クーペ風のルックスだけじゃない!アウディ「Q8」は使える室内と快適な走りも見逃せない
&GP / 2019年11月26日 19時0分
クーペ風のルックスだけじゃない!アウディ「Q8」は使える室内と快適な走りも見逃せない
昨今のSUVブームはとどまるところを知らず、世界の自動車メーカーはSUVラインナップの拡大に余念がない。今回フォーカスするアウディも、次々と新たなSUVを登場させている“SUV拡大メーカー”のひとつだ。
そんなアウディが新たな旗艦SUVが「Q8」。“Q”というアルファベット+数字の車名を与えられる同ブランドのSUVの中で“8”は最も大きな数字。いい換えれば、アウディの中で最上級のSUVといえる。
■クーペルックからは想像もつかないゆとりある室内
Q8で興味深いのは、3列シートを備える同ブランドの「Q7」より短いこと。Q7の全長はベースグレードで5070mm(仕様によって異なる)だが、Q8のそれは同4995mmと、Q7と比べて75mm短縮されている。全高も同30mm低く、一方で全幅は25mm拡大。つまりQ8は、ワイド&ローのプロポーションでスポーティな雰囲気を強めたクーペテイストのSUVに仕立てられているのだ。
ただし、クーペテイストのSUVだからといって、リアシートが狭いかといえばさにあらず。今回、実車と対面した際、まずはリアシートに座ってみたのだが、その広さに驚かされた。
Q8は全長が5mに迫る巨体の持ち主だけあって、前後シート間の距離(いい換えれば、後席のヒザ周りスペース)は大型サルーンのようにゆったりしているし、室内幅も広いから空間的なゆとりに感動するほど。絶対的な車体の大きさが生み出す余裕を感じられる。
前後席ともヘッドクリアランスは十分確保されていて、車内に入るとクーペテイストであることなど微塵も感じさせない。視界の良し悪しや車内の開放感を左右するサイドウインドウのサイズやリアピラー形状なども含め、BMW「X6」やメルセデス・ベンツ「GLEクーペ」といったライバルよりも、居住性を重視しているのがアウディ流のクーペテイストSUVといえるだろう。
リアシートに座ったまま“ショーファーカー”気分で走り始めると、ふたつ目の驚きがあった。感動的なまでに乗り心地が良好なのだ。
今回の試乗車は「55 TFSIクワトロ デビューパッケージ Sライン」というスポーティな仕立てのグレードで、285/40R22という太く径の大きいタイヤを履いていた。一般的にこのサイズになると、タイヤ&ホイールが重くなり、タイヤ側面の厚みも薄くなることから乗り心地には不利なのだが、Q8はそんなデメリットなど感じられない。
そもそも車体自体、車両重量2.2tという重量級の上に、セダンに比べて重心も高いから、特性的に乗り心地はかなり厳しいはずだ。しかしQ8は、まるで魔法のカーペットに座って移動しているかのような、極上の乗り味を提供してくれる。
試乗車にはエアサスペンションが装着されていたが、その恩恵もあるのだろう。路面からの衝撃を確実に吸収しつつ、単に柔らかいだけでなく、衝撃を受けた後の収束もしっかりしていて、とにかく車体の動きがフラット。
この素晴らしい乗り心地だけで、Q8を欲しくなってしまうほどの出来栄えだ。
■巨体であることを忘れさせる最新の後輪操舵機能
今度はQ8の運転席へと乗り込んでみる。
コックピットの雰囲気は、最新フェーズのアウディ車そのもの。ほぼ全面に地図を表示できる12.3インチのフル液晶メーターパネルに加え、インパネのセンター部分に10.1インチと8.6インチというふたつのタッチパネルディスプレイを上下に並べた、特徴的なインターフェースがドライバーを迎えてくれる。
巨大なボディサイズは、駐車場などでは気を遣わせられるものの、走り出してみると、交差点やUターンでも、思いのほか小回りが利いて扱いやすいと感じた。
実はこれが、Q8における3つ目の驚きだ。その秘密は、ハンドル操作に応じてリアタイヤも曲がる“オールホイールステアリング”と呼ばれる後輪操舵機能。「A8」など、アウディの最新大型サルーンと同様、Q8にも後輪操舵が備わっているのだ。後輪の切れ角は最大5度で、見ていると「けっこう曲がる」ことに感動する。そして、運転していると「Q8って見た目以上に小回りが効くんだな」と感心させられる一方、走行中も違和感は全くなく、制御が絶妙であることを実感する。
続いて、Q8で首都高速へと乗り入れる。そこで見えた予想外の、そして4つ目の驚きは、水を得た魚のような軽快な運動性能だ。
Q8は車両重量2tを優に超える重量級なのに、右へ左への車線変更は、軽量スポーツカーかと錯覚させるほどスムーズ。反応遅れなどなくスッと曲がる感覚が気持ち良く、適度にシャープかつスポーティだ。見た目云々はもちろんのこと、Q7との最大の違いは、このハンドリングフィールにある。
こうしたQ8の走行フィール、ポルシェの「カイエン」に似ているな、と思っていたら、Q8とカイエンのプラットフォームは基本的に同じものだった。“MLBエボ”と呼ばれるプラットフォームは、アウディではサルーンの「A4」から「A5」、「A6」、「A7」、そしてA8と広く使われるほか、実はポルシェのカイエンや、ランボルギーニ「ウルス」のそれとも基本設計が同一。だからこそ、Q8はこれほどまでに走行性能が高く、懐が深いのだと妙に納得させられた。
現在、Q8の日本仕様に搭載されるパワーユニットは、340馬力を発生する3リッターのV6ターボ。最大トルクは500Nmと、自然吸気エンジンなら5リッタークラスに匹敵するから、巨体でありながら十分速い。フィーリングは抜群にエモーショナル、というわけではないものの、SUVならこれくらいがちょうどいいだろう。
とはいえ、走行モードで「ダイナミック」をセレクトしてアクセルペダルを深く踏み込むと、音や高回転域でのパワーの盛り上がり方が適度にスポーティとなり、クルマを走らせる喜びを高めてくれる。
爽快な走りに、広くて快適なリアシートを組み合わせたQ8は、これまで定番だった退屈なセダンに代わる存在として、人生を楽しくしてくれる1台となりそうだ。
<SPECIFICATIONS>
☆55 TFSIクワトロ デビューパッケージ Sライン
ボディサイズ:L5005×W1995×H1690mm
車重:1660kg
駆動方式:4WD
エンジン:2994cc V型6気筒DOHC ターボ
トランスミッション:8速AT
最高出力:340馬力/5200〜6400回転
最大トルク:51.0kgf-m/1370〜4500回転
価格:1122万円
(文/工藤貴宏 写真/&GP編集部)
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