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ムード重視のヤワじゃない!新しいBMW「Z4」は走りを語れるリアルスポーツカーだ

&GP / 2019年5月19日 19時0分

ムード重視のヤワじゃない!新しいBMW「Z4」は走りを語れるリアルスポーツカーだ

ムード重視のヤワじゃない!新しいBMW「Z4」は走りを語れるリアルスポーツカーだ

今回のフルモデルチェンジで3代目へと進化したBMW「Z4」は、今、日本のクルマ好きたちの間で高い注目を集めているモデルだ。

その理由は、とある日本のスポーツカーと深い関係にあるため。そのスポーツカーとは、先日、晴れて日本で正式発表となったトヨタの新型「スープラ」だ。新型スープラは、BMWとトヨタとの共同開発によって生まれたモデルであり、今回紹介するZ4と、基本メカニズムを共用しているのである。

■共同開発車のスープラとは全く異なるキャラクター

共同開発車であり、基本メカニズムを共有するZ4とスープラだが、両車のキャラクターは全く異なる。“2人乗りのスポーツカー”という基本的な立ち位置こそ同じだが、Z4はオープンカーだし、スープラは固定式のルーフを備えたクーペ。日本における価格帯も、ベーシックモデルで80万円ほど、トップグレードでは150万円ほどZ4の方が高価となる。

運動性能を左右するパッケージング面では、走りの根本的な特性を決定づける“ホイールベース(前後輪の間隔)”や“トレッド(左右輪の間隔)”が共通。しかし、スタイリングは全く異なっていて、見るからに違うクルマに仕上がっている。この辺りは同じ共同開発車であっても、トヨタ「86」とスバル「BRZ」との関係とは大きく異なる。

つまりZ4とスープラは、車体骨格やパワートレーンといったクルマを作る上での“基本のキ”こそ共有しているが、仕上げは全く別モノ。もちろん、開発チームは別々だし、走りの味つけも異なっている。

■スープラとの統一で得た走り重視のパッケージング

新型Z4は、Z4としては3代目となるが、前身である「Z3」の時代から数えると、今回で4代目に当たる。

振り返ってみると、Z3が狙っていたのはそもそも、世界的に大ヒットを記録したマツダ「MX-5ミアータ(日本名:ロードスター)」のマーケットであり、リーズナブルで気軽に乗れる、雰囲気を味わうためのオープン・スポーツカーだった。

そのため低価格を実現すべく、プラットフォームには“使い古されたセダン用”のそれ、当時としても旧型となる「3シリーズ」用のものを使っていた。それから四半世紀ほどの時が流れた今、新しいZ4が世界のスポーツカーと対等に戦えるだけの走りのポテンシャルを持つ、最新のプラットフォームを手に入れたのは大きなトピックだ。

先代モデルに対し、全長は85mm伸ばされているが、ホイールベースは25mm短縮。全幅は75mm広げられ、その分、トレッドもフロントが100mm、リアが75mm拡大されている。それは“スープラとの統一”による恩恵でもあるが、いずれにせよ、コーナリング時における機敏さを格段に高めるパッケージングになっていることがうかがえる。

また、先代Z4の開閉式ルーフは金属製だったが、新型ではソフトトップへと先祖返り。これは単に、軽量化というだけでなく、低重心化にも効いている。

ちなみに、新しいルーフはもちろん電動開閉式で、開閉に要する時間は10秒ほど。約50km/h以下であれば、走行中にも開閉操作を行える。

■機敏過ぎる動きこそ最新スポーツカーの正攻法

Z4における先代から新型への進化。その真相は、雰囲気重視のスポーツカーから、リアルスポーツカーへの変貌、と表現してもいいだろう。

それを端的に表しているのが、スポーツカーの性能を示す指標のひとつである、ドイツの過酷なサーキット・ニュルブルクリンク北コースにおけるラップタイムだ。新型Z4は、難コースを7分55秒で走破したという。これは、同社のスポーツクーペ「M2コンペティション」の約3秒落ち。ボディ剛性の面で不利とされるオープンカーが、徹底的に鍛え抜かれた特別なスポーツクーペに匹敵する速さで走り切るという事実は、驚きとしかいいようがない。

日本仕様のZ4に用意されるパワートレーンは2種類。197馬力を発生する2リッター4気筒ターボエンジンを「sDrive20i」系、340馬力の3リッター6気筒ターボを「M40i」系に搭載する。今回試乗したのは、その後者だ。

真横から見た時、リアタイヤの直前かつ、驚くほど低い位置に配置されたシートの着座感は、2シータースポーツカーならではのもの。まるで、クルマの中心に低く座るかのような感覚のシートに座って走り出し、まず驚かされたのは、ドライバーの意のままに曲がるコーナリング時の挙動だ。

50:50の前後重量配分をキープした上でホイールベースを短くし、さらにトレッドを広げ、特にリアよりもフロントのトレッドを重点的に広げた新型Z4のディメンションは伊達じゃない。ハンドルを切れば、ドライバーの意図を汲み取るかのようにシャープに向きを変え、しかも、M40iに搭載される“アダプティブ・Mスポーツサスペンション”や、走行状態に応じて電子制御でデフギヤのロック率をフリーから完全ロックまで調整する“Mスポーツディファレンシャル”の効果もあって、不安定な挙動に陥ることはなく、心地良さを最大限に高めた上で、走りのすべてがバランス良くまとめられている。この辺りのセッティングは、新開発プラットフォームの面目躍如といったところだろう。

イマドキのスポーツカーにおいてハンドリング性能を高める正攻法といえば、ホイールベースとトレッドの比率など、ディメンションをできるだけ機敏に曲がるよう設定し、そこへ電子制御デバイスを加えることで、安定性を高めつつバランスを整えること。新型Z4に関しては、一部クルマ好きの間から「スタビリティコントロールをオフにした際の曲がり方や、限界域での挙動が機敏過ぎる」という声も出ているが、それは、考え方が古いといわざるを得ない。

電子制御デバイスがオンの状態で、バランスを整えて気持ち良く走れるようにするのが昨今のクルマ作りにおける常識だし、その方が走行性能を高められる。そもそも、せっかくのFR(後輪駆動)スポーツカーなのに、仮にスタビリティコントロール機能をオフにした際にもスピンしないような緩いハンドリングであれば、楽しくなさ過ぎる。エクストリームスポーツ競技などと同様に、究極の楽しさは、危険と紙一重なのだ(もちろん、スタビリティコントロール機能をオフにしなければ、危うさは顔を出さない)。

逆にいえば、そんな“スポーツカー論”が飛び交うほど、新型Z4はついつい走りを語りたくなる本格スポーツカーだということ。快適なオープンカードライブを楽しめる一方で、本格的なスポーツ走行もこなせる、楽しめる範囲の広いクルマともいえる。Z4と兄弟関係にある新型スープラの仕上がりも、非常に期待できそうだ。

<SPECIFICATIONS>
☆M40i
ボディサイズ:L4335×W1865×H1305mm
車重:1570kg
駆動方式:FR
エンジン:2997cc 直列6気筒 DOHCターボ
トランスミッション:8速AT
最高出力:340馬力/5000回転
最大トルク:51.0kgf-m/1600〜4500回転
価格:835万円

(文/工藤貴宏 写真/&GP編集部)

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