『頭文字D』でロータリーの大ファンに!少年の熱い夢を応援するマツダの“飽くなき挑戦”
&GP / 2019年9月9日 19時0分
『頭文字D』でロータリーの大ファンに!少年の熱い夢を応援するマツダの“飽くなき挑戦”
この夏、広島県にあるマツダ本社を、ひとりの少年が訪れました。
しげの秀一氏の人気作品『頭文字D』(イニシャルD)を通じて、大のロータリーエンジンファンになった彼が、今回、マツダ本社へと足を運んだのには、ある理由がありました。
大好きなロータリーエンジンのキーホルダーを作り、その売上げを難病に苦しむ子どもたちの治療費として寄付したいーー。ロータリーエンジンへの熱い思いが、少年の夢を後押ししていたのです。
■ロータリー大好き“未来の高橋兄弟”が聖地へ
今回、マツダ本社を訪れたのは、宮城県東松島市に住む小俣渓志郎くん(小6)。親戚からプレゼントされた『頭文字D』のDVDを観て以来、兄・翔太郎くん(中3)ともどもロータリーエンジンの大ファンに。
しかも、兄の翔太郎くんは、『頭文字D』で高橋涼介がドライブするFC型「サバンナRX-7」が大好き。一方、弟の渓志郎くんは、同じく劇中で高橋啓介がドライブするFD型「RX-7」が大好きという、まさに“未来の高橋兄弟”を想起させるふたりなのでした。
特に渓志郎くんは、ロータリーエンジンを好き過ぎるあまり、雑誌やインターネットなどを通じ、エンジンの構造や仕組みを勉強。ダンボールを使い、ゴムを動力源としたエンジン模型を自作したほか、無機質なエンジンをカラフルに彩った絵をいくつも描くなど、ロータリーへの思いを深めてきました。
そんな渓志郎くんの元に、ある日、オファーが届きます。彼がこども記者を務める『石巻日日こども新聞』の紙面を通じ、渓志郎くんの描いたロータリーエンジンの絵を見た地元企業・今野梱包の今野英樹社長が、「この絵でキーホルダーを作りませんか?」と提案してきたのです。
こうして商品化へと至ったキーホルダー「ロータリー」は、『石巻日日こども新聞』が展開する「石巻日日こども商店」を通じ、市販されることに。東日本大震災の際、日本全国はもとより、世界中から支援が寄せられたことに感動した渓志郎くんは、キーホルダーの売上げを「難病治療に役立てたい」と考え、京都大学 iPS細胞研究所へ寄付することを決意します。
実は今回、彼らのマツダ本社訪問が実現した背景には、マツダ本社のミュージアムを見学したり、工場を取材したりした模様を『石巻日日こども新聞』で記事化することで、ひとつでも多くのキーホルダーを販売し、より多くの寄付につなげたいという、渓志郎くんの夢があったのです。
■少年の夢に応えたマツダの熱い“おもてなし”
渓志郎くんの思いを受け止めたマツダは、彼らを広島本社へと招待し、『石巻日日こども新聞』の取材に対応。少年の夢への挑戦をサポートすることにしました。
そして迎えた取材初日。渓志郎くんたちを温かく出迎えてくれたのは、現行型「ロードスター」の開発を指揮されたマツダの山本修弘さん。現在もロードスターアンバサダーを担われるなど、“ロードスターの人”というイメージが強い山本さんですが、実はかつて、FC用やル・マン24時間耐久レース向けのロータリーエンジン開発を担当されていたほか、FDのパワートレイン開発担当も務められるなど、ロータリーとの縁が深い方なのです。
渓志郎くんは、山本さんから「マツダがなぜロータリーエンジンを商品化できたのか?」などのレクチャーを受けた後、山本さん自らドライブするFDの助手席に座り、生まれて初めての“ロータリードライブ”を体験。「モーターのように滑らか。手に汗をかくくらい加速が強烈でした」と、興奮を隠せない様子でした。
取材2日目は、広島とマツダの歴史について学んだ後、敷地内の「モノ造り歴史館」へ。渓志郎くんはロータリーエンジンの構造について、“ロータリーのプロ”ともいうべきマツダの技術者から、説明を受けました。
実は当日、マツダはモノ造り歴史館に、ロータリーエンジン搭載の名車を特別に展示。そこには、兄・翔太郎くんが好きなFCのカブリオレや、渓志郎くんが好きなFDはもちろんのこと、初代のSA型サバンナRX-7や、そのラリー仕様、そして、ル・マン24時間耐久レースで優勝を飾った「787B」など、ロータリー好きにとってのお宝が勢ぞろいしていました。
おまけに、FCやFDといった市販車だけでなく、貴重な787BやRX-7ラリーカーのコクピットにも座らせてくれるなど、マツダの皆さんは心より、渓志郎くんの訪問を大歓迎していました。
そのお礼とばかりに、渓志郎くんはダンボールでできた先述の手作り模型を、マツダの皆さんに披露。渓志郎くんは今回、ゴム動力を使った“初期型”に加え、モーターで駆動する“改良型”も持参。その見事な出来栄えに、日頃からロータリーエンジンに触れているマツダの皆さんからも、思わず感嘆の声が漏れました。
その後、渓志郎くんはロータリーエンジンの保守部品を手掛ける工場を見学した後、マツダミュージアムへ。世界で初めて2ローター・ロータリーエンジンを商品化した「コスモスポーツ」や、世界唯一の3ローター・ロータリーエンジン搭載車「ユーノスコスモ」といった往年の名車を細かくチェック。撮影や取材に余念がありませんでした。
難病治療の役に立ちたいという夢へ挑戦するために、今回、マツダ本社を訪れたこども記者の渓志郎くん。「ロータリーエンジンを作ったマツダのことがますます好きになりましたし、大きくなったらマツダに入社したいと思いました」と、充実した表情で取材活動を振り返ってくれました。
間もなく登場する電気自動車の車載発電用エンジンとして、復活することが確実視されているマツダのロータリーエンジン。しかしクルマ好きはどうしても、かつてのようにスポーツカーやクーペに搭載されるロータリーエンジンの復活を期待してしまいます。
今回、自らの夢への挑戦のため、熱い思いをマツダへとぶつけた渓志郎くん。近い将来、マツダの一員となった彼が、ロータリーエンジンの未来を担う存在となる日が来るかもしれませんね。
■夢を抱く少年をワクワクさせたロータリーマシン10選
今回マツダは、渓志郎くんの夢への挑戦をサポートするために、ロータリーエンジン搭載の名車を10台用意して出迎えました。数々の困難を乗り越えて市販へとこぎ着けた、飽くなき挑戦=ロータリースピリットの賜物を、改めてここに紹介します。
>>コスモスポーツ
世界初の2ローター・ロータリーエンジン車として1967年に登場。搭載された“10A型”エンジンは、排気量491cc×2から最高出力110馬力を発生。革新的なエンジンに勝るとも劣らない先鋭的なスタイルは、今見ても美しい。’68年に登場した後期モデルは、ボディやエンジンをブラッシュアップ。最高出力は128馬力へと向上していた。
>>カペラ ロータリーGR
1970年に登場した初代「カペラ」は、排気量573cc×2の“12A型”エンジンを搭載。最高出力は120馬力を発生した。’71年には、インテリアの高級感を高めた「Gシリーズ」も登場している。
>>サバンナ
1971年にロータリーエンジン専用モデルとして登場。初期型は105馬力の10A型エンジンを搭載していたが、後に12A型エンジンを搭載する「サバンナGT」が誕生した。サーキットでの活躍も目覚ましく、あの日産「スカイラインGT-R」の連勝記録を止めたクルマとしても有名だ。
>>コスモAP
オイルショック直後の1975年に登場。高い動力性能はもちろん、AP(Anti-Pollution=公害対策)のネーミングどおり、優れた環境性能と低燃費を実現していた。ロータリーエンジンは、125馬力の12A型に加え、排気量654cc×2、最高出力135馬力の“13B型”も用意。
>>サバンナRX-7(SA)
ロータリーエンジン搭載の本格スポーツカーとして1978年に登場。端正なスタイルとフロントミッドシップレイアウトによる優れた走行性能により、世界中で高い人気を博した。搭載されるエンジンは12A型で、後期型にはそのターボ仕様も用意された。
>>サバンナRX-7(FC)
2代目RX-7として、1985年にクーペ仕様“FC3S”が登場。アルミ製ブレーキキャリパーや、4WSのような効果を発揮する“トーコントロールハブ”など、最先端の技術を導入。エンジンは13B型ターボで、初期型は185馬力、後期型は205馬力、特別仕様「アンフィニ」は215馬力を発生。後にカブリオレの“FC3C”も登場する。
>>RX-7(FD)
“ロータリーエンジン・ベスト・ピュア・スポーツ”をコンセプトに、1991年にデビュー。13B型エンジンにシーケンシャルツインターボをプラスし、最高出力は初期型で255馬力、後期型では280馬力を発生した。誕生から25年以上が経過した今も、中古車人気の衰えない名車中の名車。
>>ユーノスコスモ
マツダが展開していた「ユーノス」ブランドの旗艦モデルとして1992年に登場。世界唯一の3ローター・ロータリーエンジン“20B-REW型”搭載モデルは、280馬力を発生。美しいデザインや豪華なインテリア、世界初のGPSカーナビ搭載などでも注目を集めた。
>>サバンナRX-7(SA)ラリー仕様
1985年のアクロポリスラリーで3位に入賞した、SA型ベースのラリー仕様。当時のモータースポーツカテゴリー“グループB”のレギュレーションを満たすため、市販車を大幅に改造。エンジンは、約300馬力を発生する13B型へと換装されていた。
>>787B
1991年のル・マン24時間耐久レースにおいて、日本車初の総合優勝を飾った伝説のレーシングカー。エンジンは、排気量654cc×4ローターのレース専用エンジン“R26B型”を搭載。今でも、各地で開催されるイベントにおいて、その勇姿を披露。甲高いエキゾーストノートは、まさに“一聞”の価値あり。
(文/&GP編集部 写真/&GP編集部、マツダ)
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