Googleなしの超ハイエンド機「HUAWEI Mate 30 Pro」は日本で発売されるのか?
&GP / 2019年9月30日 21時0分
Googleなしの超ハイエンド機「HUAWEI Mate 30 Pro」は日本で発売されるのか?
【#スマホ最前線】
ファーウェイは9月19日、ドイツ・ミュンヘンで「HUAWEI Mate 30」シリーズを発表しました。その最上位モデル「HUAWEI Mate 30 Pro」は、ファーウェイが発表したばかりの高性能チップ「Kirin 990」を搭載し、ライカが監修するクアッドカメラを搭載する超ハイエンドモデル。カメラの性能を評価する専門機関「DxOMark」のスマートフォン部門で最高得点を記録するなど、早くも注目を集めています。
▲9月19日に発表された最新フラッグシップ「HUAWEI Mate 30 Pro」は6色展開。予定価格は1099ユーロ(約12万9000円)
筆者もいち早く試用させてもらいましたが、超広角に対応して人気を集めた前モデル「Mate 20 Pro」(日本ではソフトバンク版とSIMフリー版が発売)よりも、ハイブリッド10倍ズームを実現した「P30 Pro」(日本ではドコモが発売)よりも、さらに性能が向上していることを実感しました。カメラ以外の部分でも、随所に新しさが感じられる端末でした。そのファーストインプレッションは、あとでじっくり。
▲ライカ監修の4眼カメラを搭載。カメラを強調する新しいデザインを採用
■Androidスマホだけど、Googleアプリが使えない!?
Mate 30 Proは、カメラ性能に加えて、もうひとつ、別のことでも話題になっています。9月19日にお披露目されたMate 30 Proには、Googleのアプリが入っていなかったんです。「Gmail」も「Chrome」も「マップ」もプレインストールされておらず、「YouTube」も見当たらず…。「Playストア」も入っていないので、自分でダウンロードすることもできません。「設定」のアカウントの登録画面にも「Google」という項目は見当たらず、そもそもGoogleアカウントを設定できなくなっていました。
▲「Playストア」「Gmail」「マップ」などのアプリは入っておらず、ブラウザも「Chrome」ではない
OSはAndroid 10をベースとする「EMUI 10」を搭載。これは、ファーウェイの従来モデルと同じで、ファーウェイ独自のUIは導入していますが、「Androidスマートフォン」と呼べる仕様です。つまり、Mate 30 Proは「Androidだけど、Googleアプリが使えない」という、ユーザーにとっては不都合な仕様になっていました。
Googleアプリが入っていないのは、米国商務省が米国企業がファーウェイに製品やサービスなどを提供することを禁止しているからです。この禁輸措置には猶予期間があり、現状、11月まで延長されたと報じされていますが、ファーウェイとしては、米国企業のサポートを受けずに製品を作ることが急務となっています。なお、アメリカがフェーウェイに制裁を加える理由は、スパイ疑惑など安全保障上の問題とされていますが、ファーウェイは疑惑を否定しています。
新たに発表されるMate 30 Proには、Androidではない新しいOSが搭載されるのでは? という噂もありましたが、Androidはグーグルだけで開発したものではなく、誰もが使えるオープンソースなので、搭載には問題なかったようです。しかし、グーグルがメーカーとライセンス契約をして提供する「Google Mobile Service(GMS)は入れられなかったということです。
■ファーウェイが注力する「HMS」とは?
Mate 30シリーズの発表会の最後に、ファーウェイは、GSMの代替として「Huawei Mobile Service(HMS)」を充実させていくことを力説しました。HMSは、昨今の米中摩擦を受けて急遽始めたサービスではありません。中国ではそもそもGoogleサービスを利用できません。そのため、中国で販売されているファーウェイのスマホはGMSは入っておらず、HMSのアプリやサービスを利用できる仕組みになっています。ファーウェイには、GSMが使えずとも、ユーザーの国・地域に合わせたサービスを提供できるという自負があるのかもしれません。
▲ファーウェイの端末部門のトップである、コンシューマービジネスグループのCEO、リチャード・ユー氏は、HMSがすでに世界の多くの人に利用されていることをアピール
▲HMSに、今後10億ドルの投資を行うことも発表された
とは言っても、日本のユーザーにとって、ファーウェイのアプリマーケット「App Gallery」から入手できるアプリはまだまだ充実しているとは言えません。日本でのGoogleサービスの普及は周知の通り。iPhoneのユーザーでもGメールを使って、Googleマップを使うほどです。GSMを使えないことに不便を感じる人は少なくないでしょう。
■Mate 30 Proのグローバルでの発売は11月頃か!?
現状では、Googleのアプリを使えないMate 30 Proが、日本で発売されるかどうかは、まだわかりません。しかし、発表会に日本のメディアも招待したわけですから、現時点では「日本で売りたい」という気持ちはあるはずです。
発表会の直後にグループインタビューに参加しましたが、Mate 30 Proのグローバルでの発売は「1〜2か月後になるだろう」とことでした。発売は少し先ですが、ミュンヘンの街には、早くもMate 30 Proの広告が掲出されていました。欧州ではファーウェイのユーザーは多く、今年発売されたP30 Proも大ヒットしているようなので、Mate 30 Proを待っている人は多いでしょう。発売までにどんな動きがあるのかを見守りたいと思います。
▲報道向けのグループインタビューに応じたコンシューマービジネスグループで、ハンドセット部門のプレジデントを務めるケヴィン・ホー氏。発表会ではMate 30 Proの発売時期についての言及はなかったが、「1〜2ヶ月後になるだろう」という回答だった
■日本で発売されるのはSIMフリーモデル?
筆者は政治には詳しくないので、米中摩擦がどうなるかは予測できません。しかし、Mate 30 Proの日本での発売については、下記の可能性があると考えています。
1. 米中摩擦が解消されて、Googleアプリがインストールされて、キャリアモデルとSIMフリーモデルが発売
2. Googleアプリがインストールされないままで、SIMフリーモデルが発売
3. キャリアモデル、SIMフリーモデルともに発売が見送られる
理想は「1」ですが、筆者は「2」でも発売してほしいと思っています。Mate 30 Proは、Googleが使えなくても魅力的な端末ですし、カメラ性能を重視する人は満足できるはずです。スマホを2台、3台と持っているギーク層には「GSMが使えないスマホってどうなの?」と、逆に物欲を刺激をする要素もあるでしょう。Mate 30 ProはAndroid端末なので、Googleアプリは動くはずです。なにか手段があるのでは? そんな話題も広がるかもしれません。
■今後発売するスマホには、新しいOSが搭載される可能性も…
ファーウェイは、中国で8月に開催された開発者向けのイベントで「HarmonyOS」というオープンソースの独自OSを発表しています。さまざまなデバイスでの利用を想定したOSで、今後発売されるスマホに搭載される可能性も高いでしょう。
これまでにもWindows MobileやTizen、Firefox OSなど「第3のOS」として注目されたOSはありますが、広く普及するには至りませんでした。5G時代に向けて、Androidよりも、さらにオープンなプラットフォームがあってもいいのでは? 激戦のスマートフォン市場で躍進を遂げたファーウェイの新しい挑戦に期待したい気持ちもあります。
■すごいのはカメラだけではない! Mate 30 Proのファーストインプレ
さて、日本での発売がどうなるかがわからないMate 30 Proですが、いち早く使ったみた感想を述べてみようと思います。
まず、デザインがかっこいい。6.53インチの有機ELディスプレイは、左右端が深くカーブしてベゼルが見えない「Horizon Display」を初めて採用し、従来モデルよりも “フルスクリーン感” が増したように感じます。
▲ディスプレイの左右がカーブが深くなった
▲上から見ると、左右のベゼルは見えない
クアッドカメラは、超広角(18mm/F1.8/40メガピクセル)+広角(27mm/F1.6/40メガピクセル)+望遠(80mm/F2.4/8メガピクセル)+3Dカメラ(深度センサー)という組み合わせ。メインで使う広角カメラだけでなく、超広角カメラにも大型センサーを搭載したことがポイント。ビデオ撮影性能も強化され、暗い場所でも明るく撮影できるようになり、最大7680fpsで撮影する「ウルトラスローモーション」や、広角と望遠ズームの2画面撮影なども楽しめます。
▲クアッドカメラのスペック。広角カメラと望遠カメラは光学式手ブレ補正に対応
▲超広角カメラにも1/1.54インチの大型センサーを採用。メインカメラとして用いられる広角カメラには光を効率よく取り込めるRYYBセンサーを採用
▲超広角で撮影した作例
▲広角で撮影
▲望遠(光学3倍ズーム)で撮影
▲最大30倍のデジタルズームでも、そこそこクリアに撮影できる
▲料理を撮影した作例
▲夜景も鮮明な画質で撮れる
4200mAhの大容量バッテリーを搭載し、最大40Wでの急速充電にも対応。ワイヤレスでも最大27Wで充電でき、前モデルで話題になった、他のデバイスに給電できる機能も引き続き搭載しています。
▲大画面だが、ボディ幅は細めで、手に馴染みやすい
▲背面パネルの質感もリッチ
海外では5G対応モデルも発売されますが、5Gと4GのDSDS(デュアルSIMデュアルスタンバイ)にも対応しています。時代を一歩も二歩もリードしている端末と言っていいでしょう。これを日本では買えないとしたら…、それはとても不幸なことですよね。
>> ファーウェイ
(取材・文/村元正剛)
iモードが始まった1999年からモバイル業界を取材し、さまざまな雑誌やWebメディアに記事を寄稿。2005年に編集プロダクション「ゴーズ」を設立。スマホ関連の書籍・ムックの編集にも携わっている。
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