「マツダ3」は走りもいいね!②今ならディーゼル推しも真打ちはやはりスカイアクティブX!?
&GP / 2019年7月14日 19時0分
「マツダ3」は走りもいいね!②今ならディーゼル推しも真打ちはやはりスカイアクティブX!?
マツダ渾身のニューモデル「マツダ3(スリー)」は、過去3世代に渡って展開されてきた「アクセラ」の後継モデルであり、“ファストバック”と呼ばれる5ドアハッチバックと、4ドアセダンをラインナップする。
前回は、ハンドリングやブレーキについてのインプレッションをお届けしたが、後編となる今回は、気になるパワートレーンの印象についてお伝えしたい。
■スカイアクティブXはガソリンとディーゼルのいいとこ取り
日本市場向けのマツダ3には、4種類のエンジンが用意される予定だ。“予定”と書いたのは、現時点ではそのすべてが発売されていないため。
2019年7月上旬時点で販売されているのは、1.5リッターの自然吸気ガソリンエンジン車(111馬力/14.9kgf-m)と、1.8リッターのディーゼルターボ車(116馬力/27.5kgf-m)。ちなみに、1.5リッターの自然吸気ガソリンエンジンはセダンには設定がなく、ファストバックにのみ搭載される。
追って7月下旬からは、2リッター自然吸気ガソリンエンジン車(156馬力/20.3kgf-m)の販売が始まり、真打ちともいうべき“スカイアクティブX”搭載モデルは、10月頃ラインナップに加わる予定だ。なお、海外市場向けのマツダ3には、よりパワフルな2.5リッター自然吸気ガソリンエンジン車や、2リッター自然吸気エンジンのマイルドハイブリッド仕様なども用意されている。
日本仕様のエンジンのうち、話題となっているスカイアクティブXは、“火花点火制御圧縮着火”と呼ばれる量産車世界初の燃焼方法を採用しているのがポイント。ガソリンエンジンは一般的に、スパークプラグが飛ばす火花で炎を伝播させ、燃焼を誘発する仕組みだが、スカイアクティブXの場合、燃焼のきっかけにこそスパークプラグの火花を使うものの、混合気への着火自体は、爆発による圧縮によって行う点が新しい。
市販モデルをドライブできていないため、スカイアクティブXの性能は未知数だが、マツダによると「ガソリンエンジンならではの伸びの良さに、ディーゼルエンジンの優れた燃費・トルク・応答性といった特長を融合したエンジン」というから期待は膨らむ。ちなみに、先行して発表されたスカイアクティブX欧州仕様のスペックは、最高出力180馬力で最大トルクは約22.8kgf-m。そして気になる燃費データは、日本の表示に換算すると約23.2km/Lとなる。
■マツダ3の爽快な走りを実現する6速AT
日本仕様のマツダ3には4種類のエンジンが搭載される予定だが、今回、試乗できたのは、2リッター自然吸気ガソリンエンジンと、1.8リッターのディーゼルターボ。組み合わされるトランスミッションは、いずれも6速ATだ。
2リッターの自然吸気ガソリンエンジン“スカイアクティブG”は、前衛的なデザインのエクステリアや、クオリティの高いインテリア、そして、シャーシやブレーキの優れたフィーリングに比べると、正直いって感動が希薄。
というのも、このエンジン自体のデビューが2011年と決して新しくなく、また個人的に、1年前まで同エンジンを積むクルマを愛車としていたこともあり、“慣れっこ”になっていた。もちろん、かつてトルクの薄かった部分が解消されるなど、確かな進化も見られるが、さほど新鮮ではなく、「そうそう、こうだったね」といったレベルの、想定内のフィーリングだった。
2リッターのスカイアクティブGは、高回転域まで気持ちよく回る、というよりも、低回転域でのトルクが太く扱いやすいエンジン。耳に届くエンジン音は悪くはないが、回転フィールや音でドライバーを酔わせるようなツヤっぽさはなく、あくまで実用的な特性の持ち主だ。
一方、爽快なドライビングフィールという視点で見た場合、日本のライバル車に対する明確なアドバンテージとなっているのは、トランスミッションにATを組み合わせていること。スバル「インプレッサ」やトヨタ「カローラスポーツ」、ホンダ「シビック」といったライバル勢は、オートマチックトランスミッションにCVTを採用していて、マツダ3は同クラスの日本車の中で唯一、トルクコンバーター式ATを導入する。最新のCVTは、確かに変速フィールがかなり向上しているが、人間の感覚に対する自然な変速フィールという点では、やはり多段変速ATの方が一枚上手だ。
しかもマツダのATは、“ロックアップ率”と呼ばれる、機械的にエンジンと駆動輪とをつなぐ機構の作動率が高く、アクセル操作に対する反応がダイレクト。2リッターのスカイアクティブGを積むマツダ3は、エンジン単体でライバルに対するアドバンテージを築けていないものの、ATとの組み合わせによる走る歓びについては、他をリードしているように感じた。
■ガソリン車とディーゼル車の価格差は実質15万円程度
では、ディーゼルターボエンジン“スカイアクティブD”の印象はどうだろう? その評価は、このエンジンに何を期待するか? によって大きく分かれるはずだ。
先代アクセラのトップモデルに君臨していた2.2リッターのスカイアクティブDを基準とすれば、マツダ3に搭載される1.8リッターのそれは、燃費こそ優れているものの、動力性能としては物足りない、という判断になる。同じスカイアクティブDであっても、2.2リッター仕様から感じられる圧倒的にエネルギッシュな感覚は、マツダ3の1.8リッター仕様にはないのである。
一方、先代アクセラのモデルライフ途中に追加された1.5リッターのスカイアクティブDを基準とすれば、マツダ3に積まれる1.8リッター仕様の動力性能はほぼ互角。同様に、1.5リッターから1.8リッターへとスカイアクティブDの排気量をアップさせた「CX-3」の例から推測すると、実燃費は向上しているはずだから、今回のモデルチェンジは正常進化といえる。
マツダ3に搭載される1.8リッターのスカイアクティブDは、最高出力こそ116馬力と控えめだが、1600回転という低い回転域から27.5kgf-mという最大トルクが立ち上がるので、アクセルペダルを深く踏み込まなくてもスタートは力強く、一般的な走行シーンでは動力性能も申し分ない。
ただし、発進後にアクセルペダルを踏み込んだ際の、高回転域でのパワーの頭打ち感は少々強め。これは、ガソリンエンジンと比べた際のディーゼル固有の欠点だけに、仕方ない部分ではあるものの、エンジンを高回転域まで回すことが走りの爽快感につながると感じる人は、スカイアクティブGを選んだ方が満足感を得られるだろう。
対して、発進時や実用域での加速など、街中での力強さを求める人や、高速道路を一定速度で巡行する機会の多い人などは、スカイアクティブDを選ぶとディーゼルならではの美点を味わえるはずだ。
ちなみに、スカイアクティブD搭載モデルは、2リッターのスカイアクティブG搭載モデルに対し、同グレード比で車両価格が30万円高いが、税制上の優遇措置によって購入時の取得税や重量税が免税されること、そして、購入翌年の自動車税が軽減されることなどを考えると、その差は実質15万円程度に縮まる。さらに、リセールバリューの良さや、燃料の安さに起因するランニングコストの安さなどを考慮すると、年間の走行距離が極端に少ない人以外は、十分に“元が取れる”もしくは、“お釣りが来る”状態となることを報告しておきたい。
■トータルで見るとマツダ3はハイコスパ!
さて、マツダ3はどんな人と相性のいいクルマだろうか? 最もマッチングがいいと思われるのは、毎日をちょっと気取って過ごしたい人。特に、ファストバックのスタイリングは、乗る人の個性を主張する、流行の先を行く一種のファッションのようなもの。無難ではない分、乗る人を選ぶものの、その感覚を楽しめる人なら、最良のパートナーとなるだろう。また、ライバルと比べて明らかに上質なインテリアは、乗るたびに所有欲を満たしてくれる。そうしたクラスを超えたクオリティの高さも、マツダ3を選ぶ理由に十分なり得る。
ただしネックとなりそうなのが、1.5リッターのスカイアクティブGを積むエントリーグレードでも、218万円〜と高価に思えること。シビックの280万440円〜というのは別格としても、194万4000円〜買えるインプレッサと比べると、マツダ3は割高な印象が否めない。
とはいえマツダ3は、同クラスのライバルをリードする充実の安全装備や、液晶モニターを組み込んだメーターパネル&ヘッドアップディスプレイを全グレードに標準装備。さらにナビゲーションシステムは、地図データを収録した販売店オプションのSDカード(5万2919円)を購入すれば、すぐ使えるようになる。そう考えると、マツダ3のコストパフォーマンスは、ライバルと比べるとかなり高いといえそうだ。
<SPECIFICATIONS>
☆ファストバック XD Lパッケージ
ボディサイズ:L4460×W1795×H1440mm
車重:1410kg
駆動方式:FF
エンジン:1756cc 直列4気筒 DOHC ディーゼル ターボ
トランスミッション:6速AT
最高出力:116馬力/4000回転
最大トルク:27.5kgf-m/1600〜2600回転
価格:291万9000円
<SPECIFICATIONS>
☆セダン 20S Lパッケージ
ボディサイズ:L4660×W1795×H1445mm
車重:1350kg
駆動方式:FF
エンジン:1997cc 直列4気筒 DOHC
トランスミッション:6速AT
最高出力:156馬力/6000回転
最大トルク:20.3kgf-m/4000回転
価格:264万9000円
(文/工藤貴宏 写真/&GP編集部)
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