ランエボやWRXの卒業生に!メルセデスAMG「CLA45S」は速さと乗り味がケタ違い
&GP / 2020年6月14日 19時0分
![ランエボやWRXの卒業生に!メルセデスAMG「CLA45S」は速さと乗り味がケタ違い](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/goodspress/goodspress_303688_0-small.jpg)
ランエボやWRXの卒業生に!メルセデスAMG「CLA45S」は速さと乗り味がケタ違い
先頃上陸したメルセデスAMG「CLA45S 4マチック+(プラス)」は、“クラス最強”の2リッター直列4気筒ターボエンジンと4WD機構を組み合わせた、手頃なサイズの4ドアセダン。
そんな超高性能モデルでさまざまなシーンをドライブしながら思い出したのは、かつて多くのクルマ好きを熱くさせたあの名車たちの記憶だった。
■戦うために進化を繰り返したランエボとWRX
1990年代に“クルマ熱中時代”を過ごした筆者にとって、小さいのにハイパフォーマンスなスポーツセダンは、まさに憧れの存在だった。視線の先にあったのは“ランエボ”という愛称で親しまれた三菱「ランサー エボリューション」やスバル「インプレッサWRX」。いずれも、ターボでドーピングした2リッターの高出力エンジンを搭載し、4WDレイアウトを採用していた。
両車のベースモデルとなった「ランサー」と「インプレッサ」は、イマドキのコンパクトカーに毛が生えた程度のボディサイズでしかなく、1.5リッターの自然吸気エンジンくらいが妥当な組み合わせ。にもかかわらず、そこへ高出力のターボエンジンを無理やり詰め込んだのだから、ランエボとWRXはまさに突然変異種のようなモデルだった。
そうしたクルマ作りの背景にあったのは、ラリーマシンのベースモデルというポジショニングだ。ランエボもWRXも、WRC(世界ラリー選手権)の頂点に立つことを目指して開発されたクルマで、当時はラリーを戦う競技車両の戦闘力と市販モデルの設計が、かなり直結していた。そのため、ラリーマシンを速くするために、市販モデルにも次々と改良の手が加えられたのである。そのためランエボもWRXも、時にはわずか半年という信じられないほど短いサイクルでバージョンアップされたのである。
しかし、そんなランエボやWRX(のスパルタンモデル「WRX STI」)も、現在は販売を終了。WRXは次期モデルが存在すると信じているが、今のところ具体的な姿は見えていない。そんな日本車勢の状況を知ってか知らずか、海外から魅力的な黒船が攻め込んできた。それが、今回紹介するメルセデスAMGのCLA45S 4マチック+である。
「CLA45」というモデルは、2013年に登場した先代モデルにも存在していた。当時、メルセデス・ベンツのセダンの中で最もコンパクトだった「CLA」をベースに、2リッターのターボエンジンを搭載。その最高出力はなんと360馬力で“2リッター最強”という称号を得た。そんな“エボリューションモデル”のような成り立ちは、かつてのランエボやWRXと重なる部分であり、まさにクルマ好きを喜ばせるために生まれてきたかのようなモデルだった。
そして先頃、フルモデルチェンジで2代目へと進化したCLA45S 4マチック+が日本へと上陸した。各部の性能はさらに引き上げられているが、中でもエンジンは421馬力へと格段にパワーアップ。もはやあきれるしかないほどエネルギッシュな同エンジンは、2リッターとしても4気筒としても世界最強の強心臓となった。
ちなみに、超高性能スポーツカーとして注目を集めるトヨタ「スープラ」の3リッターターボは、2020年秋にデリバリーが始まる最新仕様でも387馬力に過ぎない。それと比べると、CLA45Sのエンジンがどれだけ常識外れなのかが分かるはずだ。
■作り手のこだわりが詰まったAMG謹製のエンジン
そんなCLA45Sは、その中身を知れば知るほど開発陣のこだわりと熱い思いが見えてくる。
例えばボンネットを開けると、まずターボチャージャーの巨大さに驚かされるが、さらに子細に見ていくと、306馬力の2リッターターボエンジンを搭載する、ひとつ格下のメルセデスAMG「CLA35 4マチック」に対し、エンジンの向きが前後逆になっていることに気づく。
その理由は「他のCLAと同じエンジンの向きだと、巨大なターボチャージャーをエンジンルーム内に収めることができないから」というから、驚くばかり。つまりCLA45Sは、高出力化のためにエンジンを搭載する向きまで変えてしまったのだ。さらにエンジン自体も、回転方向だけでなく内部構造までCLA35とは別物となる(当然、エンジンの型式も違う)。
実際、CLA45SとCLA35を乗り比べてみると、速さに差があるのはもちろんのこと、躍動感まで想像以上に異なることを実感できる。CLA35も単体で見れば文句のつけどころはない。十分パワフルかつダイナミックで、ドライビングを心から楽しめる。しかしCLA45Sは、そこからさらにパワフルなのに加え、高回転域でのパワーの盛り上がり、吹け上がりの勢い、そして音の演出など、ドライバーの気分をハイにさせる要素がさらに磨かれている。
すごいだけでも速いだけでもなく、実に味わい深いのだ。その快楽を知ってしまうと、もう元の世界には戻れない。そんな魅惑がCLA45Sのエンジンには宿っている。
■名車たちに通じる高い実用性もCLA45Sの武器
CLA45Sのハンドリングは、スポーツカー顔負けのレベルにあるのはいわずもがなだ。狭く曲がりくねったワインディングでのキビキビとしたフットワークや、ハイスピードでの旋回時における圧倒的な安定感を両立しているのが素晴らしい。
その上CLA45Sは、スタイルだって整っている。実用本位だった1990年代のランエボやWRXとは異なり、CLA45Sは遊び心あふれる流麗なデザインが与えられている。そこへ、速さをイメージさせる前後バンパーやさりげないリアスポイラーを組み合わせ、いかにも、ではなく、ちょっと控えめにヤンチャなオーラを漂わせている。また、軽く落とされた車高も、タダモノではない雰囲気を演出している。
気づけばオトナになってしまった筆者にとっては、CLA45Sの優れた実用性も魅力的に感じる。超高性能でタダモノではない雰囲気をまといながら、リアシートは大人2名が乗っても十分役割を果たしてくれる上、ラゲッジスペースだって広いから結構使える。
しかもエンジンは、レーシングカーのそれのように限界性能に焦点を当てながら、低回転域でのトルクも太いから、街乗りでも不快さや扱いにくさを感じない。しかも、走行モードを「コンフォート」にすれば乗り心地だって優れるから、同乗者からクレームが出ることもなさそうだ。
CLA45S 4マチック+は、ランエボやWRXのような小さくてパワフルなセダンがなくなった、とお嘆きの、熱い走りを好むオトナのクルマ好きにお勧めのモデルだ。ランエボやWRXのように、競技(ラリー)というバックボーンがないのは残念だが、それでも865万円〜というプライスタグは、CLA45Sの常識外れの性能や味わい深い走行フィールを考えれば、十分納得できると断言できる。
<SPECIFICATIONS>
☆CLA45S 4マチック+
ボディサイズ:L4690×W1855×H1415mm
駆動方式:4WD
エンジン:1991cc 直列4気筒 DOHC ターボ
トランスミッション:8速AT(デュアルクラッチ式)
最高出力:421馬力/6750回転
最大トルク:51.0kgf-m/5000~5250回転
価格:865万円
文/工藤貴宏
工藤貴宏|自動車専門誌の編集部員として活動後、フリーランスの自動車ライターとして独立。使い勝手やバイヤーズガイドを軸とする新車の紹介・解説を得意とし、『&GP』を始め、幅広いWebメディアや雑誌に寄稿している。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。
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