[Gear Maniax #155] タクティカルライトとミリタリーライトの違いを解説
&GP / 2019年11月9日 21時0分
[Gear Maniax #155] タクティカルライトとミリタリーライトの違いを解説
一緒のカテゴリにされがちなミリタリーライトとタクティカルライトですが、本来は結構違いがあります。製品によっては両方を意識したモデルも多いようですが…。初めての人は分かりづらい点もあると思いますので、簡単にその違いをご説明します。
■パワーよりも汎用性重視…ミリタリーライト
実は、現代戦(夜戦)ではあまりライトを使用しません。ライトを使用すると遠距離から視認され、不利になりやすいからですね。
「遠距離からバレない必要最低限の明るさ」
がミリタリーライトの要件となっていて、赤色灯を装備しているミリタリーライトも多いようです。
前述のように作戦中はほとんどライトを使用しない反面、キャンプやその周辺では頻繁にライトの出番があります。キャンプやベースなどでは真っ暗な場所に照明を設営するわけですが、都市部ほどのカバー範囲がなく、暗がりが多いため、自分用のハンドライトを使用します。そのため、アウトドアキャンプで使用するような、使い勝手の良さが求められます。
また、電池の供給にも偏りがあるようで、意外に単三電池を使用するモデルが多いようです。米軍というとシュアファイアの「SF123A」(CR123Aリチウム電池)をジャブジャブ使うようなイメージがありますが、他社製ミリタリーライトを見てみると単三電池対応のライトが多くあり、必ずしも「SF123A」が優勢というわけではなさそうです。
このような事情から、
・多機能(多灯・多色・多段階調光・首振り機能・モール対応)
・あまり明るくなく、持久力重視
・単三電池が第一、次点でCR123A
という特徴を備えた一連の製品群を1つのグループに分けることができます。
▼STREAMLIGHT「サイドワインダーコンパクト2」
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▼ENERGIZER「BRAVO BTUS」
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▼FIRSTLIGHT「USA TORQ」
これらが典型的なミリタリーライトです。上の3モデルはモール対応機能によって、いずれも特徴的な形状をしています。その結果、樹脂製のボディであることも特筆すべき点。軽量さ、複雑な造形に耐える加工性などを重視した結果と思われます。
筒型のミリタリーライトも少なくはありません。例えばNITEDCORE MTシリーズなどが該当します。が、筒型ライトはスイッチ配置が苦しく、操作系が煩雑になる傾向があります。
■瞬間的な制圧力が目的…タクティカルライト
一旦ここでタクティカルライトを見てみましょう。「自称タクティカル」は山ほど世に存在しますが、最も典型的と言えるのはSUREFIRE「6PX TACTICAL」です。
▼SUREFIRE「6PX TACTICAL」
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最近人気が高いのはFURY DFTかな。電池を充電式にして、光量を大幅アップしたモデルです。
▼SUREFIRE「FURY-DFT」
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・大光量
・シングルモード
・筒型ボディ&テールスイッチ
相手を幻惑するための大光量、誤操作を防ぐシングルモード、強度とハンドリングを意識した筒型ボディとテールスイッチという感じですね。「FURY DFT」は高価な最新鋭のモデルですが、非常にシンプルな操作系を保っています。人によっては使い勝手が悪いのではないかと思うでしょうが、実際に使い勝手は良くないだろうと思います。そういうライトではないから、ですね。
LAPD SWAT(ロサンゼルス市警 特殊部隊)などでは、出動のたびに電池を使い捨てにします。使っても使わなくてもです。それくらい高度に管理されており、現場での「あっれ~? 点かないな」という事態を回避しています。あくまでも銃器類と同時に運用される「保安システムの一部」であり、コストや汎用性は度外視されています。
サバイバルゲームの室内戦ですら、銃に意識をおきながらライトを操作するのはなかなか難しく、2モード切り替えや、クリックスイッチですら煩わしく感じるほどなので、実際の現場の方からすれば尚更でしょう。シンプルなライトが必要なのはわかる気がします。
必要な数分間のために他の機能やコストへの配慮を削ぎ落としたライトがタクティカルライトということになります。
* * *
こうした典型的な違いを踏まえた上で、最近の市販のライトは両立を目指しています。
例えば、NITECORE「MT2A」。長期間ロングセラーのライトですが、単三電池を2本使用し、ヘッドを閉めた状態ではターボ&ストロボオンリー(タクティカル)、緩めた状態では3モードの明るさ切り替え+SOS+ビーコン(ミリタリー)など、機能を併せ持っています。
▼NITECORE「MT2A」
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それでも「MT2A」はピュアなタクティカルとして使用するには不安が残ります。万一ヘッドが緩んでいたら、銃を構えた犯罪者に手元を照らすのに程よい光を提供してしまうかもしれません。
そこで、より新しい世代の例としてACEBEAM「L30」などACEBEAMのタクティカルシリーズを挙げておきたいと思います。こちらはテールスイッチを操作する限り、「ピュアなタクティカルライトと同じ操作」が可能です。
▼ACEBEAM「L30」
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サイドスイッチは存在し、まろやかな明るさのモードも備えていますが、テールスイッチを押した途端にそれらは無視され、「6PX TACTICAL」と同じ取り回しが可能になります。
最近の高度なライトはピュアなタクティカル操作と日常的な(あるいはミリタリー的な)汎用性を併せ持っていますが、瞬間的な近接戦闘を意識する場合は複雑な機構に不安が残るタイプの人もおり、「6PX」のようなシンプルイズベストなライトは途絶えることはない…。と言いたいところですが、ジリジリと多機能化の波は迫っているような気がしますね。全体的な傾向としては、純粋種のタクティカルライトは絶滅危惧種となっているように思います。
多機能多用途、パワーソースの入手性を重視したミリタリーライト。いざという時のために機能を削ぎ落としたタクティカルライト。基本的な違いはこうなります。
タクティカルとミリタリー(汎用性)を1本のマスターピースで両立したい…という希望は普遍的なものだろうと思いますが、どちらかを諦めるとグッと選択肢が楽になることもありますよ。ライト選びに迷われている方は自分にとって優先される機能かということを考えてみると選びやすいかもしれませんね。
>> 連載[Gear Maniax]
(文・写真/アカリセンター)
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