注目の“ネオクラ”バイク「キャバレロ スクランブラー」を手掛けるファンティックって知ってる?
&GP / 2019年9月1日 19時0分
注目の“ネオクラ”バイク「キャバレロ スクランブラー」を手掛けるファンティックって知ってる?
イタリアからまた1台、注目のバイクが上陸しました。それが、ファンティック「キャバレロ スクランブラー」。
ファンティックとは、日本ではまだまだ馴染みのないブランドですが、人気の“スクランブラー”スタイルをまとう同社のモデルは、果たしてどんな魅力を備えたバイクなのでしょうか?
■ファンティックは生粋のスクランブラーメーカー
キャバレロ スクランブラー500
最近のトレンド…というよりも、すでにバイクの1カテゴリーとして定着した感のある“ネオクラシック”。ちょっとレトロ感のある、どこか懐かしいスタイルが特徴です。
ネオクラシック、略して“ネオクラ”の中でも、最も高い人気を得ているのがスクランブラーです。まだオフロード専門マシンがカテゴリーとして確立されていなかった1960年代。オンロードスポーツのバイクにブロックタイヤを履かせ、マフラーを路面から高い位置に据えて、未舗装のコースでもレースができるよう改造したのが、スクランブラーの始まり。
現在、数社がラインナップしているスクランブラーは、そうした過去のマシンのスパイスを適度に利かせたストリートバイクを指します。必ずしも“オフロードをバリバリ飛ばす!”ことを目的とはせず、“都会で楽しめるワイルド感”が、人気の秘密でしょう。
そんなスクランブラー人気絶頂の中、イタリアから注目のモデルが上陸しました。ファンティック「キャバレロ スクランブラー」がそれ。ファンティックは、1968年に設立された、半世紀の歴史を持つバイクメーカー。同社初のオリジナルモデルが「キャバレロ クロス50」というスクランブラーですから、ある意味、生粋のスクランブラーメーカーです。
キャバレロ スクランブラー500
クロス50は、発売と同時にその本格的なスタイルとリーズナブルな価格がウケて若者の間で大ヒット。続いて、100ccの「クロスストラーダ」、125ccの「レギュラリティ」が加わります。
レースに熱いイタリアンブランドの常として、ファンティックも1975年にワークスチームを結成。コンペティション向けのオフロードモデルを開発し、トライアルやエンデューロといったレースに参戦。数々のタイトルを獲得します。
ところが、モータースポーツでの活躍とは裏腹に、レースに注力しすぎたか、2輪市場の先行きを読み誤ったか、ファンティックはなんと2度の倒産に見舞われます! 2014年には車両のデリバリーも停止し、いよいよブランド消滅か…と危ぶまれたのですが、ファンティックの名を惜しんだイタリアの投資家グループが救済。以来、新生ファンティックは、順調に業績を伸ばしています。
■キャバレロシリーズは作り分けが見事
キャバレロ スクランブラー500
今年2019年から、日本への導入が開始されたファンティックのモデルは3種類。伝統のスタイルを採るキャバレロ スクランブラー。北米で人気の高いフラットトラック(ダートの周回レース)で使われるマシンをイメージした「キャバレロ フラットトラック」。そして、未舗装路のロングツーリング(トレイル)を楽しむためのオフロードモデル「エンデューロ」です。
キャバレロシリーズの2モデルは、ベースは同じマシンですが、シート形状やタイヤサイズが異なります。クラシカルなタックロールシートのスクランブラー、シングルシート風の、テール形状と一体化したデザインを採るフラットトラック。タイヤサイズは、前者が前19インチ/後17インチ、後者はなんと前後とも19インチ! 大きくファットなタイヤが特徴的です。赤と黄色のペイントが目に鮮やかなスクランブラーに対し、フラットトラックはマットなブラックでクールにキメる。見事に、2車を作り分けていますね。
エンジンは、どちらも125、250、500の3種類。すべて水冷4ストロークの単気筒です。組み合わされるトランスミッションは、6速マニュアル。そのうち今回は、スクランブラー500と250、そして、フラットトラック125に試乗することができました。
■オフロードでも自在にコントロールできそう
キャバレロ スクランブラー500
スクランブラー500は、野趣あふれる449ccエンジンが、バイクの性格を決定づけます。アイドリング時には、時に不整脈を打って、大排気量シングルであることを乗り手に意識させます。試乗車が“おろしたて”だったことも影響してか、エンジンはあまり回りたがりませんが、4000回転を超えると、レスポンスよく、厚いトルクでスクランブラー500をグイグイ押し出します。最高出力は40馬力/7500回転、最大トルクは4.4kgf-m/6000回転。スタイリッシュな外観と裏腹に、野太く速いスクランブラーです。
キャバレロ スクランブラー500
少々荒削りなところを含めて個性を楽しみたい500に対し、スクランブラー250はグッと日常的。素直で乗りやすいモデルです。
キャバレロ スクランブラー250
249.6ccのユニットは、ボア、ストロークともに500より縮小した、77×53.6mm。最高出力は25馬力/8500回転、最大トルクは2.2kgf-m/6500回転とスペックは控えめですが、素直にエンジンが回ってパワーがわき出るので、街乗りでも十二分にスポーティ。これは楽しい!
500も250もフロントに19インチを履いているため“曲がり”の入りは穏やかですが、回頭性は良好。やや深めに傾きながら、ひらり、ひらりとカーブをこなします。バイクを手の内に収めやすいので、オフロードの達人なら、自在にコントロールして楽しめるかもしれません。
■エンジンの精緻さが光るフラットトラック125
キャバレロ フラットトラック125
さて、前後に19インチを装着するフラットトラック125は、立ち姿からして個性的。いわゆるトラッカーらしい、冒険心にあふれたスタイルです。カタログ上のシート高は820mm。普通のオフロードモデルなら、ライダーがシートにまたがるとググッとボディが沈んで足つきがラクになるのですが、フラットトラックのそれは予想外にしっかりしている。あまり車高が落ちない。そのため、身長165cm(短足)の自分だと、両足がつま先立ちになります。赤信号などの停車時には注意しないと…。
ポジション自体は、軽く肩を開いて前傾した自然なもの。125ccは回転フィールが素晴らしく軽やかで、楽々と1万回転に達します。単気筒で、このスムーズさはすごい! スペックは公表されていないのですが、苦もなく高回転域に達するので、自ずとピークパワーを使うことになります。小排気量ながら、なかなかの俊足バイクです。
実は、250と500は中国のゾンシン(zangshen)製エンジンがベース、125はヤマハ-ミナレリのエンジンに専用チューンを施したもの。排気量が違うので、両者を較べることに意味はありませんが、機械的な精緻さでは、後者が一歩先を行く印象を受けました。
スクランブラーとフラットトラック。上手にイメージを分けた2モデルをそろえるキャバレロシリーズ。価格は2モデル共通で、125が79万円、250が89万円、500が110万円です。日本では、各種バイク用品やイタリアンスクーターのランブレッタを手掛ける、サインハウスが輸入販売元となっています。
<SPECIFICATIONS>
☆キャバレロ スクランブラー500
ボディサイズ:L2166×W820×H1135mm
車両重量:150kg(乾燥重量)
エンジン: 449cc 水冷単気筒 SOHC
トランスミッション:6速MT
最高出力:40馬力/7500回転
最大トルク:4.4kgf-m/6000回転
価格:110万円
<SPECIFICATIONS>
☆キャバレロ スクランブラー250
ボディサイズ:L2166×W820×H1135mm
車両重量:140kg(乾燥重量)
エンジン: 249.6cc 水冷単気筒 SOHC
トランスミッション:6速MT
最高出力:25馬力/8500回転
最大トルク:2.2kgf-m/6500回転
価格:89万円
<SPECIFICATIONS>
☆キャバレロ フラットトラック125
ボディサイズ:L2180×W820×H1154mm
車両重量:130kg(乾燥重量)
エンジン: 244.4cc 水冷単気筒 SOHC
トランスミッション:6速MT
最高出力:非公表
最大トルク:非公表
価格:79万円
(文&写真/ダン・アオキ)
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