速であれば、アクセルペダルを大きく踏み込む必要はありませんし、加速中の騒音もしっかり抑えられています。いわゆる、高級車的な静粛性とは異なり、エンジン音そのものは車内へ侵入してきますが、高周波音を始めとする雑音は程よく抑えられているので、不快に感じることがないのです。

では、ターボ車は不要なのか? といわれれば、こちらはまさに、パワーの差額がしっかり余裕へと活かされている、といったイメージ。例えば、赤信号から青信号に変わった際のスタートであれば、流れをリードすることができますし、高速道路への進入や車線変更といった中間加速も、伸びやか、かつパワフルで心地良さを感じます。64馬力と絶対的なパワーには限りがありますから、スポーツカーのように背中に加速Gを感じる、といったような加速力ではありませんが、街中から高速道路まで、不満を感じることなく快適なドライブを楽しめます。

そして何より、注目すべきは、高速道路での快適ドライブをサポートしてくれる“MI-PILOT(高速道路同一車線運転支援技術)”がオプションで用意されていることでしょう。これは、前走車との距離を保つ“ACC(アダプティブクルーズコントロール)”と、白線を検知して車線の中央部を走るサポートを行う“LKA(車線維持支援機能)”で構成される運転支援システム。車間距離キープは約30~100km/hの領域で可能となっており、渋滞時は完全停止からの復帰機能も備わっています。

昨今、普通車では同様のシステムが設定されるクルマが増えており、急速に普及しつつありますが、軽自動車への設定は、まだまだ極めて少数。設定されただけでもありがたいかな、という程度に思っていましたが、実は想像以上の完成度でした。

パワーの面では不利な軽自動車ではありますが、加減速のタイミングや制御がとてもスムーズで、何より、車線中央を走る手助けを行うLKAの制御も自然。白線に合わせてジワリと正確にステアリング操作が行われます。正直にいうと「軽自動車では長距離を走る機会も少ないだろうし…」と思っていましたが、むしろ「MI-PILOTでドライブの疲労が軽減されるから遠くまで行ってみようか」という気持ちになりそうです。

ekクロスは個性的なルックスゆえ、遊び心を重視したレジャービークルかと思いきや、走れば走るほど、その内面は真面目さや作りの良さを感じられるクルマだと感じました。では、気になる部分はないのか? といわれれば、15インチタイヤを履く上位グレードの乗り味がやや硬いかな、と感じたことでしょうか。今回の試乗車はターボ/自然吸気ともに4WD仕様で、足回りの設定がFF仕様とは異なっていることも、そうした印象を強くさせたのかもしれません。

もちろん、決してスポーティモデル的なガチガチ感ではありませんし、好みのレベルではありますが、例えば、お子さんといっしょに家族でお出掛け、といったシーンが多い人なら、14インチの方が同乗者はより快適に過ごせそうです。ここは、THE CUTE BEAST=獣ではなく、ウサギくらいの足腰といった設定があればなぁ、と思いました。ちなみに、ekワゴンに用意される14インチモデルとブレーキなどは共用なので、購入後のインチダウンももちろん可能。ただしこの辺は、好みや用途、仕様によって印象が変わると思いますので、まずは一度、ご試乗されることをおすすめします。

<SPECIFICATIONS>
☆T(4WD)
ボディサイズ:L3395×W1475×H1660mm
車重:920kg
駆動方式:4WD
エンジン:659cc 直列3気筒 DOHC ターボ+モーター
トランスミッション:CVT
最高出力:64馬力/5600回転
最大トルク:10.2kgf-m/2400~4000回転
価格:176万5800円

<SPECIFICATIONS>
☆G(4WD)
ボディサイズ:L3395×W1475×H1660mm
車重:910kg
駆動方式:4WD
エンジン:659cc 直列3気筒 DOHC+モーター
トランスミッション:CVT
最高出力:52馬力/6400回転
最大トルク:6.1kgf-m/3600回転
価格:168万4800円

(文&写真/村田尚之)

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