電気自動車に劣らぬ滑らかな加速!アウディ「A6」は移動ツールとしての完成度が抜群
&GP / 2019年10月28日 19時0分
電気自動車に劣らぬ滑らかな加速!アウディ「A6」は移動ツールとしての完成度が抜群
世界的なSUVブームの波に乗り、SUVラインナップの拡充を図っているアウディ。しかし、そんな昨今においても、アウディのメインストリームはやはり、セダンや“アバント”と呼ばれるステーションワゴンだろう。
セダンは「A3」、「A4」、「A6」、さらには「A8」と4つのサイズをラインナップ。その中の最新モデルが、ここに紹介するA6だ。A6は欧州でいうところの“Eセグメント”に属し、ライバルはメルセデス・ベンツの「Eクラス」やBMW「5シリーズ」。日本車でいえば、レクサス「GS」が相当する。
■懐かしのアウディ「クワトロ」を想起させるフェンダーデザイン
新しいA6を見ての第一印象は、「あれ、意外と変わったな」というもの。
つい先頃まで、アウディのフルモデルチェンジといえば、中身を全面刷新しても、デザインは大きく変化せず、見た瞬間、従来モデルなのか、それとも新型なのか、判断するのが難しいことが少なくなかった。それは、アウディがデザインと中身に絶対的な自信があることの裏返しだったのかもしれないが、スタイリングの新鮮さが希薄だったことから、新型への買い替えを積極的に検討しないユーザーも少なくなかったに違いない。
しかし、新しいA6は違う。基本フォルムこそ従来モデルを継承しているが、顔つきは一段とシャープになって洗練された。中でも印象的なのは、ボディサイドを走るプレスライン。従来のアウディ車は、すべてフロントフェンダーからリアまで、1本のシャープなラインがビシッと貫いていた。しかし新しいA6は、フロントフェンダーとリアフェンダーに独立したプレスラインが入り、ドア部分は滑らかな面で構成されている。
前後フェンダーに入るこのラインは、先立ってデビューした「A7スポーツバック」にも見られるが、A6の方がフェンダーの張り出しがより強調されている。このフェンダーデザインは、かつて量産車として世界初のフルタイム4WDシステムを組み込み、ラリーなどでも大活躍したあのアウディ「クワトロ」を想起させるもの。昨今、クルマ業界では、懐古主義がひとつのトレンドとなっているが、懐かしいデザインをさりげなく盛り込んだA6の演出は、クルマ好きのオトナの心を揺さぶることだろう。
ボディバリエーションは従来通り、セダンとアバントを用意。セダンのラゲッジスペース容量は530L。セダンであってもリアシートの背もたれを前に倒して荷室を広げることができる。
アバントでは荷室がさらに広く、リアシートを起こした状態でも565Lと大容量。さらにリアシートの背もたれを前に倒せば、1680Lまで拡大する。アバントのラゲッジスペースは、リアゲートを開けた瞬間、あまりの広さに驚くほどだ。
ちなみにアウディは、1980年代からエアロダイナイナミクスの追求に力を入れてきたメーカーとして知られる。新しいA6も、欧州仕様のセダンで空気抵抗係数0.24という優れた空力性能を実現。この辺りも、アウディらしさを実感させてくれる要素だ。
■アウディにおける最新のドライビング環境を導入
新型A6の運転席に座ると、運転環境はアウディの最新フェーズのそれが採用されていることを実感する。
ナビゲーションなどの情報を表示するセンターパネル、ドライバーの目の前にあるメーターパネル、そして、空調の設定やナビの文字入力などを行うコントローラーに、それぞれ大型液晶ディスプレイを採用。視覚的にも操作面でも、先進性を直感的に伝えてくる。
そうしたコックピットの仕立ては、フラッグシップサルーンのA8などと共通のテイストで、自分がA6に乗っているのか、それともA8に乗っているのか、思わず分からなくなるほど。細かく見ると、確かにディテールのフィニッシングでA8などとは多少の差をつけられているが、新型A6のクオリティの高さは、さすがアウディといったところだ。
新型A6で走り始めると、ボディサイズは大きいのに、予想以上に小回りが利くことに気づく。その理由は、フラッグシップサルーンのA8に続き、ハンドル操作に応じて前輪だけでなく、後輪も操舵する4WS機構を採用しているからだ。
この4WSは、約60km/h以下では小回りが効くよう最大5度、それ以上の速度では、走行安定性を高めるために最大1.5度、前輪とは逆方向に後輪が動くよう制御されている。残念ながら今回の試乗では、高速域での効果は実感できなかったが、街中や車庫入れの際の取り回しの良さは、想像以上だった。
■速いけれど、さほど速さを感じない最新のパワーユニット
昨今のヨーロッパ車は、マイルドハイブリッド機構を積極投入しているが、新型A6も例外ではない。
現在、日本に導入される「55 TFSI」は、3リッターのV6ターボエンジンに加え、オルタネーターとスターターを一体としたモーター(エンジンにはベルトでつながる)と、リチウムイオン電池を組み合わせたマイルリッドハイブリッド機構を搭載。アウディによると、これらの機構によって100km走行するたびに約0.7Lの燃料を節約できるそうだ。
ちなみに新型A6には、今後、252馬力を発生する2リッターの4気筒ガソリンターボや、207馬力の2リッター4気筒ディーゼルターボも追加される見込みだ。
55 TFSIに組み合わされるトランスミッションは、7速のデュアルクラッチ式で、駆動方式はお馴染みのクワトロ。前輪駆動の状態を基本とし、高度な予測制御を組み込むことで、必要に応じて瞬時に後輪へも駆動トルクを送る。さらに、前輪のみを駆動する際は、プロペラシャフト以降をクラッチによって切り離し、シャフトを回転させるためのエネルギーロスを削減するという、高効率なシステムも導入している。
55 TFSIのパワーユニットは、最高出力340馬力、最大トルク51.0kgf-mと強力で、車両重量が1880kgもあるとは思えないほど、鋭い加速を見せる。それを証明するように、停止状態から100km/hまで到達するまでのタイムは、5.1秒(欧州仕様)と駿足だ。
しかし不思議なことに、正直なところ、それほど速さを感じられない。その理由は、55 TFSIの加速フィールにある。最新の大排気量ターボエンジンらしく、わずか1370回転から最大トルクを発生するなど、低回転域から力強く、エンジンの回転上昇に比例して飛躍的に加速度が増すといった感覚がないため、速さを実感しにくいのだ。
その加速フィールは、どことなく電気自動車のそれに近い。スポーティというよりは、どこからでも最善を尽くそうとする、完成度の高い機械を想起させる。ハンドリングも同様の印象で、ドライバーに俊敏性などを感じさせることはなく、安定感やドライバーの疲れにくさを重視しているのが伝わってくる。
そうした走行特性のため、長時間運転しても疲れにくく、どこまでも走り続けられるとさえ思えるほど。まさに新型A6は、出来のいい移動手段なのだ。
ドイツには、速度制限のない高速道路・アウトバーンが存在する。そこで安全かつドライバーの疲労を最小限に抑えながら、超高速巡航をこなすためのツールと考えれば、新型A6の真骨頂を理解できるはずだ。
<SPECIFICATIONS>
☆55 TFSI クワトロ Sライン
ボディサイズ:L4950×W1885×H1430mm
車重:1880kg
駆動方式:4WD
エンジン:2994cc V型6気筒 DOHC ターボ
トランスミッション:7速AT(デュアルクラッチ式)
最高出力:340馬力/5200〜6400回転
最大トルク:51.0kgf-m/1370〜4500回転
価格:1035万円
<SPECIFICATIONS>
☆アバント 55 TFSI クワトロ Sライン
ボディサイズ:L4950×W1885×H1465mm
車重:1930kg
駆動方式:4WD
エンジン:2994cc V型6気筒 DOHC ターボ
トランスミッション:7速AT(デュアルクラッチ式)
最高出力:340馬力/5200〜6400回転
最大トルク:51.0kgf-m/1370〜4500回転
価格:1071万円
(文&写真/工藤貴宏)
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