37年の歴史に幕を下ろす「パジェロ」栄光の軌跡を振り返る
&GP / 2019年8月1日 20時0分
37年の歴史に幕を下ろす「パジェロ」栄光の軌跡を振り返る
2019年4月24日、三菱自動車は8月をもってパジェロの国内向け生産を終了することを発表しました。現在は寒冷地仕様やリアデフロック、電動ロングサンルーフなどが標準装備になる特別仕様車「FINAL EDITION」が発売されています。
▲パジェロFINAL EDITION
国内での販売は終了となりますが、海外市場向けのパジェロ、タイや中国など世界70カ国以上で販売されているパジェロスポーツは継続販売されるそう。新型パジェロスポーツは7月25日にタイで世界初披露されました。
▲7月25日に世界初披露された新型パジェロスポーツ
国内での37年という長い歴史に幕を下ろすパジェロ。その長い歴史を振り返ります。
■初代(1982年):パリダカでの活躍で一躍時代のヒーローに
▲初代パジェロメタルトップ
初代パジェロが誕生したのは1982年4月22日。当初はメタルトップ4車種とキャンバストップ3車種、計7種類をラインナップ。初代パジェロには4WD車として国産初のディーゼルターボが搭載されました(2.3Lディーゼルターボ、2.3Lディーゼル、2Lガソリンエンジンをラインナップ)。
以前、篠塚建次郎さんに、三菱が長くノックダウン生産を行ってきたジープに代わるモデルとして開発されたと伺いました。ただ、主力車種ではなかったため開発予算も少なく、また登場後も“細々”と販売されていたといいます(発表当時の目標販売台数は1300台/月)。
転機となったのは1987年。篠塚建次郎氏がドライブするプロトタイプのパジェロがパリ・ダカールラリーで総合3位に。その模様をNHKが連日放映したことで日本中でパジェロ旋風が巻き起こります。そしてこの年の11月にホイチョイ・プロダクションの映画『私をスキーに連れてって』が公開され、空前のスキーブームに。その流れで多くの人がRV(当時はまだSUVではなくこのように呼ばれていました)を選ぶようになったのです。最盛期には月に1万台以上も注文が入ったといいます。
■2代目(1991年):RVブームを牽引し、夜の都会でも人気モデルに
▲2代目パジェロスーパーエクシード(ミッドルーフワイド)
1991年1月、パジェロは初のフルモデルチェンジを行いました。当時のプレスリリースをあらためて読んでみると、2代目パジェロのコンセプトは、“本物の4WD性能と乗用車らしい乗り味を両立させること”にあったことが読み取れます。日本がバブル景気に沸き、多くの人がパジェロをはじめとするRVモデルを選ぶようになったことで、乗り心地のよさを求める人が増えたことが背景にあります。
2代目パジェロにはフルタイム4WDとパートタイム4WDの長所を兼ね備え、三菱の4WDの代名詞にもなるた“スーパーセレクト4WD”を世界初搭載。この“スーパーセレクト4WD”はトランスファレバーの2WD/4WD切り換えだけで、フロントアクスルのフリー/ロックが行えるように。また、100km/h以内での走行中に2WD/4WDが切り換えられる画期的なものでした。
▲2代目パジェロXS(Jトップ)
ボディタイプは標準仕様のメタルトップ、居住空間を広くしたミッドルーフ、2列目以降のルーフをさらに高くしたキックアップルーフ、オープン仕様のJトップを用意。
初代同様、2代目パジェロも大ヒット。トヨタのランドクルーザー80、ハイラックスサーフ、日産テラノとともに、日本のRVブームを牽引していきます。1997年のマイナーチェンジでは、ガソリン直噴エンジンのGDIやINVECS-IIスポーツモードATなどが搭載されます。
▲2代目パジェロエボリューション
1997年9月には可変バルブタイミングリフト機構、可変吸気システムを備え、低速、中速、高速という領域での高トルクの維持が可能になった3.5Lエンジンを搭載するパジェロエボリューションが登場。パジェロエボはパリダカのレギュレーション変更により開発されました。今でも中古車市場では150万円前後で取引されています。
■軽自動車とコンパクトモデル、2つの派生車種が登場
▲初代パジェロミニ
空前のRVブームにより、三菱はより多くの人にパジェロを楽しんでもらおうと派生モデルを登場させました。
まず1994年12月に登場したのが軽自動車のパジェロミニ。本格的軽4WDといえばスズキジムニーの独壇場でしたが、パジェロミニは兄貴分のパジェロの雰囲気を残しつつ、ジムニーよりもオンロード性能を高め、あらゆる生活シーンで楽しめるモデルとして登場。駆動方式は80km/h以下でFRと4WDの切り替えをレバー操作のみで行えるイージーセレクト4WDとFRが用意されました。
▲初代パジェロジュニア
1995年11月には、新開発された1.1Lエンジン搭載のパジェロジュニアがデビュー。4WDはイージーセレクト4WDを採用。ボディはパジェロミニをベースにオーバーフェンダーが取りつけられ、小さいながらもパジェロらしい堂々とした雰囲気に仕上がっていました。パジェロジュニアは1998年のフルモデルチェンジでパジェロイオへと進化。パジェロイオはボディが専用設計となり、3ドアと5ドアが用意されました。
■3代目(1999年):世の中の流れに乗りラグジュアリー路線へと変化
▲3代目パジェロロングエクシード
パジェロは1999年9月にフルモデルチェンジ、3代目へと進化します。この代からラグジュアリー路線になりました。彫刻のような雰囲気のデザインでプレステージ性を高め、インテリアも高級感のある素材を多用しています。
4WDはスーパーセレクト4WD IIへと進化。機械式から電動切替式になり、走行中の操作フィーリングなどが向上しています。エンジンは3.2L直噴ディーゼルエンジンと、V6 3.5L 直噴ガソリンエンジン(GDI)がラインナップされました。
3代目パジェロは2002年9月と2005年11月にマイナーチェンジ。マイナーチェンジのたびにデザインはより都会的でラグジュアリーな方向へと進化しているのも特徴です。
▲3代目パジェロショートスーパーエクシード
他メーカーを見ると、1997年12月に登場したラグジュアリー路線のクロスオーバーSUV、ハリアーが大ヒット。その後、世界中の自動車メーカーから乗用車ライクのモノコックボディのクロスオーバーモデルが登場します。
パジェロは3代目からモノコックボディにラダーフレームを溶接したラダーフレーム・ビルトイン・モノコック構造に変わり乗り心地も大幅に向上しました。
しかし時代がクロスオーバーモデルへとシフトする中で、だんだんと影が薄くなっていきました。
■4代目(2006年):3代目からの正常進化。13年製造後、国内販売終了に
▲4代目パジェロロングスーパーエクシード
2006年10月、パジェロは4代目へとフルモデルチェンジを行います。従来同様ロングボディとショートボディを用意。エンジンはロング、ショートともにV6 3.8LとV6 3Lとを搭載しました。
先代で採用されたラダーフレーム・ビルトイン・モノコック構造の継続採用により、オンロードでの使いやすさはもちろん、アプローチアングル36.6度、デパーチャーアングル25度など、乗用車ベースのクロスオーバーSUVには真似できないオフロードの走破性が確保されています。
4WDは燃費重視の「2H」、市街地や高速道路などでも安定して走れる「4H」、センターデフをロックさせて積雪路やダートなどで威力を発揮する「4HLc」、岩場や泥濘地を走るときに大きな駆動力をタイヤに伝える「4LLc」を選べるスーパーセレクト 4WD-IIを採用しています。
▲4代目パジェロショートVR-Ⅱ
パジェロが本格的4WDであることを象徴するもののひとつが、ロングボディ、ショートボディともに5MTモデルが設定されていたことでしょう。少数かもしれませんが初代から乗り続けている人、仕事で使っている人の中にはMTを熱望する人もいます。その人たちのことを考えたラインナップを用意したのは、三菱の心意気だったと思います。
▲ダカールラリー7連覇を達成したパジェロ(2007年)
そしてパジェロといえばダカールラリー。三菱は1997年に篠塚建次郎氏がドライブするパジェロで総合優勝、2003年には増岡浩氏が日本人で初めて2連覇という偉業を成し遂げます。その勢いもあり、2007年には7連覇という快挙を達成しました。
▲レーシング ランサー(2009年)
2008年は社会情勢でダカールラリーが中止に。翌2009年、三菱はレーシング ランサーでダカールラリーに参戦します。しかし2009年2月、世界的な景気の悪化や一連の不祥事が影響して三菱はダカールラリーからの撤退を表明します。
* * *
4代目パジェロは細かい改良を繰り返しながら現在も生産、しかし直近の販売台数は年間1000台に満たない状態でした。そして8月に国内販売分の生産が終了します。オンロード重視のクロスオーバー、さらに街中でも使いやすいコンパクトサイズのSUVが主流となっている現在、パジェロが国内販売終了となるのは仕方ないことかもしれません。
しかし中古車相場を見て見ると、ゴールデンウイーク明けから平均価格は上昇傾向に転じています。歴史あるモデル、名車と呼ばれるモデルが生産終了になるとき、多くの人にいろいろな想いが生まれ、中古車を探す人が増えて人気が再熱することも。パジェロもその傾向が出始めているといえるかもしれません。
過去に乗っていた人、いつか乗ってみたいと思っていた人。これを機会にパジェロの中古車に注目してみるのもおもしろいかもしれませんよ。
>> 三菱「パジェロ」
(文/高橋 満<ブリッジマン>)
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