スピーカー搭載「Orbi Voice」で体感したメッシュWi-Fiのメリット・デメリット
&GP / 2019年6月27日 21時0分
スピーカー搭載「Orbi Voice」で体感したメッシュWi-Fiのメリット・デメリット
ネットギアからメッシュWi-Fiに対応するスマートスピーカー「Orbi Voice」(実勢価格3万4800円)が登場しました。Amazon Alexaを搭載することで、声だけでニュースや天気予報をチェックしたり、Amazon MusicやSpotifyなどの定額制音楽配信サービスを聴いたりできるだけでなく、自宅のインターネット環境を快適にできるというのが大きな特徴とのことです。
▲ネットギアが2019年4月に発売したメッシュWi-Fi対応スマートスピーカー「Orbi Voice」(実勢価格3万4800円)
スマートスピーカーというのは、音声アシスタントを搭載するワイヤレススピーカーのこと。その機能に触れる前に、まずは「メッシュWi-Fi」について紹介していきましょう。
■自宅インターネット環境の快適性を左右するWi-Fiルーター
パソコンやスマートフォン、タブレットなどを自宅で快適に使うためには、自宅のインターネット環境が重要になります。光回線なのか、ADSLなのか、WiMAXなのか……接続回線の種類はさまざまですが、テレビやBlu-rayレコーダーなどのデジタルAV機器、エアコンや洗濯機、冷蔵庫などのIoT対応家電なども接続する場合は、Wi-Fiルーターの性能も重要になります。
世の中には数多くのWi-Fiルーターがあり、「11n(IEEE802.11n)」だとか「11ac」だといった規格への対応をうたう製品がラインアップされています。通信速度も300Mbpsだとか、450Mbps、866Mbps、1733Mbpsなど製品によってまちまちで、どれを買えばいいのか分からないという人も多いことでしょう。
そんなややこしいWi-Fiルーターの世界において、さらに新しい技術に対応する製品が登場し、注目を集めています。それが “メッシュWi-Fi”というものです。
■網目のようにつながるメッシュWi-Fi
“メッシュWi-Fi”というのは文字通り、メッシュ(網目)のようにつながるWi-Fiネットワークのことです。一般的なWi-Fiルーターは、自宅のインターネット回線の入り口近くに置き、そこに有線LANやWi-Fi経由でインターネットに接続する仕組みになっています。
3階建てなどの一戸建てや鉄筋コンクリート造の広いマンションなどで家の端から端までWi-Fiがつながりにくい場合、2台目、3台目のWi-Fiルーターを中継機として使う方法があります。しかしこの場合、1台目のルーターが親機、2台目以降がそれにつながる子機になり、子機同士の通信は行われません。親機に子機がぶら下がる、ツリー構造のような形になります。
一方のメッシュWi-Fiの場合、親機に子機がつながるという関係は同じですが、通信速度が速い経路を親機・中継機が判断し、中継機同士も含めて最適な経路を選択するというのが大きな違いとなっています。親機と中継機1台ではあまりメリットは得られませんが、2台、3台と中継機が増えるほど、そのメリットが得られるというわけです。
■スマートスピーカーがメッシュWi-Fiの中継機になる
Orbi VoiceはネットギアのメッシュWi-Fiシステム「Orbi」シリーズに新たに追加されたAmazon Alexa搭載のスマートスピーカーで、Orbiシリーズの中継機(サテライト)の機能を内蔵しています。
Orbi Wi-Fiシステムをすでに導入している人なら、Orbi Voiceを追加することでメッシュWi-Fiシステムをさらに強化しつつ、スマートスピーカーとしてAmazon PrimeミュージックやSpotifyなどの定額制音楽配信サービスを楽しんだり、ニュースや天気予報を聞いたりと、さまざまな使い方ができるようになるというわけです。
今回は親機である「OrbiトライバンドメッシュWi-Fiルーター」とOrbi Voiceのセット(実勢価格5万5000円前後)を試してみることにしました。
▲メッシュWi-Fiの親機である「OrbiトライバンドメッシュWi-Fiルーター」
セットアップはスマホ向けの「Orbi」アプリ(無料)を使うことで簡単に行えます。アプリの指示に従ってLANケーブルをOrbiルーターに挿し、Wi-Fiルーターの裏側にあるQRコードを読み込むことで、スマホのWi-Fi設定が完了。指示に従ってOrbi Voiceも追加し、Amazon Alexaの言語設定などを行えば使えるようになります。
▲スマホ向け「Orbi」アプリ(無料)の設定画面
Orbi VoiceはAmazon EchoやGoogle Homeなどオフィシャルのスマートスピーカーに比べると一回りも二回りも大きくて重い(幅16.3×奥行き12.5×高さ21.8cm、重さ約1.8kg)ですが、3.5インチフロントウーファーと1インチフロントツイーターに加えて、低音を増幅するバスレフポートを内蔵し、パワフルな音を鳴らしてくれます。これだけのサイズなのでステレオ構成か、360度に音が広がる無指向性のスピーカー配置になっているとさらに魅力的にも思えます。
▲Amazon Alexaの設定もOrbiアプリで行う
キッチンで料理や洗い物などの家事をすることが多いため、筆者宅ではキッチンカウンターに置いて使ってみました。「4分の魚焼きタイマーをセットして」とか、「ラジコでTOKYO FMをかけて」、「アート・ブレイキーの音楽をかけて」など、手を使わずに声をかけるだけで操作ができるのはやはり魅力です。
▲リビングルームに隣接するキッチンカウンターに置いて使ってみました
スピーカーは有名なオーディオブランドであるHarman Kardonによるものです。高音域の解像感に少し物足りなさを感じるものの、ボーカルなどの中音域や低音域はなかなかパワフルなので、聴き応えは十分にあります。
■Bluetoothなどの機能がないのは残念ながら、LAN端子を搭載
音声アシスタントを搭載するスマートスピーカーは、AmazonやGoogle、LINEのほかに、サードパーティー製の製品が多数販売されています。例えばJBLの「LINK 20」(実勢価格1万5000円前後)の場合、内蔵バッテリーで外出先でもBluetoothスピーカーとして楽しめたり、防水機能を搭載していたりしますし、ボーズの「Bose Home Speaker 500」(実勢価格4万7000円前後)はアップルの「Air Play 2」に対応するなど、それぞれ独自の“プラスα”があります。
その点、Orbi Voiceはネットワーク再生機能だけでなく、Bluetooth再生機能も非対応で、アナログ音声入力端子も備えていないなど、オーディオスピーカーとしては少し残念な仕様になっています。
とはいえ、もちろんオンリーワンの魅力もあります。それは、ベースがメッシュWi-Fiシステムのサテライト(中継機)であることもあり、LAN端子を2つ搭載している点です。最近は家電製品にもWi-Fi対応機器が増えていますが、少し前のテレビやBDレコーダーなどは有線LANにしか対応していないモデルも少なくないので、これをベッドルームなどに置けば有線LAN機器の接続口として使うことができます。
▲Orbi VoiceはメッシュWi-Fiシステムのサテライトでもあるため、LAN端子を2つ搭載しているのが魅力だ
■メッシュWi-Fiの実力も検証してみたが……
さらに魅力なのが、メッシュWi-Fiのサテライトとして、自宅のWi-Fi環境をアップグレードできる点です。筆者の自宅にはケーブルインターネット(最大下り400Mbps程度)が入っているのですが、Wi-Fiルーターが設置されているリビングルームから最も遠い寝室ではあまり速度が出ないという問題がありました。Orbi Voiceを導入したら、それを解消できるのではないかということで試してみました。
テスト環境は以下の図の通り。サテライトとしてはちょっと近いようにも思いますが、キッチンで使いたいということで、Orbi Voiceはリビングルームに面したキッチンカウンターの上に設置。玄関、寝室1、バスルーム、トイレ、キッチン奥、寝室2の6カ所で速度をテストしました。
▲テストした環境
テストはインターネットの接続スピードテストができるスマートフォンアプリを使い、下り速度を計測するというもの。5回計測し、上下の数値を省いた3回分の数値を平均しました。すると、驚きの結果が出てしまいました。
▲スピードテストの結果
寝室1は元のルーターでも平均74.3Mbpsなのですが、Orbi Voiceになると40.5Mbpsしか出ません。現状、利用しているサービスは上りが10Mbps程度と遅いのもあって、上りではほとんど有意な差が出なかったため、今回は省きました。しかし寝室1の場合、上りが場合によっては1Mbpsも出ないという惨たんたる結果になってしまったのです。
この問題はサテライトであるOrbi Voiceの置き場所に問題があるということで、いっそのこと寝室1に置いてみてテストしてみることにしました。サテライトがすぐ近くにあることもあって、平均202.5Mbpsと圧倒的なスピードが出る結果となりました。
* * *
メッシュWi-Fi搭載型AIスピーカー「Orbi Voice」についてのメリットとデメリットは、以下の通りです。
<メリット>
メッシュWi-Fiは置き場所を工夫すれば実力をしっかり発揮する
<デメリット>
ただしスマートスピーカーとして置きたい場所と、サテライトとして最適な場所が同じとは限らない
親機を置く場所とOrbi Voiceがある程度離れている方が、メッシュWi-Fiとしての実力を発揮できるということはしっかりと実感できました。しかしOrbi Voiceはスマートスピーカーなので、音楽などを聴いたり、情報を手軽に調べたい時に手元にないと意味がなくなってしまいます。
親機1台と子機1台では実力を存分に発揮できない場合もあるかもしれませんが、すでに構築したメッシュWi-Fiをさらに増強するのには向いているのではないかという印象を受けました。
(取材・文/安蔵靖志)
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