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クラフトビール人気で注目度アップの国産ホップ!日本一の産地・岩手県遠野に行ってきた

&GP / 2019年7月15日 20時0分

クラフトビール人気で注目度アップの国産ホップ!日本一の産地・岩手県遠野に行ってきた

クラフトビール人気で注目度アップの国産ホップ!日本一の産地・岩手県遠野に行ってきた

近年、ビールの消費が落ち込んでいるといわれていますが、その一方で、ビールの主原料であるホップの個性やブルワリーのオリジナリティを楽しむクラフトビールは、20代、30代の若い世代を中心に大人気です。

ホップは海外からの輸入が多いのですが、実は日本でも100年前から栽培されています。

国産ホップ栽培の主要産地は、北海道と東北4県。その中でも日本一のホップ産地が岩手県遠野市。ホップの収穫が取材できると聞き、遠野に出かけてきました。

■ホップの正体は?

ビールの主原料「ホップ」は、麻(アサ)科のツル性多年生植物で、世界に100種類ほどあるといわれています。

なんと雄株と雌株があり、ビールに使われるのは、雌株の花「毬花(まりはな)」のみです。受精すると劣化するため、ホップ畑で栽培されているのは雌花だけです。

毬花にはルプリンというホップ腺があり、そこから、ビール特有の苦み成分などが分泌されます。毬花を割ると見える黄色いポチポチがルプリンで、匂いを嗅ぐと、あ、ビール!

<ホップの効果&効能>

1)ビールに独特の香りと苦みを与える
2)ビールを清澄させる
3)雑菌の繁殖を抑制
4)ビールの泡立ちや泡持ちをよくする。

ホップは古代から、健胃、鎮静、抗菌、催眠、利尿効果のある薬用植物として使用されてきました。

そのホップがどんな状態で花をつけ、収穫されるのか、収穫期を迎えた2018年の8月下旬、岩手県遠野市のホップ畑を訪問しました。

 

■ホップの収穫から選別まで

遠くから見ると、森のように緑色が濃くなっているところがホップ畑です

ホップの収穫時期は、8月後半から9月上旬です。

雪解け後の3月下旬、株を開いてツルを整え、1株から4本ほどのツルを残します(株ごしらえ)。ツルが伸びてきたら糸で固定し(ツル上げ)、ホップ棚を作ります。そのまま放置するとツルが伸び過ぎてしまうので、6月下旬頃、棚の一番上に届いたツルを下げ(ツル下げ)、さらに伸びたらワイヤーに巻き付けます(ツル巻き)。

持続可能なホップの生産体制を作ることを目的とする農業生産法人「BEER EXPERIENCE社」の代表取締役 吉田敦史さん(写真右)の話では、ここのホップの樹齢は10~20年くらいだそうです。

ホップ棚の高さは約5~5.5mもあります。収穫のベテランがバスケット付きのハシゴに乗り、鎌で刈り取っていきます。刈り取ったホップは下にいる人が回収していきますが、どちらも力のいる大変な作業に見えました。

刈り取られた直後のホップは葉もツルも付いた状態。これを収穫センターに運びます。

遠野では数種類のホップを栽培しています。ホップの種類により、香りや味わいの異なる特徴を持つビールになるだけでなく、それぞれ収穫時期が異なるため、収穫や加工工程が計画的に調整できるというメリットもあります。

ホップは鮮度が大事です。刈り取ったホップはすぐに加工センターに運ばれ、到着するやいなや、加工作業に入ります。

遠野には34軒のホップ栽培農家があり、3か所の加工センターあるそうです。

▲必要な毬花の部分を残し、ツルと葉っぱを落とします

▲エアーをかけ、毬花だけをキレイに選別していきます

▲毬花は、熟練スタッフさんの手によって選別されます

▲葉っぱや不良品を取り除き、キレイな状態になった毬花は、乾燥室に送られます

▲センター2階の乾燥室で、60℃で(これは世界共通ルールだそう)8時間乾燥させると、毬花の水分量は6.5~7%にまで下がります

▲乾燥が終わった毬花が1階に降りてきました

▲乾燥させた毬花は、ドライハーブのようにカサカサしています。乾燥ホップの完成。香りを嗅ぐと、あ、ビール!という香りがふわっと匂い立ちます

▲乾燥ホップは50kg入りの麻袋に入れられ、これで完成!

 

■フレッシュホップの魅力を楽しむイベント

畑で収穫したホップを乾燥工程に移さず、生のまま急速凍結させる例もあります。ホップ本来の持つ香りと旨味を最大限に生かしたビールを造るためです。乾燥させないフレッシュホップが使える時期は限られていますし、フレッシュホップで造ったビールが飲める時期も限定されていますので、これは見逃してはいけません。

「フレッシュホップフェスト」という、その年に収穫したフレッシュホップで造ったビールを楽しむお祭りがあり、毎年秋に開催されています。

日本全国1000店以上の飲食店で、国産のフレッシュホップビールが期間限定で提供されます。初年度の2015年は12ブルワリーが参加しましたが、2018年は52ブルワリーに増えました。

「フレッシュホップフェスト」は2019年も開催されますので、公式ホームページをチェックしてみてください。

▼FRESH HOP FEST
2019年9月1日~11月30日

「フレッシュホップフェスト」は飲食店で開催されるイベントですが、ホップの産地である遠野市では、遠野産ホップの収穫を祝う祭典「遠野ホップ収穫祭」が行なわれています。

2015年に始まり、2019年で5回目を迎える「遠野ホップ収穫祭2019」は、8月24日(土)~25日(日)に、JR遠野駅から徒歩5分の「蔵の道ひろば」で開催されます。
遠野産のホップを使ったビールはもちろん、岩手の旬の食材を使ったフード、ホップ畑の見学ツアーなど、遠野ならではの楽しみ満載のイベントです。これは絶対、楽しい!

▼遠野ホップ収穫祭 2019
2019年8月24日(土)~25日(日)

 

■国産ホップ栽培の現在・過去・未来

日本のホップ栽培は、約100年前の1800年代後半に北海道開拓使がホップ栽培を始めたのが最初、という記録が残っています。その後、いったん消滅したり、復活したりを経て、北海道や東北での栽培が広がります。本格的に栽培されるようになったのは1955年頃です。

それまでは、ホップは海外からの輸入品を使っていましたが、戦争で輸入が不安定になり、大手ビール会社が農家にホップ栽培を依頼したからです。

そうした経緯があり、国産ホップの作付面積は急増しますが、1960年代後半から1970年代前半がピークで、以降は徐々に衰退していきました。為替相場の変動で、輸入ホップが安価に入手できるようになってきたことや、栽培が重労働であり、農家の後継者が減っていったからです。

高い棚仕立てのホップは風に弱く、台風などの悪天候によって収穫が左右されることが多々ありました。気象条件は、昔も今も、ホップ栽培農家の悩みの種です。

21世紀に入ってからも国産ホップの生産量は減少の一途を辿ります。が、それに待ったをかけたのが、クラフトビールブームです。

若者世代はアルコール離れが進み、苦いビールも、とりあえずビールも苦手ですが、香りも口当たりもよく、多彩で個性豊かで、自分好みのものを選びやすいクラフトビールは、ピタリとハマったことでしょう。

日本のクラフトビールのブルワリー数は、2016年の253軒から2018年の314軒と増え、現在も次々と新ブルワリーが誕生し、クラフトビール市場は順調に拡大しています。

国産ホップには、外国産の輸入ホップにはない、フレッシュな青りんごの香りやマスカットの香り、イチジクの香りなどを持つものがあります。ホップの多様な個性を出したいブルワリーにとって、国産ホップは非常に魅力的な存在です。できるだけ国産のものを使いたい、というリクエストも増えてきました。

遠野市では、寒さに強いホップ栽培に以前から取り組んでいましたが、1963年に大手ビール会社(キリン)との契約栽培を始めました。2006年には、ホップ生産を起点とし、ビール文化の発展、さらなる産業の創設を目指す「ビールの里構想」の推進計画に着手し、2018年には「ホップの里からビールの里へ」を合言葉にした農業生産法人「TONO BEER EXPERIENCE」を設立しています。

遠野市内にはブルワリーもあるので、今後は、ホップやビールを中心としたビアツーリズム事業の展開も予定されています。

 

■遠野にビールを飲みに行こう!

現在、遠野市には、クラフトビールのブルワリーが2軒あります。

「遠野麦酒」(とおのばくしゅ)は、約200年続いた酒造りの伝統と南部杜氏の技術を生かしたビール造りを行なっています。

▲遠野麦酒の代表銘柄「ZUMONA(ズモナ)」ビール

■遠野麦酒
岩手県遠野市青笹町糠前31地割19-7

 


JR遠野駅から徒歩3分の「遠野醸造」は、タップルームを併設した小さなブルワリーです。


タップルームの奥に小さな醸造所があり、定番ビール、季節ごとの限定ビールなどが、フードメニューとともに楽しめます。

駅近なので、ここなら電車の出発時間ギリギリまで飲めそうです(笑)。

■遠野醸造TAPROOM
岩手県遠野市中央通り10-15

 


自分のお土産用に、東北新幹線の新花巻駅の売店で「遠野麦酒」のビールを買いました。

今回は、岩手県遠野市を紹介しましたが、クラフトビールの広がりをきっかけに、日本全国各地でも、新たなホップ栽培の取り組みが始まっています。
例)秋田県横手市(2014年~)、京都府与謝野町(2015年~)、大分県竹田市(2017年~)

ビールを飲むときに、ホップの産地や種類に注意してみると、新たな発見があり、よりおいしく感じるかもしれません。

 

(取材・文/綿引まゆみ

わたびきまゆみ/ワインジャーナリスト

わたびきまゆみ/ワインジャーナリスト

ワイン専門誌や料理系雑誌での記事執筆をはじめ、日本ソムリエ協会webサイトのコラムなどを執筆。ワインセミナー、トークショー、海外のワインコンクール審査員など、幅広い活動を行なっている。チーズプロフェッショナル、ビアソムリエ、コーヒー&ティーアドバイザーの資格も所有。スイーツ好き。

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