いまさらドイツ車のワゴンは…って人に!ワゴンの魅力を再認識させるプジョー「508SW」
&GP / 2019年12月15日 19時0分
いまさらドイツ車のワゴンは…って人に!ワゴンの魅力を再認識させるプジョー「508SW」
昨今のSUVの興隆で、最も割を食ったカテゴリーといえばステーションワゴン、ではないでしょうか。営業用ではない、パーソナルユースのそれ、です。
休日にはアクティビティのギアを満載してドライブに出掛ける、もしくは、そんなライフスタイルをイメージさせる存在、でしたが、今やその役割を、まんま“スポーツ・ユーティリティ・ビークル”ことSUVに奪われてしまった感があります。
でも、ステーションワゴンの魅力が薄れてしまったかというと、全くそんなことはありません。そのことを改めて認識させてくれたのが、ここにご紹介するプジョー「508SW」です。
■クーペルックを標榜する508以上にスタイリッシュ
508SWは、2018年のジュネーブショーで初お披露目されたセダン「508」に続き、同年のパリサロンでデビュー。リアゲートを備えたファストバックスタイルが話題になった508に対し、SWはスポーティワゴンらしく、後方に向かって滑らかに伸びるルーフラインがいいですね。クーペルックを標榜する508と同様、いや、それ以上に、スタイリッシュかもしれません。欧州の保守性とフランスらしい先取の気性がいい具合に組み合わさった1台、といえましょう。
ボディサイズは、主に荷室部分がファストバックモデルより延びて、全長が40mmプラスの4790mm、全幅、全高は変わらず1860mmと1420mmとなります。BMWの「3シリーズツーリング」に近い大きさですね。
日本におけるグレード構成は、508に準じたもの。1.6リッター直4ターボの「アリュール」(450万2000円)と「GTライン」(493万円)、2リッターディーゼルターボの「GT BlueHDi」(526万6000円)の3種類をラインナップします。すべて右ハンドルの8AT車。駆動方式はFF(前輪駆動)のみで、4WDの設定はありません。それぞれ、508より25万5000円高い設定となります。
単純に価格だけ比べるなら、BMWの3シリーズツーリングが494万円(「320i SEツーリング」)〜、メルセデス・ベンツ「Cクラス」のステーションワゴンが488万円(「C180ステーションワゴン」)〜なので、508SWは結構、頑張っているのではないでしょうか。いち早くプジョー自慢のディーゼルターボを載せたグレードが設定されるのも強みです。
■シューティングブレークのように流麗ながら荷室の広さは第一級
今回の試乗車は、そのディーゼルターボを積む「508SW GT BlueHDi」。実車を前にすると、グッと低く構えて、ワイドなボディがいかにもスポーティ。サイドビューも天地が薄くて、ちょっとシューティングブレークっぽいですね。背の高いSUVとの差別化に有効なフォルムです。
一方、ヘッドライトから斜め下に鋭く伸びるデイライトは、508のファストバックと、斜めの縦ラインが並ぶリアのコンビネーションランプは、プジョーのSUVモデルと共通の意匠です。508SWは個性的なデザインを採りながら、顔とお尻でライオン一家の一員であることをアピールします。
ワゴンボディのキモである荷室容量は530Lと、このクラスで第一級の広さ。先代SW比で182Lも大きな数値です。リアシートはもちろん背もたれが分割可倒式になっていて、両方とも倒せば1780Lまでラゲッジスペースを拡大可能。プレミアムモデルらしく、リアバンパーの下で足を動かすとテールゲートが自動で開く機能が備わります。両手が荷物でふさがっている時などに便利ですね。
キャビンと荷室を分かつセパレーションネットや、ラゲッジフックレールが標準で装備されるのもうれしいところ。508SWは、スタイルだけでなく機能の面でもイケてるワゴンです。
ドアを開けると、凝った生地のレザーシートが迎えてくれます。SUVに慣れた身だと、低い着座位置と視点がかえって新鮮。しっかりしたサイドサポートが、508SWのスポーティな性格を暗示します。
目の前には、分かりやすく近未来的な(!?)“i-Cockpit(アイ・コクピット)”が広がります。センターコンソールには、タッチスクリーンタイプの8インチ液晶パネルが備わり、その下にトグルスイッチがズラリと並びます。液晶パネルは、スマートフォンと接続できるミラー機能を備え、GT系のオーディオには、フォーカル社のプレミアムオーディオシステムがおごられます。
そして、プジョーの先進性を具体化しているのが、オプションの“ナイトビジョン”。夜間走行中、歩行者や動物などの体温を赤外線カメラが検知し、メーターパネルに表示してくれます。
新しい508/508SWでは、アクティブセーフティブレーキの夜間性能も向上していますが、それ以前に、まずは歩行者に注意を向けることが大事なのは言を待ちません。
■あらゆる路面で508SWをひたひたと走らせるしなやかな足回り
2リッター直列4気筒ディーゼルターボのアウトプットは、最高出力177馬力、最大トルク40.8kgf-m。前者は3750回転、後者は2000回転という低回転域で発生する力強いパワーユニットです。エンジンをかければ、そのサウンドでディーゼルであると知れますが、走り出してしまえば、8速という多段ATの恩恵もあって、ディーゼル特有の音はほとんど気になりません。
ドライブモードを「スポーツ」にすると、508SWは俊敏でパワフルな、一気にアグレッシブなスポーティワゴンへと変貌しますが、むしろこのクルマのドライブフィールを特徴づけるのは、「ノーマル」モード時のスムーズな乗り心地。スポーティな身のこなしとは裏腹に、サスペンションはしなやかに路面を捉え、プジョーのワゴンをひたひたと走らせます。フラットな出力特性に、フラットライドを実現する足まわりの組み合わせが素晴らしい!
508SWは、小径のステアリングホイールを握って走るだけでも楽しいので、オフの日のアクティビティもいいけれど、平日の、夜の都会のナイトドライブも素敵。年末のライトアップされた街中を行きながら、そんな感想を抱くこと必至のスタイリッシュワゴンです。
<SPECIFICATIONS>
☆GT BlueHDi
ボディサイズ:L4750×W1860×H1420mm
車重:1670kg
駆動方式:FF
エンジン:1997cc 直列4気筒 DOHC ディーゼル ターボ
トランスミッション:8速AT
最高出力:177馬力/3750回転
最大トルク:40.8kgf-m/2000回転
価格:526万6000円
(文&写真/ダン・アオキ)
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