ガソリン車より魅力!?ボルボ「XC90」ディーゼルは静かでスムーズで長距離がラク
&GP / 2019年6月24日 19時0分
ガソリン車より魅力!?ボルボ「XC90」ディーゼルは静かでスムーズで長距離がラク
モノ選びの際、選択肢が多いと、その分、選ぶ楽しさを味わえる。自分にマッチしたアイテムをセレクトできる可能性が高まるし、ベストな選択ができた時の満足度はひとしおだ。
クルマ選びにおける選択肢といえば、ボディタイプやサイズ、車種などが挙げられるが、忘れてならないのがエンジンのバリエーション。同じクルマでも、ガソリンエンジン、ハイブリッド、ディーゼルエンジンなど、幅広い選択肢からパワーユニットを選べるクルマは、その分、アレコレ選ぶ楽しさを味わえる。
■ボルボの旗艦SUVに搭載すべく新機構を導入
ボルボで最も大きなSUV「XC90」も、パワーユニットの選択肢が多彩なモデルだ。搭載されるエンジンは、すべて2リッターの4気筒だが、標準仕様と高出力版という2タイプのガソリンターボと、ディーゼルターボ、そして、高出力版のガソリンエンジンにモーターと大容量バッテリーを組み合わせたプラグインハイブリッドをラインナップ。好みに合わせて選択できるラインナップが整っている。
そのうちディーゼルターボは、つい先日、ラインナップに加わったばかり。果たしてその実力はどれほどのものなのか? 山形県の酒田から東京まで、500kmのロングドライブでチェックした。
まずは、XC90に搭載されるディーゼルターボについて紹介しよう。
ひとクラス下のSUV「XC60」などに搭載されるエンジンと同じかと思いきや、XC90のそれは全くの別物だった。XC60に搭載されるのは、“D4”と呼ばれるエンジンなのに対し、XC90には“D5”と呼ばれるひとクラス上の新開発ユニットが搭載される。
エンジンの基本要素は、いずれも2リッターの4気筒と同じだが、D4が最高出力190馬力、最大トルク40.8kgf-mなのに対し、D5はそれぞれ235馬力、48.9kgf-mといった具合に、一段とパワフルな仕立てになっている。
さらにD5には、D4よりひと回り大きなターボチャージャーを採用するとともに、初期反応を良くしてターボラグを抑える“パワーパルス”と呼ばれる新機構などを搭載。そうしたD5の改良メニューは、大きく重いXC90への搭載を考慮してのものだという。
■D5ユニットをドライブして感じた3つの驚き
さて、実際にXC90のD5に乗ってみると、「あれっ?」という驚きが3つあった。
まずひとつ目は、アイドリング時においても、ディーゼルエンジン特有の“カラカラ音”が聞こえてこないこと。昨今のディーゼル車は、ディーゼルエンジンらしい音が目立たない傾向にあり、走り出してしまえば、ディーゼル車であることに全く気づかないクルマも増えている。
D5はそれと同様、というよりも、さらに上をいく静けさだった。車内にいれば、アイドリング時もエンジン音は聞こえてこないし、エンジンをかけたままクルマから降りても、エンジンルーム下からの反響音がかすかに耳に届くくらい。エンジンルームの遮音がしっかりしているのはもちろん、そもそもエンジン本体が発生する音自体が静かなのだ。
ふたつ目の驚きは、エンジンの繊細なフィーリングだ。ディーゼルエンジンのウィークポイントのひとつとして挙げられるのが、回転フィールの粗さ。ガソリンエンジンに比べると、どこかザラザラとした感覚を伴うのが一般的だが、D5のフィーリングは実に滑らかで、ディーゼルエンジンらしさが皆無だったのである。
そして3つ目の驚きは、高回転域までしっかりとパワーが出ること。一般的に、ディーゼルエンジンは低回転域のトルクが太く、力強いけれど、ガソリンエンジンとは異なり、高回転域まで回してもパワーが盛り上がらず、加速感が衰えていく。
その点D5は、高回転域でもしっかりとパワーが出ていて、ピークの4000回転まで、ディーゼルエンジンとは思えないほど軽快に吹け上がる。BMWやメルセデス・ベンツには、高回転域まで気持ち良く回る6気筒のディーゼルエンジンがあるが、ボルボのD5のように、4気筒エンジンでここまで爽快なフィーリングを実現しているパワーユニットは、ほかではちょっと見当たらない。
驚くほど“らしくない”ディーゼルエンジンーー。D5の特徴をひと言で表すなら、そういう表現が正しいだろう。D5はボルボ渾身のディーゼルエンジンであり、低回転域での強力なトルクによる扱いやすさや、燃費の良さといったディーゼルエンジンならではの美点はキープしたまま、ガソリンエンジンのような心地良いフィーリングを実現。その出来栄えは文句なしに素晴らしい。
■ボルボの魅力をロングドライブで再確認
今回、D5エンジンを搭載したXC90の実力を、山形の酒田から東京まで、500km超の距離をドライブして確かめた。
そこで改めて実感したのは、ボルボ車はロングドライブにおいても疲れにくいということ。ほとんどのルートが高速道路であり、前走車との距離を保ちながら速度をキープして走行してくれる“アダプティブクルーズコントロール”や、制御が正確な車線維持支援機能といった運転支援機能のおかげもあるが、長く運転し続けた際の疲労度が少なかったのだ。
もう一度、往復できそう…そんな気持ちさえ抱かせてくれる理由は、乗員のカラダをしっかり支えてくれるシートや、優れた乗り心地、そして、機敏さよりも安定性やしっとり感を重視したハンドリングフィールなど、乗員を包み込むようなクルマ作りにあるのだろう。ロングドライブがラクというのは、以前からボルボ車の美点だったが、そうした魅力は、最新のXC90 D5にもしっかり継承されているのだ。
ちなみに、D5独自の機構であるパワーパルスは、「発進を含む低回転域からの加速時に圧縮エアをターボチャージャーに送り込むことでターボラグを低減する」というのがボルボのうたい文句だが、今回、その働きを実感することはできなかった。声高に存在を主張する機構ではなく、あくまでさり気なく、ドライバーが気づかない領域で機能を発揮しているのだろう。
なお、XC90 D5には、ベーシックグレードの「モメンタム」に加え、上質なレザーシートや前席のベンチレーション機能、ハーマンカードン製プレミアムオーディオ、ウッドパネル、1インチアップの20インチタイヤ&アルミホイールを装着する上級グレード「インスクリプション」がラインナップされている。
D5のモメンタムは、ガソリンターボ車より70万円高い859万円だが、インスクリプションでは逆に、ガソリンターボが高出力仕様となることもあり、944万円とD5の方が10万円安い。こうした絶妙な価格設定も、D5の魅力を引き上げるひとつの要素となっている。
<SPECIFICATIONS>
☆D5 AWD インスクリプション
ボディサイズ:L4950×W1960×H1775(1760)mm
車重:2090(2110)kg
駆動方式:4WD
エンジン:1968cc 直列4気筒 DOHC ディーゼル ターボ
トランスミッション:8AT
エンジン最高出力:235馬力/4000回転
エンジン最大トルク:48.9kgf-m/1750〜2250回転
価格:944万円
※()内はエアサスペンション装着車
(文&写真/工藤貴宏)
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