ブレないムービー!DJI「OSMO」は本当にブレないのか?
&GP / 2016年3月6日 7時0分
ブレないムービー!DJI「OSMO」は本当にブレないのか?
NHKのBS放送で『世界ふれあい街歩き』という番組が放映されている。番組名どおり、世界の街をぶらぶらと歩いていく。それもタレントやディレクターなどがナビゲートするのではなく、カメラ目線で撮影された街なかの映像が、ただひたすら流れていくシンプルな番組だ。
番組では、ステディカムと呼ばれる、やじろべえのような機材を使っている。その映像はなめらかで、宙をふわふわと浮かんでいるような映像だ。そんな映像が撮りたくて、iPhone用の「ステディカム マーリン」を買ったことがある。撮れる映像には満足したが、なにせ大きい。当時、5万円前後を払って買ったのだが、今や出動する機会はない。
あれから何年経つだろう? 昨年末、ドローンの世界シェアNo.1のDJIが、このステディカムを使ったように撮れるカメラ、「DJI OSMO」を発売した。卵くらいの大きさの4K対応カメラなのだが、電動のスタビライザー(ジンバル)を搭載し、どれだけ激しく動いても、ピラリと抑えてくれるというのだ。
既にYouTubeなどにアップされている映像は、まさしく目指すべき浮遊感のあるテイストだ。これは使ってみたい! ということで、「DJI OSMO」を手に、動画を撮りに行ってきた。
「DJI OSMO X3」。どれだけ動いてもカメラを水平に保ち、映像のブレを抑える、ジンバル(スタビライザー)搭載のデジタルカメラ。最大4096×2160の4K解像度でのビデオ撮影が可能。microSDカードに映像を記録していく
カメラ部と、それを支えるジンバル(スタビライザー)。バッテリーはグリップ部に内蔵されているため、カメラ自体は非常にコンパクト。ジンバルは電動で制御され、激しく動いてもカメラを水平に保ってくれる。94度の画角が得られる、20mm/F2.8の単焦点レンズを搭載
初心者でも、ブレない映像が撮れる!
まずは1歳半になる息子を撮ってみた。最近歩き始めたばかりなので、動きは激しくない。あまり近づきすぎないよう、彼の動きに合わせてカメラの画角を合わせていく。
子どもを撮影する際は、カメラ位置を下げるにかぎる。大人の視点から撮っても、頭ばかりが目立ってしまうからだ。一方、子どもの目線まで下げれば、その表情がよく写せる。
自然と、腰を極端に落とした状態で撮影することになる。この慣れないポジションで撮影すると、そうとう気を付けていないと、普通はブレブレの映像になってしまう。だが「DJI OSMO」の場合は、かなりラフに撮っても、上のように振動を感じさせない、解像感の高い映像が撮れた。
また、20mmの広角レンズが採用されているため、ある程度の画角を決めれば、あとはモニター(連携させたスマートフォンの画面)を見なくても、狙った被写体が撮れていた。使っていくうちに、自分と被写体との距離を目測して、どんな画角かがだいたいわかるようになってきた。このあたりは、GoProなどのアクティブカメラと同じような使い勝手だ。
モニターは非搭載だが、iPhoneやAndroid端末を連携させることで、画角が確認できる。遠隔操作による撮影にも対応。そのほか解像度の変更など、各種設定をスマートフォンから行える
幼児のように歩いている時であれば、最新のデジカメやムービーに搭載されている手ブレ補正機構だけでも、かなりのブレがキャンセルされる。だが、走っている状態では、その効果は限定的だろう。
そこで、激しく動き回る小型犬を撮ってみた。静と動の変化が極端な犬に合わせて、自分も走ったり停まったりを繰り返す。そんな動きで撮影しても、カメラの映像は、ゆらりゆらりと宙を浮いているように彼らをとらえていた。
できるだけ彼らの視線の高さで撮りたいため、腰の位置をかなり下げている。この中腰姿勢で犬にカメラを向けるため、DJI OSMOを水平に近い角度で持つか、またはグリップ部分を上にし、カメラ部を下げて地面すれすれに構えたりして撮影した。
そう、DJI OSMOは腕をだらりと垂らした状態でも、設定すれば、カメラを水平に保ってくれる。設定は簡単で、例えば腕を垂らしてカメラ部を下に向けたら、操作部のボタンを2回クリックするだけ。カメラはひっくり返った状態だが、撮影された映像は、しっかりと空が上に映っている。このあたりも、GoProなどと同じ仕様なのだ。
DJI OSMOは、グリップ部を傾けても、カメラの視線を一定に保ってくれる。さらにカメラを下げて、逆さに持つようにしても、映像の天地が逆さになることはない。ペットや幼児を、彼らの視線の高さで撮るのに便利だ
さらに激しく上下に振動するクルマの車内から撮影。ダッシュボードが上下に揺れているのに、全体の映像は激しく揺れていないことが分かるはず。
「DJI OSMO」は、カメラ部を上下左右に動かせる。グリップ上部の操作部にあるボタンを、ぐりぐりと動かすことで、カメラの向きが上下左右に動いてくれる。例えば低い位置から子どもを見上げたり、左右にカメラをパンさせたりできるのだ。
グリップ上部の操作部。中央の円形ボタンをグリグリと動かすことで、カメラ向きを上下左右に変えられる。また下部のボタンを1回押すと、カメラ向きをロック。2回押すと、水平位置を調整。3回押すと、カメラ向きが撮影者をとらえ、自撮りモードに
ブレない“人の目”と同じ映像が撮れる
普段は何も考えずに、歩いたり走ったりしながらも、目で何かを見ている。その時に見る景色って、ブレていないなぁと気がついた。そんな自分が見た映像に、より近い、ブレのない映像が気軽に撮れるのが「DJI OSMO」なのだ。
また、一般的なカメラの手ブレ補正機構が進化しているとはいえ、「DJI OSMO」に比肩する性能を持つカメラは見当たらない。そうしたカメラで三脚などを使わずに手持ちで撮るなら、カメラの位置やレンズの向きを固定しておいたほうがよい。あっちこっちと向きを変えると、ブレや振動と相まって、酷い映像になるからだ。
だが、振動を吸収してくれる「DJI OSMO」であれば、走り回って撮影しても大丈夫。そのため、これまでの固定した視点の動画だけでなく、動きのある映像がキレイに残せる。
「DJI OSMO」は、映像のバリエーションを確実に増やせるカメラだった。
(文/河原塚英信)
かわらづかひでのぶ/エディター、ライター
モノ情報誌『BestGear』の編集者として家電製品を10年以上追い続けた後に、フリーランスの編集ライターへ。現在は生活家電専門の情報サイト『家電Watch』を中心に、雑誌では『GoodsPress』『週刊SPA!』などで編集執筆。生活家電をはじめ、テレビやレコーダーなどのAV機器や、ウエアラブル端末にも精通する。
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