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専用設計×SUVスタイルでEVの夢広がる!ジャガー「I-PACE」は走りと広さに驚きます

&GP / 2019年6月10日 19時0分

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専用設計×SUVスタイルでEVの夢広がる!ジャガー「I-PACE」は走りと広さに驚きます

2018年秋に日本で発表されたジャガー「I-PACE(アイ・ペイス)」を、横浜市内の一般道で試乗した。

I-PACEは新しい。ブランド初のEV(電気自動車)となるこのモデルは、既存モデルをEV化したのではなく、新開発のEV用プラットフォームを用いた意欲作で、フロントサスペンション回りを同じジャガーの「F-PACE(エフ・ペイス)」と共有する以外は、専用設計となっている。

床下には、432パウチセルからなる総電力量(バッテリー容量)90kWhのリチウムイオンバッテリーを搭載し、前後車軸それぞれに同じモーターを配置し、4輪を駆動する。

■車内に乗り込んだらI-PACEの広さにまず驚いた

I-PACEは広い。エンジンがないからボンネットは短く、キャビンが広い。独立したラゲッジスペースを持つセダンではなく、ハッチゲートを備える。サイズは、全長4695mm、全幅1895mm、全高1565mm、ホイールベース2990mmと小さくはない。

“PACE”の名が付いていることから分かる通り、このクルマは「E-PACE(イー・ペイス)」やF-PACEと同様に、ジャガーSUVの一員なのだ。とはいっても「全高が高いのはバッテリーを搭載するためであって、室内の広さ、高さはそれなりだろう」と高をくくっていたが、乗り込んだら広くて驚いた。考えてみれば、バッテリーはあるものの、巨大なエンジンもトランスミッションもない。プロペラシャフトもないからフロアはフラットだ。

荷室はリアに656L、フロントに27Lの容量が確保される。

さらにI-PACEは、空気抵抗も小さい。エアロダイナミクスを追求したスタイルであり、フロントグリルから取り込まれた空気は、補器類を冷やした後、ボンネット上のスクープから排出されてフロントガラス、ルーフをなぞってダウンフォースを生み出し、リアへ行くに従って絞り込まれ、最後尾がスパッと切り落とされた“コーダトロンカ”のリアデザインによって、突如クルマと分離する。Cd値(空気抵抗係数)は0.29。

I-PACEは速い。前後のモーターがともに全力を発揮した場合、つまり、システム全体では、最高出力400馬力、最大トルク約71.0kgf-mを発生する。0-100km/h加速と呼ばれる、停止状態から100km/hに到達するまでの所要時間は4.8秒。停まった状態から勢いよくアクセルペダルを踏み込むと、背中を蹴られたかのように加速する。エンジンと違って、モーターは発進と同時に最大トルクを発揮する。だから、0-100km/h加速ではI-PACEより速いエンジン付き車両が多数存在するが、もしも0-30km/h加速や0-50km/h加速のタイムを計測したら、エンジン付き車両でI-PACEに勝てるクルマはグッと減るはずだ。EVは“最初”が異様に速いのである。

I-PACEは静かだ。そして走りは、徹頭徹尾滑らか。乗り込んでスターターボタンを押すと、メーター類が起動するだけで音を立てないし、振動もない。Dレンジに入れてアクセルを踏めば走り出すが、それでも音はナシ。速度を上げるとまずロードノイズが、さらに上げると風切り音がわずかに聞こえてくるようになるが、どちらも、エンジン音があればかき消されるレベルの音量に過ぎない。

I-PACEは実に軽快だ。重いバッテリーを大量に搭載するため、絶対的な車両重量は2230kg(エアサスペンション仕様は2240kg)に達する。にもかかわらず、軽快とはどういうこと!? と思われるかもしれないが、重いけれど、重心が低いのだ。例えば、F-PACEと比べると130mmも低い。加えて、50対50と理想的な前後重量配分となっている。

もちろん、パワフルなことも軽快に感じる要因のひとつなのは間違いない。EVの特性上、アクセルレスポンスがすこぶる良く、また、アクセルを戻すだけで強い減速Gを得られる。そして、ステアリングを切れば重心が低く、主要な重量物が車両の中央に集まっているため、回頭性が抜群に良い。

重量級のSUVとは思えないほど軽々とした身のこなしを見せるのだ。これは、I-PACEの特徴というよりも、フロアにバッテリーを置くEV全体の傾向といえる。

■I-PACEはほとんどの人のニーズをカバー

I-PACEは、イニシャルコストはともかく、ランニングコストは経済的だ。購入時に販売店で専用契約すれば、月額3240円で約7500カ所の充電スポットを利用できる。しかも、最初の1年間は、それが無料だ。

1充電当たりの航続距離は、国土交通省審査値の“WLTCモード”で438km、欧州検査機関測定値の“WLTPモード”で470km、最も厳しいアメリカの“EPAモード”では377kmと、いずれもEVとして最高レベルの航続距離を誇る。

が、バッテリーの総電力量が大きいから、エンジン付き車両が燃料を給油するのに比べると、充電に時間がかかる。欧州に存在する最大100kWの充電器を使えば、0%から80%まで約40分間で充電可能だが、日本に存在する同50kWの“CHAdeMO(チャデモ)”規格の充電器を用いた場合、約85分かかる。また、一般家庭(最大6kW)の200V電源を用いて普通充電した場合、0%から80%までに約10時間、100%までには15時間かかるのだ。

「満充電になるまで、そんなにかかるんだ!?」と、がっかりした人がいるかもしれないが、90kWhもの容量があるEVなら、充電のたびに80%に達することを目標とする必要はない。空いた時間に外では急速充電、自宅では普通充電をこまめに行う習慣が身につけば、一般的な使い方なら航続距離に不安を覚えることはないはずだ。

頻繁に長距離を連続走行する必要のある人には、I-PACEに限らず、EV自体が向いていないが、日本の乗用車ユーザーの1日の平均走行距離は、20kmに過ぎない。I-PACEはほとんどの人の使い方をカバーするはずだ。

■EVの普及は業界全体の取り組み次第

I-PACEは早くも人気者だ。“インターナショナル国際エンジン&パワートレーン・オブ・ザ・イヤー”において、“ベスト・エレクトリック・パワートレーン”、“ベスト・ニュー・エンジン”、“350-450PS”の3部門でタイトルを獲得。1番目、3番目はよいとして、2番目の部門でも賞を獲得したというのは、内燃機関も含めたパワートレーンの中で、ベストの出来栄えだった、ということだろう。そのほかI-PACEは、ヨーロッパ・カー・オブ・ザ・イヤーとワールド・カー・オブ・ザ・イヤーも受賞している。

気になる価格は959万円~。動力性能、快適性、新しいモノ特有のワクワク感…と、I-PACEそのものには、価格に見合う価値が備わっている。ここへ来て、1000万円級のEVが各社から徐々に出そろってきたが、売る側は大量に売れると見込んでいるわけではなく、いわゆるアーリーアダプターが面白がって飛びつくのを狙っている段階だ。仮に、大量に注文が入ったとしても販売店がクルマを確保できない。今後、クルマが売れたら充電施設も増えるだろうが、売れなければそのための投資もできない。日本車メーカーと輸入車インポーター、そしてサプライヤー、販売店を含めた国内自動車業界全体で、EVを好循環に持っていくことができるかどうか見ものだ。

<SPECIFICATIONS>
☆EV 400PS HSE(エアサスペンション仕様)
ボディサイズ:L4695×W1895×H1565mm
車重:2240kg
駆動方式:4WD
最高出力:400馬力/4250〜5000回転
最大トルク:71.0kgf-m/1000〜4000回転
価格:1162万円

(文/塩見 智 写真/ダン・アオキ)

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