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カワイイだけじゃないよ!新しいフィアット「500X」はクルマらしい走りが心地いい

&GP / 2019年6月23日 19時0分

カワイイだけじゃないよ!新しいフィアット「500X」はクルマらしい走りが心地いい

カワイイだけじゃないよ!新しいフィアット「500X」はクルマらしい走りが心地いい

デビューから10年以上が経過した今でも、高い人気を誇るフィアット「500」。一般的な輸入車とは異なり、価格面でもサイズ面でも気軽に乗れるクルマであり、キュートなスタイルと相まって、日本でも多くの人々から愛され続けている。

ここに紹介するコンパクトSUV「500X」は、そんな500の兄貴分のような存在。500の全長は3570mmと、軽自動車プラスα程度の大きさなのに対し、500Xは4280mmとひと回り大きい。全幅も170mm幅広い1795mmだから、500を軽自動車の日産「デイズ」に例えれば、500Xはコンパクトカーである「ノート」くらいの感覚。500に比べると大きいけれど、500Xもまだまだ手頃なサイズなのだ。

もちろん、500という名を冠していることからも分かるように、スタイリングを始めとするイメージは500のそれを継承。ヨーロッパや日本で爆発的にヒットしている500のイメージを上手に活用した、手堅く分かりやすい商品戦略を採っている。

■街乗りを意識して駆動方式はFFのみの設定

そんな500Xがマイナーチェンジを受け、ここ日本にも新型が上陸してきた。エクステリアはリデザインされ、バンパーを中心にアンダーガード風のデザインを強調。よりSUVらしい武骨なイメージへとリフレッシュされた。

パワートレーンは、“ファイアフライ”と呼ばれる新開発の1.3リッター直列4気筒ターボエンジンに、6速のデュアルクラッチ式トランスミッションを組み合わせる。駆動方式は、従来設定のあった4WDがラインナップから消え、FFのみの設定に。ちなみにインポーターのFCAジャパンによると、「今後のニーズ次第で4WD仕様の追加も検討する」ということだ。

そして装備類の充実で、新型は全体的に買い得感が高まった。エントリーグレードの「500X」は、300万円を切る298万円というプライスタグを掲げながら、本革巻きステアリングホイールやフロントのシートヒーター、クルーズコントロール、左右独立温度調整式のオートエアコン、“Apple CarPlay”や“Android Auto”に対応した7インチタッチパネル付きオーディオ、追突被害軽減ブレーキ、リアパーキングカメラなどを標準装備。コストパフォーマンスはかなり高い。

さらにこれが、334万円の上級グレード「500Xクロス」になると、LEDヘッドライト、レザーシート、フロントのパワーシート、パドルシフト、アダプティブクルーズコントロール、ブラインドスポットモニター、フロントパーキングセンターなども標準装備となる。

高速道路ではアクセルやブレーキを操作することなく前走車に合わせて速度を自動調整してくれるアダプティブクルーズコントロールがとても便利だし、夜の郊外を走る時には明るいLEDヘッドライトが安全運転をサポートしてくれる。しかも、室内の雰囲気が上質になるレザーシートまで備わるのだから、ベースグレードに対して36万円という価格差も、十分ペイできる内容だと思う。

■ファミリーカーとしての実力もハイレベル

インポーターであるFCAジャパンによると、500Xの想定ユーザーは「500からの乗り換え客がメイン。ライフスタイルの変化によって500では狭く感じるようになった人にとって、ベストな選択は500X」と位置づけている。

個人的にも、まさにその通りだと思う。500のリアシートははっきりいって、特に足下が狭く、大人が長時間、ラクに座れるような場所ではない。どちらかといえば、後席は荷物置き場のようなスペース。また、3ドアということもあって、リアシートへの乗り降りはかなりしづらい。例えば、お子さんがいる家庭を想定すると、後席に付けたチャイルドシートに子どもを乗せ降ろしするのはかなり億劫だし、さらに極小のラゲッジスペースは、畳んだベビーカーを積むだけでいっぱいになる。500をファミリーカーとして使うのは、かなり厳しいのである。

その点、500Xなら、リアシートには実用的なスペースが確保されているほか、5ドアだから乗り降りもしやすい。ラゲッジスペースだって、数値的には500の185Lに対し、350Lと大幅に容量アップ。

その結果500Xの車内スペースは、ファミリーユースでも問題ない空間となっている。

■走行フィールはどこか懐かしくアナログ的

まさに「500が小さく感じたら乗り換えればいいじゃないか!」といった位置づけの500Xだが、このクルマの魅力は、決してデザインやスペースだけではない。

例えば、新しいエンジン。1.3Lのファイアフライエンジンは、燃焼室形状の最適化や、フィアットの独自技術である“マルチエア”の進化により、最高出力は従来モデルに設定されていた1.4リッターターボ比で、11馬力アップの151馬力、最大トルクは4.0kgf-mアップの27.5kgf-mを発生する。さらに燃費は、同じく従来の1.4リッターターボエンジンと比べて約10%も向上するなど、スペック上は大きな進化を果たしている。しかしこのエンジンの真価は、そうした数値だけでは語れない領域にある。

イマドキのターボエンジンは、低回転域から厚いトルクを発生することで運転しやすく仕立てている一方、高回転域での盛り上がりや回転の伸び感に欠け、つまらなく感じるものが増えている。しかし、新しい500Xのエンジンは、回せば回すほどパワーがあふれ、運転していてアクセルペダルを踏み込むことが楽しくなる。最新のエンジンであるにもかかわらず、どこか懐かしいフィーリングの持ち主で、どこかアナログ的な魅力があるのだ。

それは、走行時の挙動も同様。新しい500Xのフットワークは、昨今のクルマが目標としている、しっとりとしたフラットライド感がイマイチで、上手に運転してやらないと、なかなかスムーズに走れない。そのためドライバーは、クルマと対話しながら走る感覚が求められる。こうした点も、最近のクルマから失われつつある、クルマ本来の魅力といえる。

クルマの白物家電化やコモディティ化が進んでいるとされる現代にあって、500Xはなんともクルマらしいクルマといえる。最近のクルマには運転する歓びがないとお嘆きのクルマ好きは、ぜひ一度、500Xのハンドルを握ってみることをお勧めしたい。

<SPECIFICATIONS>
☆クロス
ボディサイズ:L4280×W1795×H1610mm
車重:1440kg
駆動方式:FF
エンジン:1331cc 直列4気筒 ターボ
トランスミッション:6速AT(デュアルクラッチ式)
エンジン最高出力:151馬力/5500回転
エンジン最大トルク:27.5kg-m/1850回転
価格:334万円

(文&写真/工藤貴宏)

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