【ホンダ シビックR試乗】限定750台が即完売。新しいタイプRは何がスゴイのか?:岡崎五朗の眼
&GP / 2015年12月28日 18時0分
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【ホンダ シビックR試乗】限定750台が即完売。新しいタイプRは何がスゴイのか?:岡崎五朗の眼
最近、新聞やネットのニュースで「高性能スポーツカーの完売続出」が話題となっています。
ホンダにとって久しぶりの復活となった本格スポーツモデル「シビック タイプR」もその1台。先頃、受注を締め切りましたが、国内限定台数750台に対し、10倍以上の注文が殺到したといいます。
新しいシビック タイプRは、その人気にふさわしいほどの実力を秘めたクルマなのでしょうか? 年間250台近い最新車種を試乗する人気ジャーナリスト、岡崎五朗さんが分析します。
■1000万円級の高性能車にも匹敵する“本物感”
圧倒的な速さ、痛快なドライブフィール、突き抜けたデザイン…。ホンダのシビック タイプRは、最高にエキサイティングなモデルだ。しかし残念ながら、このクルマを新車で手に入れることは、もうできない。
中には、転売目的でオーダーを入れた人もいるだろうし、イギリスからの並行輸入という方法も残されているから、カネに糸目を付けなければ新車を入手することは可能だ。しかし、少なくとも定価の428万円で国内のホンダディーラーから新車を購入するのは、時すでに遅しである。
こんな動きを受け、各メディアには「ホンダのスポーツモデルに注文殺到」「抽選倍率なんと10倍!」などという景気のいい見出しが躍った。
確かに状況を見ればみればそのとおりなのだが、僕にいわせればこの混乱は、ホンダの予測ミス。いくらなんでも限定750台は弱気すぎる。ホンダのディーラーは全国に2000店舗あるのだから、1店舗1台くらいは入れるべきだった。あるいは、台数限定ではなく期間限定注文にし、受注した台数を販売することもできただろう。750台限定で喜んだのは、転売目的の人と並行輸入業者だけ。もったいないことをしたと思う。
そんなふうに思ってしまうほど、新型シビック タイプRは素敵なクルマだ。速くて刺激的でカッコいいだけじゃなく、そこはかとなく“本物感”を漂わせているのがいい。仕事柄、1000万円級の高性能車に乗る機会も多いが、ほぼ例外なく感じるのは“ガッチリ感”と“滑らかさ”の同居だ。
新型シビック タイプRにはそれがある。「NSX」や「インテグラ」を含め、タイプRバッジを付けたホンダ車は、高度な刺激性と引き替えに快適性をあきらめる必要があった。中でも、普段使いをする上で避けてとおれないのが、内蔵が揺さぶられるような上下方向の小刻みな動きに耐えることだった。
その点、新型シビック タイプRの乗り心地は望外に優れている。低速域からサスペンションはスムーズに動き、強い入力に対してもガッチリしたボディがスッと一瞬で減衰してしまう。伝わってくるのは固いとか柔らかいという単純な二元論では説明できない“上質な乗り味”。さすがに減衰力切り替え式のダンパーをハード側にセットすれば、揺すられるような動きが出るが、少なくともノーマル側であれば、荒れた路面を走っても粗っぽさは微塵も感じない。
新型シビック タイプRは、FF(フロントエンジン/フロントドライブ)最速を開発目標のひとつに据え、310馬力という途方もないパワーを誇る2リッターのターボエンジンを搭載してきた。低速域でも驚くほどの柔軟性をみせる一方、能力を100%解き放った時の炸裂感はハンパじゃない。極太のトルクを維持しつつトップエンドまで一気に回りきる快感は、麻薬的とすらいえる。
FF車としては異例ともいうべきこれほどの出力をしっかり受け止め、路面へと伝えるには、強靱なボディとしなやかに動く足が必要不可欠であり、それが結果として、上質感や快適性を高めた。こうしたクルマづくりの方法論、もしくは筋道こそが、新型シビック タイプRに“本物感”を与えた。中身を考えると、428万円は決して高くない。もう新車では手に入らないが、開発中と噂される次期シビック タイプR(今度は北米向けのシビックがベースか?)が楽しみだ。
<SPECIFICATIONS>
☆タイプR
ボディサイズ:L4390×W1880×H1460mm
車重:1380kg
駆動方式:FF
エンジン:1995cc 直列4気筒 DOHC ターボ
トランスミッション:6速MT
最高出力:310馬力/6500回転
最大トルク:40.8kg-m/2500〜4500回転
参考価格:428万円(完売)
(写真/岡崎五朗)
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