人気モデルの起源を追え!市販化されたコンセプトモデル6選
&GP / 2019年11月7日 20時0分
人気モデルの起源を追え!市販化されたコンセプトモデル6選
一般的に新型車の開発には早くても数年の歳月がかかります。その前段階で、企画は5年以上前から行われます。長いものだと10年近く前に企画が持ち上がることも。
そして中には、コンセプトカーを製作して市場の反応を見て、高い評価が得られると製品化に向けて動き出すというケースもあります。
そこで、現在市販されている人気モデルは過去にどんなコンセプトカーとして公開されたのかを調べてみました。
■ホンダS660 ー2011年発表のEVコンセプトのデザインを踏襲
▲ホンダS660
2015年に登場した軽ミッドシップオープンスポーツのS660。ビート以来の軽2シーターオープンカーですが、S660にはある裏話が。
開発責任者は弱冠26歳(発表時)の若手社員。ホンダビートに憧れたクルマ好きの青年は、2010年に行われたホンダ技術研究所創立50周年の新商品提案企画で優勝。彼が企画案を提出したのは軽スポーツカーでした。
そして2011年3月から開発がスタートしましたが、直後に東日本大震災が発生。「もし開発スタートが少しでも遅れていたら、企画自体が動かなかったかもしれない」と、発表時のインタビューで答えていました。
S660のデザインモチーフになったのは、2011年の東京モーターショーで発表された次世代電動スポーツスポーツコンセプトのEV-STERでした。EV-STERのサイズは全長3570mm、全幅1500mmと、軽自動車規格よりわずかに大きいものでした。
▲ホンダEV-STER
しかし東京モーターショー直後から、このクルマを軽スポーツとして発売してほしいという声がホンダに数多く寄せられたそうです。
そして開発が動き出してから4年の歳月を経てS660が登場。フロントやサイドにEV-STERのデザインエッセンスを巧みに取り込んだ、精悍なデザインとなっています。
■ダイハツコペン -2007年発表の軽オープンスポーツコンセプトを市販化
▲ダイハツコペン XPLAY
現行型コペンのベースは、2007年のフランクフルトモーターショーでワールドプレミアとなり、同年の東京モーターショーにも出展されたOFC-1です。
OFCは「オープン・フューチャー・コンセプト」の略。天候を問わずオープンエア感覚が楽しめる開放感と爽快な走りを融合し、小さなクルマの楽しさを追求した軽オープンスポーツの未来形として披露されたモデルです。
▲ダイハツOFC-1
最大の特徴は電動キャノピートップがグラスルーフになっていること。ルーフをクローズしたときも車内で解放感を味わえると同時に、グラスルーフにスイッチ一つで透過/不透過をチョイスできる液晶サンシェードを装備したことでプライバシーも確保されます。ルーフは1/3で分割されるため、畳んだときのルーフがコンパクトになりオープン状態でもトランクスペースが確保されました。
OFC-1の公開から約7年。コペンは初代の生産終了から1年10カ月の期間を置いて2代目が登場しました。2代目はボディの一部が樹脂化され、着脱して外板を替えることができるDRESS-FORMATIONを採用しています。そしてデザインはRobe、XPLAY、Cero、そして新たにGR SPORTの4タイプが用意されました。
■トヨタアクア -元祖は2010年デトロイトモーターショーで公開されたコンパクトHV
▲トヨタアクア
トヨタのハイブリッドカーの元祖であるプリウスは、2003年に登場した2代目から3ナンバーサイズになりました。それもあり、プリウスの弟分となる5ナンバーサイズのハイブリッドカーが出るだろうということは早くから噂になっていました。
トヨタは2010年1月に開催された北米国際自動車ショーで小型ハイブリッドカーのFT-CHを初公開。これがアクアのモデルと位置付けられています。
▲トヨタFT-CH
FT-CHは圧倒的な環境性能を追求しながら、走る楽しさとの両立を目指したコンパクトクラスのハイブリッド専用車です。優れた空力性能を象徴するトライアングルシルエットとともにエアマネジメントを進化させたとされ、インテリアはパーソナル空間を重視してデザインされていました。
▲トヨタPRIUS C concept
そしてトヨタは、翌2011年1月の北米国際自動車ショーにおいて、FT-CHを一歩市販車に近いデザインにしたPRIUS C conceptを出展。そして2011年11月の東京モーターショーでアクアを世界初披露し、翌月から販売開始しました。
■マツダアテンザ(Mazda6)-魂動デザインを体現したコンセプトカーが元祖
▲マツダアテンザ
世界統一の名称としてMazda6へと変更されたアテンザですが、その起源は2010年に発表された靭(SHINARI)に遡ります。
▲マツダ靭(SHINARI)
靭(SHINARI)はマツダが新しいデザインテーマとして発表した魂動(こどう)-SOUL of MOTION-を体現したデザインコンセプトモデル。生物が見せる一瞬の動きの強さや美しさ、緊張感を形に落とした伸びやかなフォルムが特徴的な4ドアクーペです。「鋼や竹のように強い張りを持ったものをねじったり曲げたりした時に、それらが強い反発力をためながらしなやかにたわむ様子や、人や生き物が速い“動き”を生み出すために体をしなやかに変化させる姿をイメージ」して名づけられました。
▲マツダ雄(TAKERI)
そして翌2011年の東京モーターショーでは、靭(SHINARI)をより生産車に近づけた雄(TAKERI)が初公開されました。靭(SHINARI)のときから次期アテンザという噂はありましたが、雄(TAKERI)の登場でそれはより確実な情報と捉えられるように。そして2012年11月に3代目アテンザとして発売されました。
■スバルXV -スポーティな雰囲気が与えられたクロスオーバーコンセプトがXVだった
▲スバルXV
2017年3月のジュネーブ国際モーターショーでワールドプレミアとなり、同年4月から日本でも発売が開始されたコンパクトクロスオーバーの3代目XV。
そんなXVを示唆するモデルは、2014年3月のジュネーブ国際モーターショーで公開されていました。それがSUBARU VIZIV 2 CONCEPTです。
▲SUBARU VIZIV 2 CONCEPT
「VIZIV」とはVision for Innovationを語源とする造語で、近年のSUBARUがコンセプトカーに使用している名称です。
コンセプトカーということでボディサイズは全長4435×全幅1920×全高1530mmととくに全幅がかなり大きめ。前輪はエンジン+1モーター、後輪は2モーターのみの駆動による、3モーター式ハイブリッドという方式を取り入れながら、シンメトリカルAWDレイアウトによる左右対称、低重心を確保しているのが特徴でした。
▲SUBARU VIZIV 2 CONCEPT
実はSUBARU VIZIV 2 CONCEPTが公開されたとき、「これは次期フォレスターか!?」という話が持ち上がっていましたが、今見ると、とくにリアスタイルに現行型XVのデザインテイストが盛り込まれているのがわかります。
■日産ジューク -未来のクロスオーバースポーツを表現したモデルが2代目ジュークに
2010年6月9日(ロックの日)に発売された初代ジュークは、その前衛的なデザインから、日本はもちろんヨーロッパでも人気の高いモデルとなりました。そしてコンパクトSUVというジャンルを根付かせた立役者でもあります。ここ数年は新しく登場したライバルモデルに押されていましたが、それでも中古車市場を含め一定の人気を得ていました。
▲新型日産ジューク
2019年9月にヨーロッパで新型ジュークが発表されましたが、残念ながら現段階で新型ジュークを日本に導入する予定はないと言います(初代を継続販売)。コンパクトSUVが人気の日本だからこそ、新型も盛り上がると思うのですが…。
そんな新型ジュークの元となったのは、2015年のフランクフルトショーで世界初公開されたNissan Gripz Cpnceptでした。
▲Nissan Gripz Cpncept
パワートレーンにはe-POWERが採用され、エクステリア、インテリアともに初代ジューク以上にスポーティさを強調した攻めたデザインに。ガルウイング+観音ドアという構成はインテリアをしっかり見せたいショーカーがよく採用する手法なものの、これにより後席への乗降性を高める効果もあると言われていました。
車名に“Z”が付いたことから「次期フェアレディZ?」という話もありました。しかし新型ジュークを見れば、Gripzが新型ジュークの姿を予見したものだったことがわかりますね。
(文/高橋 満<ブリッジマン>)
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