まずは電動ドライバドリルで直角三角定規作り!【DIYでウッドデッキ自作顛末記①】
&GP / 2019年8月31日 9時0分
まずは電動ドライバドリルで直角三角定規作り!【DIYでウッドデッキ自作顛末記①】
「ウッドデッキって日曜大工で作れるの?」
編集部からの帰りがけ、唐突に話しかけてきたのは編集長。なにやら最近、神奈川県逗子市に築50年のレトロな一軒家を購入し、DIYに目覚めたようで…。
“ウッドデッキを日曜大工で作る!”
DIYを愛好する男なら一度は夢見る話だろう。ウッドデッキ特集は専門誌でも人気の企画で、多くの人が製作にチャレンジしている。その施工は簡単な作業ではないが、木工の初心者でもできないことはない。
しかるべき工具と、それを使う技術があればの話であるが…。
まあ話の相手は編集長だ。ご機嫌を損ねて、今後の仕事に支障が出ると困る。多分にリップサービスを込め、笑顔で言った。
「そうですねー、3日もあれば、それっぽいものはできると思いますよ」
そう、俺なら作れる。しかし編集長が作れるかどうかはわからない。所詮は人の家の話。計画が頓挫しようが知ったことではないのだ。
「3日? ほんとに!? よし決めた! ウッドデッキを作るぞ」
まったくもって呑気なもんだ。
「まあ頑張ってください。じゃまた」
そう言って編集部を出ようとする俺の肩をむんずとつかんでイスに引き戻す。
「何言ってんの! 俺だけで作れるわけないだろ」
「え、まさか」
「ふふふ、もちろん」
「編集長の家、たしか逗子でしょ? 俺、秩父っすよ」
「いいじゃん、泊まり込みでやれば」
「・・・」
こうして俺は、人生で5台目のウッドデッキを、編集長の家に作ることになったのだった。
■ミッションは、畳4枚分のウッドデッキを作ること
編集長のビンテージ一軒家には、南向きで10坪くらいの芝生の庭がある。今回のミッションは、ここに畳4枚分のウッドデッキを作ること。
「それで、何から始めるのよ?」
「まずは、現地の測量と基礎工事ですね。ここが一番肝心で大変なところですよ」
基礎とは建物の一番下、地面と接する部分のことで、ウッドデッキの場合ここにはコンクリート製の「束石(つかいし)」を設置するのが定番だ。
「D.I.Yでウッドデッキを作る初心者が、まず初めにつまずくのがこの工事なんですよ」
「確かに、地面には何も目印がないのだから、素人ではお手上げだよな」
建築のプロが木杭と水糸を使い、施工現場に三次元で線を引いていくのを見たことがある人もいるだろう。しかしこれはプロだからできることで、素人には敷居が高すぎる。
▲BBQ用の網を切断したもの。束石(つかいし)を置く場所を決める際に使用する
「そこで編集長のためにアイデアを考えてきましたよ。これです」
「おーBBQか。気が早いが腹ごしらえは重要だな。よしよしビールも開けるか」
「違いますよ! まだ午前中ですよ」
俺が取り出したのは、束石の大きさに切ったBBQ網と数本の材木。
「BBQ網と薪なんか出すから」
「これは薪じゃないです! さぁ編集長、まずは木工の練習がてら三角定規を作ってもらいますよ」
「さんかくじょうぎーーー?」
■工事前の下準備。電動工具を使って直角三角定規作り
▲マルチボルト(36V)コードレスドライバドリル DS36DA(7万5600円/税別)。18V製品と同一サイズながら、リチウムイオン電池を36Vに高電圧化することで、連続作業性能が大幅に向上。急速充電器(冷却機能付)・ケース・予備電池・電池カバー・サイドハンドルが付属する。サイズ:全長204×全高262×全幅78mm、重量2.3kg
古来より、大工さんが現場で直角を見るときに使う「三四五(さんしご=直角三角定規)」。直角三角形の3辺の長さを3:4:5にすることで、一つの角の角度が90度になるという、ピタゴラスの定理を使ったこの定規の歴史は古く、古代エジプトやバビロニアの建築現場でも活用されていたとか…。
「さ、これを使って、直角三角定規の形に組み立ててください」
「お! 早速、電動工具の登場か。かっこいいじゃん!」
本当に呑気なものだ。取り出したのはHiKOKI(ハイコーキ)の「電動ドライバドリル DS36DA」。先端部を付け替えることで穴あけドリルとしても、ビス締めドライバーとしても使える、木工では欠かせない電動工具だ。はっきりいって、三角定規くらい俺が作った方が早いのだが、ワイングラスより重いものは持ったことがないとうそぶく編集長に、いきなりウッドデッキ本体のビス打ちをさせるわけにもいくまい。ここは廃材利用の三角定規で、電動工具の練習をしてもらおうという、俺の深い考えがあるわけなのだ。
「おい、早く作り方を教えてよ!」
俺の思惑など関係なく、編集長がドライバドリルを振り回す。
「ではピタゴラスの定理にしたがって、60cm、80cm、100cmの長さで組み立てましょう」
▲コースレッド(木工用ネジ)を打ち込む時は、ドライバドリルを垂直にすることが大切。ビスをのぞき込もうとすると、ビスが斜めに打ち込まれてしまうため注意が必要だ
廃材の表面に印を付け、三角形の形を作ったら、まずはドリルの刃を付けてビスの下穴を開ける。
「手間を省いて下穴なしでビスを打つと、材木が割れるんですよね」
「急がば回れってやつだな」
下穴が開いたら、ドライバドリルの先端をプラスドライバビットに替え、今度はビス打ち。初心者は強く打ち込みすぎて失敗するので、トルク調整機能をうまく使って締め込む強さを加減しよう。
「ふー、初めての電動工具は緊張するな。ほれ、定規が完成したぞ」
「電動工具は便利ですが、ケガが怖いですからね。それでは、これを使って測量を開始しましょう」
■作った直角三角定規でいよいよ測量
▲作った三角定規を家に当て、直角を出す。これが曲がっていると、全てが歪むため大事な作業だ
測量といっても、素人のウッドデッキ作り。そこまで大層なものではない。
庭の地面を製図板に見立て、お手製のでかい三角定規で家からの直角と距離を測り、そこにBBQ網を置いて白スプレーで束石の配置図を描いていくだけだ。
▲束石(つかいし)を設置する場所にBBQ網を置き、白いスプレーでマーキング。木の板や段ボール紙でも可能だが、BBQ網や透明アクリルを使うと、設置場所の中心がチェックしやすいのでオススメ
▲束石と大引きなどの配置図。四角の枠の中に束石が収まる
もどかしさが募るが、編集長は初めての作業。手を出したいのをグッとこらえ、ようやく工事の前段階が完成。
次回は、いよいよ基礎づくり。
>>>HiKOKI マルチボルトコードレスドライバドリル DS36DA
(写真・文/阪口克)
旅と自然の中の暮らしをテーマに国内外を取材するフリーカメラマン。秩父郡長瀞町の自宅は6年かけて家族でセルフビルド。家を経験ゼロからDIYで建てる。家族でセルフビルドした日々を描いた『家をセルフでビルドしたい』が文藝春秋から発売中。ほか近著に『笑って!小屋作り』(山と渓谷社)、『世界中からいただきます』(偕成社)など。
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