グランドセイコー、シチズン、カシオら“熟成の国産”時計5選【2019年まとめ②】
&GP / 2019年12月28日 15時0分
グランドセイコー、シチズン、カシオら“熟成の国産”時計5選【2019年まとめ②】
ヨーロッパの時計ブランドとは違った進化を進める日本の時計ブランドたちは、“最新” “ハイテク” “多機能”などを謳い、時計の未来像を提案する手法を主体にしていた。しかし便利さをアピールする場合、それ以上便利なものが出てくれば、存在価値は失われるだろう。そもそも便利さに勝負になると、スマホに並ぶものはない。
そこで国産ブランドは、よりエモーショナルな時計を目指し始めている。ポイントとなるのは、既存技術の熟成。ムーブメントの手巻き化やコンセプトモデルの製品化、あるいは引き算の考えから生まれた2019年の時計たちは、これまでヨーロッパの時計ブランドが得意としていた“伝統と革新”を語るもの。
ブランドの個性を生かしつつ、技術を駆使してエモーショナルな魅力を加えることで、時計としての価値を高めている。
1.高い機能性と美を結集した珠玉の逸品
グランドセイコー
「SBGK007」(75万円)
グランドセイコーに使用されるムーブメントとしては2012年以来となる自社製手巻きムーブメント「キャリバー9S63」が誕生。このムーブメントを搭載した「SBGK007」は、薄型ムーブメントの特徴を生かして、ケースや風防を柔らかなフォルムにデザイン。時計自体にエレガントな雰囲気が増し、本格的なドレスウォッチとしても楽しめるだろう。
なお、パワーリザーブを約72時間(3日間)確保しており、その残量をパワーリザーブで表示。ゼンマイトルクが安定しているので精度も高い。まさに美と技の共演である。手巻き、SSケース、ケース径39㎜。
2.桁違いの高精度を実現した年差±1秒の世界
シチズン
「ザ・シチズン」(180万円)
一般的なクォーツ時計に使われる音叉型水晶振動子の32,768Hzという周波数を使って正確な一秒を割り出し、時を刻むクオーツ式時計は、機械式時計に比べて圧倒的に高精度である。しかしシチズンは、更なる高精度を目指した。創業100周年である2018年に発表したムーブメントCal.0100は、なんと8,388,608Hzという周波数を実現。
温度変化に対しての安定性に優れるATカット型の水晶振動子を採用しており、さらにセンサーで内部温度を計測し、温度変化による誤差も補正することで、年差±1秒という驚異的な高精度を実現した。2019年はこのムーブメントを時計に搭載。純粋な1秒を表現するために、すらりと針が伸びた端正なデザインでまとめている。世界限定100本。光発電クオーツ、18KWGケース、ケース径37.5㎜。
3.ライフスタイルを変えるIoTウォッチ
シチズン
「エコ・ドライブ リィイバー」(4万5000円)
スマートウォッチはすっかり市民権を得ており、IT・電器企業から多くのモデルが発売されている。しかし大きな液晶画面を使用するという制約があるため、デザインの差別化はかなり難しいし、OSの制約もあるため機能面でも大差ない。それゆえ“便利なデジタルデバイス”という領域に止まっているのも事実だ。
その点「エコ・ドライブ リィイバー」は、存在自体がユニーク。スマートフォンとリンクするアナログ式のスマートウォッチであり、しかもIoTプラットフォーム「Riiiver」を通じて、様々なデバイスやサービスと繫がることができる。つまり正確な時間を知るだけでなく、IoT生活を楽しむ入口になる時計なのだ。光発電クオーツ、SSケース、ケース径43.2㎜。
4.新たな耐衝撃システムによる新素材採用が楽しい
G-SHOCK
「MTG-B1000XBD」(13万5000円)
肉厚な樹脂を使うことで衝撃を軽減させていたG-SHOCKだが、メタルケース化の際には新しい耐衝撃構造を考案することで、タフさと存在感の両立を実現させた。この耐衝撃性能×外装素材の組み合わせは、2019年に新たにカーボンケースという新技術に到達した。
頑強であるだけでなく、軽さというメリットのあるカーボンをケース素材に用いるのは、高級スポーツウォッチでもよく見られるスタイル。しかも「MTG-B1000XBD」ではカーボンファイバーシートとグラスファイバーシートを積層させた特殊素材を使用しており、サイドから見ると縞模様が楽しい。クオーツ、カーボン×メタルケース、ケース径51.7㎜。
5.薄さを追求したエレガントな一本
オシアナス
「OCW-S5000E-1AJF」(18万円)
カシオの高精度技術は、常に機能を追加してきた。世界6局対応の電波時計やGPS衛星で、世界中で正確な時刻情報をキャッチ。そしてBluetoothを使ってスマホ連動し、時刻情報だけでなく操作性向上にも力を入れた。しかし機能を盛り込めば、時計は大きく厚くなる。そこで新たな進化として“薄型”を目指した。
思い切ってGPS機能を外すことで省スぺース化し、ケース厚は9.5㎜に。オシアナスのエレガントな個性を、更に強調させることに成功している。もちろん高精度機能は、電波時計とスマホ連動の兼用で十分なレベルであり、機能とデザインの両方でメリットを享受できる。クオーツ、Tiケース、ケース径42.3㎜。
>> [特集]2019年まとめ
(文/篠田哲生)
時計ジャーナリスト・篠田哲生(しのだ てつお)
男性誌の編集者を経て独立。コンプリケーションウォッチからカジュアルモデルまで、多彩なジャンルに造詣が深く、専門誌からファッション誌まで幅広い媒体で執筆。時計学校を修了した実践派でもあり、時計関連の講演も行う。
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