最新デジタル×ライカ・オールドレンズで見る情景
&GP / 2016年1月16日 18時0分
最新デジタル×ライカ・オールドレンズで見る情景
文・写真/平野勝之
僕はいまだにほとんどの道具がアナログのままだ。
カメラも携帯以外はフィルムカメラしか持っていない。
僕のメインカメラはブラックのライカM6TTLとM4、ニコンNEW FM2だ。特にライカは手に馴染んでいる。
デジタルに移行しないのは、例えば職人や猟師などが普段、手にクセが付いているものをそう簡単に変えないのと似ている。長い間使っている物の手癖は侮れないのを知っているからだ。友人といる時、ライカ以外のカメラを持つと「ジャガイモを危なっかしく持ってるみたい」と笑われたほどなのだ。
また、オールドレンズを使うのは「描写のやさしさ」に尽きる。キッカケは昔、コンパクトカメラを使ってた時、レンズが優秀すぎてコントラストが強く、仕上がりで目がチカチカしたからだった。そんな僕が今回初めてソニーα7Rllをお借りして僕なりに、普段ライカを使っているのと同じに撮影してみた。フルサイズ、4230万画素の最新デジタル一眼カメラだ。
使用レンズ 全 LEITZ (年代順)
- ELMAR 3.5cm F3.5 1948年製
- DR-S(デュアルレンジ)SUMMICRON 50mm F2 1969年製(接写用メガネ付き)
- SUMMICRON 35mm F2 1970年製(角付き6枚玉)
- ELMARIT 90mm F2.8 1972年製
以上4本、愛用のライツ時代(現在はライカ社)の各種純正レンズを、フォクトレンダー製アダプターを使用しα7Rllに装着(現在、ライカL&Mレンズをフルサイズで使用できるのは、α7シリーズとライカのデジカメのみ)。
ソニーα7Rllにフォクトレンダー製マウントアダプター(Eマウント→ライカMマント)を装着した状態
愛用の自転車、ALPSのランドナーのサドルバッグに積んで一路、谷中まで相棒の女性と共にミニツーリングに出かけてみた。
1940年代のまなざし
ELMAR 3.5cm F3.5 1948
まずは道中、休憩で立ち寄った喫茶店で相棒をパチリ。朝早かったので不機嫌そう。テスト撮影。感度など簡単に変えれるので、やっぱり楽だ。
谷中霊園にて。
総じて言えるが、この時代の各種オールドレンズは線が細くコントラストがなく繊細で地味な描写だ。逆光に弱く、曇天の方が威力を発揮しやすい。モノクロならさらに描写が際立つと思われる。このレンズは暗いがそのぶんコンパクトなので荷物を減らしたい時には重宝する。デジタルなら感度を変えれるので、なおさら使いやすいかも。
1970年代、軽快なクラシックモダン
SUMMICRON 35mmF2 1970
自転車はトーエイ社で修行し独立した、若きビルダー尾坂允氏の工房、山音製輪所のオーダーメイド、ミキストランドナー
続いて同じ35mmでも、時代が新しいズミクロンレンズにチェンジ。F8あたりに絞りこんで感度を上げ、3メートルほどにピントを固定し、パンフォーカスで走りながら並走して撮影。
自転車で並走する場合、35mmの画角が最適。28mmだと遠く、接近すると危険。50mmだと画角が狭い。フィルムライカだとノーファインダーで撮影する場合もあるが、デジタルはモニターがあるため大変便利。
でも、真似しないで下さい(笑)
美味しくカット。90㎜というナイフ
ELMARIT 90mm F2.8 1972
僕のお気に入りレンズ。ライカレンズはよく広角が良いとされるが、とんでもない。実は50~90mmが最も美味しいと思う。ライツの描写の真骨頂は、独特の立体感にあるからだ。最もわかりやすいのは、この90mmなのである。昔、これを購入する時、試し撮りをして、その立体感にぶったまげて、速攻、購入したぐらいなのだ。
デジタルだと速写性がかなりアップする。90mmの欠点は0.75の通常のライカフレームだと枠が小さくピント合わせに苦労するが、α7Rllだとファインダーや液晶モニターで、ピントも拡大が素早く可能なため、こんな写真のチャンスも逃さず撮影できた。
現代の風景。
古いものと、まったくそぐわない新しいものが共存する世界。
僕の目には風景が悲鳴を上げているように見える。
デジカメとオールドレンズの組み合わせも同じだろうか?と、ふと考える。
女性とクラシックタイプの自転車、そして古い建物など。いつの時代も、ホッとする組み合わせ。
谷中霊園の大仏。
僕はこの鬱蒼とした木々の間から見える大仏様の姿が大好きだ。美しいと思う。
1960年代の分厚い豊潤
DR-S SUMMICRON 50mmF2 1969
これまた僕のお気に入りレンズ。1960年代、一番成熟した時代のライツレンズだと思う。
最初に使った時は本当に驚いた。今でも撮影する度に驚かされる事が多い。コクがあるのに、決して硬くなく、ジンワリしたライツ特有の立体感が存分に味わえる。もう一本、70年代の50mmズミクロンを所有しているが、明らかに描写が違う。'60年代の方が厚みがある。
しかし、こうした描写力は実は一般的なテスト撮影ではわからない事が多い。光の条件、各種の状況が、そのレンズの特性と一致した時に、初めて抜群の描写を示す場合が多いからだ。これは他のオールドにも当てはまる。この事は数多く撮影しないとわからないと思う。長い間の付き合いが必要な気がする。レンズの当たりハズレもあるから、難しい。だからオールドレンズは面白いとも言える。数をたくさん持っていても、長く特性を知るべく付き合わないと、結局、そのレンズの能力を発揮させる事ができず、眠っている場合も多いと思う。
今回初めて使ったソニーα7 Rll。素直に欲しいと思った。
一番グッときたのは、やはり速写性だろうか?
特に90mmを使用した時の気軽さは、やはり侮れない。ピント拡大機能も素晴らしく、これなら大口径レンズも安心して使えるだろう。
フィルムをたくさん持っていく必要がないので荷物も減らせる。ライカマウントのレンズは小型なので、気軽にオールドを使えるのは大変な魅力である。
やはり、フィルムとデジタルがお互いの役割をフォローしながら共存するのが理想だろうか? フィルムの粒子の美しさと人力の良さを残しながら、デジタルで合理的なところは合理的に。
願わくば、谷中の古き良き風景にも合うようなデジタル化を望みたいと思った。それがどんな世界で、どんなものかは、僕にもよくわからないが。
- ボディ=ソニーα7Rll(ソニーストア価格47万3990円)、マウントアダプター=フォクトレンダー ライカMレンズ/ソニーEボディ用ヘリコイド付(3万1800円、協力=マップカメラ)
- レンズはすべて著者私物
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