サーキットもジムカーナも!最新のランボルギーニ「ウラカンEVO」は操る楽しさ最上級
&GP / 2019年11月25日 19時0分
サーキットもジムカーナも!最新のランボルギーニ「ウラカンEVO」は操る楽しさ最上級
近年、多くのクルマ好きが憧れるイタリアのスーパーカーブランド・ランボルギーニの勢いが止まらない。
中でも日本マーケットでは、2019年に入り、あのフェラーリを凌駕する販売台数を記録するまでに成長。そんなランボルギーニの最新モデル「ウラカンEVO」の実力を、富士スピードウェイでチェックした。
■販売の勢いはスーパーカーの絶対王者を超えた
まず始めに、多くの人が驚くであろうランボルギーニの勢いを示す驚くべき事実を3つ挙げてみたい。
第1は、ランボルギーニの世界規模での販売ボリューム。これが驚くほど急拡大しているのだ。ランボルギーニ車の2018年の世界販売台数は5750台で、これは前年比で51%アップという驚くべき数字。8年連続で前年実績を更新する人気が続いており、2010年のそれに比べると、2018年の販売規模はなんと4倍になった。
そして2019年上半期(1〜6月)の販売台数は、実に4553台。これは、前年同期の96%アップというとんでもない伸び率で、まさに。飛ぶ鳥を落とす勢いである。こうしたジャンプアップの立役者は、新たに投入されたSUVの「ウルス」。全販売台数の約6割となる2693台をウルスが占めている。
第2に、ランボルギーニは日本での販売も絶好調だ。2017年の世界販売台数は3815台だったが、そのうち411台は日本で記録されたもの。しかもランボルギーニにとって、日本はアメリカに次ぐ世界第2位のマーケットだったというのは、にわかには信じがたい“驚きの事実”だ。
ちなみに2018年は、販売台数が前年比で80%アップと急増したイギリスに抜かれ、世界第3位のマーケットとなったが、それでも30%アップの559台を日本で販売。何を隠そう日本は、世界有数のランボルギーニ大国なのだ。
そして最後は、2019年に入り、日本での販売台数がフェラーリのそれを凌駕する月があること。フェラーリといえば、スーパーカーブランドの頂点に君臨する絶対王者。しかし、2019年に入って、ランボルギーニがフェラーリの登録台数を上回る月が続いたのだ。
フェラーリもランボルギーニも、オーダーしてから納車まで長い期間を必要とする車種ばかりで、こうした数字は販売の勢いだけでなく、生産のタイミングも関係しているが、それでもあのフェラーリを抜いたというのは、ランボルギーニにとって想定外のトピック。日本においてランボルギーニは、今やフェラーリと互角の人気を誇るスーパーカーブランドになったといえる。
■音やフィーリングにこだわった自然吸気V10エンジン
前置きが少々長くなったが、先頃、そんなランボルギーニのニューモデル、ウラカンEVOの実力を試す機会を得た。
ウラカンというモデルは、ランボルギーニにとって特別なモデルといえる。なぜなら、同ブランドのスーパーカーにおいて、史上最速ペースの販売台数を記録し続けているからである。
先日ランボルギーニは、ウラカンの生産台数がデビューから5年間で1万4022台に達したと発表したが、これは先代モデルに当たる「ガヤルド」が、2003年から2013年までの10年間で記録した台数と同じだという。つまりウラカンは、ガヤルドの2倍のペースで生産されているのだ。
ランボルギーニの量産現行ラインナップで頂点に立つ「アヴェンタドール」は、6.5リッターのV12エンジンを搭載。一方ウラカンは、5.2リッターのV10エンジンを積み、ボディサイズもひと回り小さい。そして、名車「カウンタック」からの伝統である“シザースドア”(上に跳ね上がるドア)を採用するアヴェンタドールに対し、ウラカンは一般的なヒンジドアを組み合わせているのも分かりやすい識別点だ。
ウラカンのライバルは、フェラーリの「F8トリビュート」やマクラーレンの「570」系。そして日本人にとっては、ホンダの「NSX」と同じ車格だといえば理解しやすいだろう。
ただし、ウラカンとそれらライバルとの間には、明確な違いがある。ウラカンは前述したように、V10の自然吸気エンジンを搭載するのに対し、ライバル勢はV8もしくはV6のターボを採用する。
では、どうしてウラカンは、V10の自然吸気エンジンを搭載しているのか? それは、音やフィーリング、つまり、官能性能へのこだわりにほかならない。
出力でいえば、確かに720馬力のV8ターボエンジンを搭載するフェラーリのF8トリビュートの方がパワフル(ウラカンEVOは640馬力)だ。しかし、管楽器のように響き渡る音や、どこまでも回したくなる高回転域でのフィーリングなど、V8ターボでは叶わない気持ち良さが、ウラカンEVOの自然吸気・多気筒エンジンにはある。スーパーカーにとって、単純な速さも確かに大事だが、感性に訴えかける刺激はさらに大事。それを分かっている人たちが、ライバルではなくウラカンを選ぶという図式になっているのだろう。
ちなみに、ライバルともいえるアウディの「R8」は、ウラカンEVOと同じV10の自然吸気エンジンを搭載する。それはこの2台が、車体やパワートレーンといった基本設計を共用する兄弟車であるため。2台は、アウディとランボルギーニの提携によって生まれたモデルで、ランボルギーニにとっては、アウディの品質をクルマ作りに投入することで、信頼性を大幅に高めるという大きなメリットを得ている。
■かつてのランボのイメージを覆すフットワーク
今回ドライブするウラカンEVOは、実質的には従来型「ウラカン」のマイナーチェンジモデル。
エクステリアは、エアインテークが大型化されたフロントバンパーなど、空力性能を高めるためのデザイン変更が施され、インテリアでは、8.4インチのタッチスクリーンを組み込むなど、インパネデザインとインターフェイスを変更。
さらに、エンジンのパフォーマンスアップを実現しているほか、前輪だけでなく後輪も曲がる4輪操舵メカと4WDシステム、そして、トルクベクタリング(左右のタイヤに回転差をつけてクルマを曲げやすくする仕掛け)を統合コントロールするシステムを新採用している。
ウラカンEVOのエンジンパワーは、従来モデルが610馬力だったのに対し、高性能版として2017年に日本デビューを果たした「ウラカン ペルフォルマンテ」の640馬力に肩を並べた。
さらにエアロダイナミクス性能は、第1世代のウラカンと比べると約5倍のダウンフォース(車体が浮き上がらないように下方へ押さえつける力)を手に入れたというから、もはや性能は従来のウラカンとは別物といえる。
ちなみにウラカンEVOのパワーウエイトレシオは、1馬力当たり2.22kg。最高速度は325km/hで、停止状態から100km/hまでわずか2.9秒で加速する。
ウラカンEVOで世界屈指の高速サーキットとして知られる富士スピードウェイにコースインしてすぐに感じたのは、拍子抜けするほど気難しさがないこと。トランスミッションはデュアルクラッチ式で、クラッチペダルがないからAT限定免許でもドライブできるし、前を向いている限り視界は良好。ドライビングポジションだって簡単に決められる。
コーナリング時は安定感が抜群で、しかもドライバーの操作に対して素直にクルマが向きを変える。あまりに次元が高いため、新搭載の4輪制御システムがどこまで効いているのか実感できなかったが、まるでコースに敷かれたレールの上を走っているかのように、思い通りのラインをトレースしてくれるのだ。こうした安定感あふれるドライブフィールには、後輪操舵システムに加え、トルクベクタリングや自慢のダウンフォースも効いているに違いない。
さらにストレートでは、スピードメーターの針が250km/hに迫るところまで一気に加速。その際の優れた安定性や、挙動が乱れるかのような不安感が一切ない点は、驚くべき体験だった。
別のコースでパイロンスラロームも試すことができたのだが、ここでは小回り性の良さに驚かされた。細かいターンもクイックかつリズミカルにこなし、ワイドで車幅感覚をつかみにくいボディながら、スイスイ走れるのである。
超ハイスピード領域では抜群の走行安定性を誇るのに、スラロームではグイグイ曲がっていく。こうした相反する走行性能の両立は、まさに4輪制御システムの賜物といえるだろう。
かつてランボルギーニ車は、“魔物”と呼ばれる時代があった。ハイスピードコーナリング中に挙動が乱れ、ドライバーを裏切ることがあったからだ。それはまるで、エンブレムにもある猛牛が、人に襲い掛かってくるかのようだった。
しかし、高速サーキットからジムカーナまで堪能できるようになったイマドキのランボルギーニは、従来とは比べ物にならない速さを得ると同時に、安定感や安心感、さらに、抜群の気持ち良さを手に入れている。最新のランボルギーニこそ最良のランボルギーニ…。最新のランボルギーニ=ウラカンEVOでのドライビング体験は、クルマ好きにとっての夢のような時間だった。
<SPECIFICATIONS>
☆ウラカンEVO
ボディサイズ:L4520×W1933×H1165mm
車重:1422kg
駆動方式:MR
エンジン:5204cc V型10気筒DOHC
トランスミッション:7速AT(デュアルクラッチ式)
最高出力:640馬力/8000回転
最大トルク:61.2kgf-m/6500回転
価格:3282万7601円
(文/工藤貴宏 写真/アウトモビリ・ランボルギーニ・ジャパン)
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