ずっと乗っていたくなる!KTM「790 DUKE」の走りは過激なのに乗りやすい
&GP / 2019年7月1日 19時0分
ずっと乗っていたくなる!KTM「790 DUKE」の走りは過激なのに乗りやすい
“READY TO RACE”というキーワードの下、過激な特性のマシンをリリースし続けているオーストリアのバイクメーカーがKTM。
元はといえば、モトクロスやエンデューロといったオフロード向けの競技車をメインに展開していた同社ですが、今ではオートバイレースの最高峰“MotoGP”にも参戦するなど、オンロード向けのモデルやストリートマシンも幅広く展開。世界的に高い評価を獲得しています。
そんなKTMが、ロードマシンに進出するきっかけとなったモデルが「DUKE」シリーズ。今や125ccの「125 DUKE」から、1300ccエンジンを搭載する「1290 SUPER DUKE R」まで、ラインナップが充実。KTMの主力シリーズとなりました。そこに新たに加わった2気筒モデルが、ここに紹介する「790 DUKE」。今回はその実力をご紹介します。
■KTMの新たな1ページを開くDUKEシリーズの異端
KTMのDUKEシリーズはこれまで、別格のトップモデルといえるV型2気筒エンジン搭載の1290 SUPER DUKE Rを除き、基本的には単気筒エンジンを搭載していました。“オフロードマシンで培った高性能エンジンを搭載したオンロードモデル”という、ある意味、KTMらしいバイクだったといえます。各モデルは、単気筒とは思えないほどパワフルで、高回転域まで爽快に回る特性が特徴のエンジンと、スリムで軽量な車体の組み合わせで、ストリートでも高いパフォーマンスを発揮。多くのファンを獲得してきました。
そこに追加されたのが、799ccの並列2気筒エンジンを搭載した790 DUKEです。同社初の並列2気筒エンジンを、新開発の“ダイアモンドフレーム”に搭載するなど、力の入ったモデル。パワフルな単気筒エンジンをはしご状にパイプを組み合わせた“鋼管トレリスフレーム”に搭載する手法を基本としていたDUKEシリーズにあっては、異端ともいえるマシンですね。
しかし実車を目の前にすると、車体は想像以上にスリムでコンパクト。事前の知識がなければ単気筒エンジンを搭載していると思ってしまうほど、エンジンも横幅が抑えられ、小さく仕上げられています。
外観は、DUKEシリーズに共通する個性的な2眼のヘッドライトを備え、かなり”攻めた”デザイン。尖った印象の左右シュラウドカバーなど各部のデザインも過激で、好みの分かれるルックスかもしれません。
足回りは、前後ともにWP製サスペンションを採用。フロントフォークは倒立式で、見るからに剛性が高そうです。フロントブレーキはラジアルマウントのダブルディスクで、強烈なストッピングパワーを実現。マスターシリンダーもラジアル式でコントロール性は良好です。車体が傾いた状態でブレーキの効きを制御する“コーナーリングABS”が装備されているので、安心感も高いですね。
ホイールは、低圧鋳造製法を採用した超軽量の軽合金製。バネ下の重量を低減し、サスペンションの動きやハンドリングを向上させるための工夫で、ストリートモデルであっても手を抜かないKTMの姿勢を感じられます。また、剛性を確保しながら肉抜きされた形状のスイングアームも、所有欲をくすぐります。
ガソリンタンクは、ニーグリップする部分がかなり大胆に絞られた形状で、またがってみると見た目以上にスリムに感じられます。シート高は825mmと結構高めですが、このタンクとやはり左右幅を絞ったシート形状のおかげで、足つき性に不安はありません。169kgという車重以上に軽く感じられます。
アップライトなハンドルなので、ライディングポジションはかなりリラックスした姿勢です。ステップの位置も高過ぎず、座ったところから自然に手を伸ばした場所にハンドルがある、といった理想的なポジション。
過激なマシンというイメージが強いDUKEシリーズですが、街乗りや長距離ツーリングでも疲れにくい姿勢で乗れます。
■手の内で操れる感覚が強く思わず欲しくなった
2気筒になったとはいえ、不等間隔爆発を採用したエンジンは、低回転では心地良いパルス感を味わえて、フィーリングも単気筒に近い印象。例え街中で低速走行を強いられても、この鼓動を感じながら走るのは、なかなか気持ち良さそうです。そして、少し回転数を上げると、2気筒エンジン“らしさ”を発揮。スムーズで俊敏な吹け上がりで、一瞬にして車速が高まります。この加速はかなりクセになりそう。
そして、何より楽しいのがコーナーリング。スリムで軽量な車体は軽快にバンクするので、寝かし込む操作が気持ちいい。足回りの剛性感もちょうどよくて、思い描いたラインにピタッと合わせていくことができます。そして、そこからアクセルを開けていけば、回転数に関わらず、どこからでも爽快な加速感を味わえます。
後輪のスリップを制御するトラクションコントロールが装備されていますし、何よりタイヤの接地感をつかみやすいので、安心してアクセルを開けていけます。エンジンのレスポンスが鋭いので、あっという間に吹け上がりますが、クラッチを切らずにシフトアップできるクイックシフターを駆使し、多少車体が寝た状態から途切れない加速を味わうのが、最高に気持ちいい瞬間でした。
同シリーズのトップモデルである1290 SUPER DUKE Rに試乗した際には、楽しさと同時に、過激な特性による“危なさ”を感じたため、今回、790 DUKEに乗る前も少し緊張していたのですが、乗ってみると手の内で操れる感覚が非常に強く、楽しさのあまりいつまでも走り回っていたくなる特性でした。
それでいて走るペースも「こっちの方が速く走れるのでは?」と思うほど。スポーツライディングが好きな人には一度味わってもらいたい乗り味です。街乗りからワインディングまで、バイクを操る楽しさを満喫できるマシン。個人的にも、かなり欲しくなりました。
<SPECIFICATIONS>
☆790 DUKE
ボディサイズ:L2128×W823×H1055mm
車両重量:169㎏
エンジン: 799cc 並列2気筒 DOHC
トランスミッション:6速MT
最高出力:105馬力/9000回転
最大トルク:8.8kgf-m/8000回転
価格:112万9000円
(文&写真/増谷茂樹)
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