基礎作りは「金象印」のスコップで【DIYでウッドデッキ自作顛末記②】
&GP / 2019年9月29日 9時0分
基礎作りは「金象印」のスコップで【DIYでウッドデッキ自作顛末記②】
なかば強引に始まった、編集長宅のウッドデッキ工事。製作までの経緯と工事の前段階まではこちら。
手作りの三角定規と白スプレーで、庭に直接図面を描くという強硬策は成功するのか!?
さあ、いよいよ基礎工事がスタート。
「さて図面が完成したぞ。これで束石を置く場所は一目瞭然だな」
「じゃあ次の工程に進みましょう。編集長、例のものはありますか?」
「おう、買っといたぞ」
■どれも同じではない剣先スコップ
▲土木から家庭園芸まで幅広く使用でき、掘る・すくう作業に最適。。全長:970mm、頭部肩幅232mm、頭部長さ292mm、頭部板厚:1.2mm。オールスチール製
ここで頼んでおいたスペシャルアイテムが登場する。
その名は「剣先スコップ」!
ツルハシと並び、土木工事を象徴する工具といえる剣先スコップ。ホームセンターに行けば、多様なメーカーと価格の商品が並んでいるが、全て同じような形で、すでに完成されたデザインなのがよくわかる。通常の平スコップでは跳ね返されてしまう固く締まった地盤に、その鋭く尖った切っ先はザクっと突き刺さり、周囲の土をほぐし、すくい上げることができるのだ。
機能はどれも同じなのだから安いもので良いだろうと思われがちだが、いやいや待たれよ。剣先スコップは、スコップであると同時に「剣」なのだ。「刃物」なのだ。安くて切れない刃物ほど、厄介で危ない道具はない。
では良い剣先スコップは、何を目印に探せば良いか? 土木工事、農業、造園業…地面と戦う男たちに聞いてみると良い。多くの人がこう答えるであろう。
「金色の象」を探せと。
▲パイプ柄部はスチール鋼管で、握り部は握りやすいいタイコ型グリップを採用。金象印「パイプ柄ショベル丸形」と比較しマイナス25%軽量化を実現(1.8kg→1.35kg)
「金象印のスコップ」は、明治から続く信頼の明かし。戦前から多くの現場で愛用されている、プロが認めた本物の道具なのだ。研ぎ澄まされた切っ先(きっさき)は、どんな硬い地面も突き破る。また作業目的ごとに、重量や大きさ、バランスを微妙に変えた多くのラインナップが存在し、プロの作業を効率よくサポートしている。
今回選んだのは、比較的柔らかい地面で使うことが想定された、金象印の「かるーい象ショベル丸形」(2300円)。先端のショベル部分と柄、ハンドルがオールスチール製の一体型になったタイプで、軽くて初心者にも使いやすい。
こいつで地面につけた白い印をザクザク掘っていけば、難関の基礎工事もあっという間に完成するはずなのだが…。
▲地面に白スプレーで描いた「束石(つかいし)」=基礎石の配置図に沿ってスコップを入れ、土を掘り返す
▲芝生を切るように剣先を入れ、土を掘る。今回使う束石は17cm四方の束石だが、それが収まるサイズよりも広い範囲の穴を掘っていく。深さは束石の半分が埋まるくらい。
▲束石は全部で10個だが、土に埋める束石は5個。たった5個なのに、日頃、土木作業をしない身には結構こたえる
「おい、穴掘りってのは、こんなにしんどいものなのか」
1個目の穴を掘り終わっただけで、息が上がる編集長。そうなのだ、地面に穴を掘るというのは、とても大変な仕事なのだ。
「サスペンス映画で、夜中に森の中で穴掘って遺体を埋めるシーンがありますけど、1人じゃ絶対無理ですよね」
よく“切れる”剣先スコップを使っても、素人が固く締まった地面を掘るのは難しい。この工事での目標深度は30cm。頑張ってもらうしかない。
「あー、終わったー!!」
「編集長、頑張りましたねー。じゃあ今度は穴にこれを入れてください」
「なんだよ! せっかく掘ったのにまた埋めるのか!?」
▲掘った穴に敷き詰めるのが砕石。約20kgで、200〜300円。パッケージに書かれている「30~0」が石の大きさ。この場合、石の大きさが30mm以内に粉砕した石ということ
どさっと出してきたのは、砕石(さいせき)の袋。砕石とは文字通り、石を工場で砕いたもので、袋の中には小指の先ほどの大きさの小石から、砂よりも細かいものまで、様々な大きさの粒がぎっしり詰まっている。この砕石を穴に入れることで、穴の深さと水平を調節すると同時に、束石をしっかり安定させることができるのだ。
▲砕石を50mmほど敷き詰め、ダンパーで突いて底を固め、その上に束石を置く。その後、土を埋め戻す。今回使う束石は、柱とビス留めするための羽子板付き
「砕石を入れ終わったら、上に束石を置いてきますよ」
「しかし、なんだか傾いてるぞ」
「編集長、剣先スコップと一緒に頼んでおいた水準器をお願いします」
「おう、そう言うと思っていたぜ」
▲シャイニングブルーの美しいアルマイト仕上げのシンワ測定の「ブルーレベル PRO600」。H型とBOX型を融合した断面形状で、歪みに強い。サイズ:W600×H65×D27mm、重量:500g
そう言って取り出した水準器は、見た目も鮮やかなブルーの、ずいぶんと格好いい奴だった。
「えらい、カッコイイのを買いましたね」
「男の道具はカッコよくないとダメでしょ。カッコイイ道具ってのは、買う時にテンションも上がるし、使ってて気分がいいから。素人には分不相応でも、プロが使うものはそそられるしね」
さすがは『&GP』編集長。悔しいが言うことに説得力がある。さて編集長が買ってきた水準器は、工業用計測機器大手、シンワ測定の「ブルーレベル PRO600」(3740円/税別)。強靭なアルミのボディが高い精度の測定を約束するプロ用の逸品だ。
▲クリアブルーの溶液と極太ホワイトラインで大型の気泡管は視認性抜群。水平垂直に加え、45°気泡管も付き、全気泡管±1.0mm/mと高精度
「じゃあ、これを使って1個1個の水平を見ていきましょう」
「隣同士の高さが微妙に違うのはいいのか?」
▲水準器の長さより広いところの水平を測る時は、両方に棒を渡し、その棒の上に水準器を置いて水平を測る
なかなか鋭いところを突いてくる。そう、そこがウッドデッキ基礎工事で一番の難関で、初心者がつまづき挫折するポイントなのだが、ここでも俺は編集長のために必勝のアイデアを考えてきていた。
■きっちり測るのが一番だが、だいたい水平ならOK!
「そこは、そんなに気にしなくてもいいですよ」
「デコボコのデッキじゃ嫌だぞ、俺は」
「大丈夫ですって。隣同士の束石に木を乗せて水準器で、だいたい水平にしといてください」
「そんだけで、ホントに大丈夫なのか!? 」
▲束石をすべて置いたところ。なんとなく基礎っぽくなってきた
そう大丈夫。安心しなさいって編集長。俺のアイデアに問題はないはずだって…。
>> 連載
(写真・文/阪口克)
旅と自然の中の暮らしをテーマに国内外を取材するフリーカメラマン。秩父郡長瀞町の自宅は6年かけて家族でセルフビルド。家を経験ゼロからDIYで建てる。家族でセルフビルドした日々を描いた『家をセルフでビルドしたい』が文藝春秋から発売中。ほか近著に『笑って!小屋作り』(山と渓谷社)、『世界中からいただきます』(偕成社)など。
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