トヨタ「ハリアー」はココがスゴい!静かで快適な乗り味は高級車と呼ぶにふさわしい
&GP / 2020年7月24日 19時0分
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トヨタ「ハリアー」はココがスゴい!静かで快適な乗り味は高級車と呼ぶにふさわしい
前回、内外装デザインや室内&荷室のユーティリティについてレポートしたトヨタの新型「ハリアー」。今回は気になる走りについて分析する。
発売からわずか1カ月ほどで、約4万5000台ものオーダーを記録した人気SUVの実力とは?
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■新型ハリアーは現代の「マークII」だ
突然だが、皆さんは「マークII」というクルマを覚えているだろうか? かつて販売されていたトヨタを代表する上級セダンであり、1968年にデビュー。最終モデルは2004年まで生産され、その後、後継モデルである「マークX」にバトンタッチしたものの、2019年、惜しまれながらもその長い歴史に幕を閉じた。
そんなマークIIは、一時、絶頂期を迎えていた。日本がバブル景気に湧いていた1990年前後のことだ。高級セダンでありながら、年間の販売台数ランキングにおいて、当時のベストセラーカー「カローラ」に次ぐ2位のポジションが定位置となっていた。それくらい高い人気を誇っていたのだ。
では、なぜマークIIは、それほどの人気を得ていたのか? それは、憧れと分かりやすい高級感、そして、オーナー満足度の高さという3つに尽きる。見るからに高級な雰囲気を放ち、周囲のクルマよりも余裕のある暮らしを想起させる分かりやすいツールであること。それらがマークII人気を高めた大きな要因といえる。
今回、そんな昔話からスタートした理由は、新型ハリアーに触れてみて「これは現代のマークIIだ」と感じたから。昨今、セダン離れが叫ばれ、代わりにSUVが人気となっている。その結果、SUVは安価なコンパクトタイプから、「ランドクルーザー」のように大きく立派で高額なモデルまで、多種多彩となった。
だがそうなると、「周りのSUVよりも少し高級で、所有欲を満たしてくれるモデルが欲しい」というニーズが出てくるのは当然のこと。そうした動きに新型ハリアーはピタリとハマったのだろう。すでに、今オーダーしても納車まで5カ月ほどを要するなど、多くの人々の心を揺さぶる存在となっている。
■ハイブリッド車を選ばない理由が見当たらない
今回は、そんな新型ハリアーの走りや、それを生み出すメカニズムについて解説しよう。
新型ハリアーで走り出してまず感じるのは、静粛性の高さだ。一定の条件下であればエンジンが掛からずに走るハイブリッド車はもちろんのこと、通常のガソリンエンジン車でも同様の印象だ。
新型は、キャビンを取り囲むように遮音材や吸音材を配置しているほか、エンジンの音が目立たぬよう、エンジンルーム周辺に吸音材を、さらに、タイヤからの音を低減すべく、その周囲に吸音/遮音材を念入りに配置。これら入念な対策により、従来モデルをはるかにしのぐ静粛性を実現している。そうしたこだわりは徹底していて、ラゲッジスペースのフロアボードを開けると、その裏に吸音材が貼られているほど。これほどの遮音対策を施したクルマを筆者は見たことがない。
新型ハリアーは、2019年に登場した人気モデル「RAV4」と基本メカニズムを共用しているが、遮音性能に関しては新型ハリアーの方がはるかに高い。RAV4よりも高級路線を打ち出しているのは明確で、見方を変えれば、ハリアーは“音”という見えない部分においても、高級感をしっかり作り込んでいるわけだ。
先述したように、新型ハリアーにはガソリンエンジン車とハイブリッド車という2種類のパワーユニットが用意される。前者は2リッターの自然吸気エンジンで、最高出力は171馬力を発生。対する後者は、2.5リッターの自然吸気エンジン(178馬力)にモーターを組み合わせ、システム最高出力(エンジンとモーターの総合的な出力の最高値)はFF車で218馬力、“E-Four”と呼ばれる電気式4WD仕様で同222馬力と、ガソリン車よりもパワフルだ。
ガソリン車よりハイブリッド車の方が高出力であることを意外に感じる人も多いだろうが、動力性能に余裕があり、なおかつ燃費も優れるというのが、イマドキのトヨタ製ハイブリッドのスタンダードになっている。
パワーユニット自体の基本構造はいずれもRAV4と同じだが、ハイブリッド車の駆動用バッテリーだけは異なるものが採用されている。RAV4のそれが6.5Ahのニッケル水素電池なのに対し、ハリアーでは3.7Ahのリチウムイオン電池に変更されているのだから興味深い。
とはいえ、走行フィールに明確な違いがあるかと問われれば、その差を感じとることはできなかった。その理由は、駆動力を生み出すモーターの出力自体は両車とも同じであること。そして、異なるバッテリーが搭載されていても、その違いを性能差に反映させない制御が導入されていることなどが挙げられる。
それぞれのパワーユニットを核とするパワートレーン全体のフィーリングは、圧倒的に静かで、アクセルペダルを踏んだ際の加速の立ち上がりも力強い。中でも、日常領域における中間加速が鋭く、心地よく走れるのはハイブリッド車の方。モーターのおかげでトルクが太く、アクセル操作に対する加速のリニア感も大幅に改善されているなど、ドライバビリティが大幅に向上されている。
一方のガソリン車も、“ダイレクトシフトCVT”と呼ばれる新開発の無段変速トランスミッションの採用などで、先代モデルに比べて加速フィールが格段に良くなっている。とはいえ筆者のオススメは、やはりハイブリッド車だ。力強いのに燃費は良好で、その上、静粛性も抜群。価格を度外視するならば、正直なところハイブリッド車を選ばない理由は見当たらない。
■開発陣の努力が上質な乗り味に結実
パワートレーンにおいては、RAV4との違いを見出すのが難しかった新型ハリアーだが、フットワークにおいては明らかに差別化が図られている。RAV4の乗り味はキビキビとしたものであるのに対し、新型ハリアーのそれは、おおらかな印象が強いのだ。
このように書くと、新型ハリアーの走りは大したことがないと受け取られるかもしれないが、決してそんなことはない。サーキットを走っても安定感が高く運転するワクワク感こそRAV4より控えめながら、スタビリティは高い。その上で、路面の凹凸をしなやかに吸収してくれるから乗り心地も快適。中でも、最新のトヨタ車に共通する、ドライバーが上下に揺さぶられることなく視線が安定する運転感覚はお見事だ。やんちゃな印象のRAV4に対し、新型ハリアーは高級サルーンのような乗り味を実現している。
このほか新型ハリアーでは、4WDシステムにおいてもRAV4との差別化が図られている。RAV4のガソリン車には、4WDシステムにオフロードや滑りやすい路面での走破性を高める“マルチテレインセレクト”が採用され、かなり激しい悪路でも走れるほか、「アドベンチャー」グレードには“ダイナミックトルクベクタリング4WD”が搭載され、コーナリング時の旋回性を高めている。対する新型ハリアーではそれら機構が省かれていて、あくまで基本的な駆動力を確保するための快適重視のシステムとなっている。
とはいえ、パワーステアリングの制御を進化させたり、スムーズに動くショックアブソーバーを採用したりと、新型ハリアーは乗り味を左右する基本要素をしっかり煮詰めることで、走りの心地良さを追求してきた。そうした開発陣の努力は、高級車と呼ぶにふさわしい上質な乗り味に結実している。
エクステリアやインテリアの上質な仕立てにとどまらず、乗りにおいてもしっかりと高級車らしいフィーリングを実現した新型ハリアー。まさに現代のマークIIと呼ぶにふさわしい存在といえるだろう。
<SPECIFICATIONS>
☆ハイブリッド Z“レザーパッケージ”(E-Four)
ボディサイズ:L4740×W1855×H1660mm
車重:1750kg
駆動方式:E-Four(電気式4WDシステム)
エンジン:2487cc 直列4気筒 DOHC+モーター
トランスミッション:電気式無段変速機
エンジン最高出力:178馬力/5700回転
エンジン最大トルク:22.5kgf-m/3600〜5200回転
フロントモーター最高出力:120馬力
フロントモーター最大トルク:20.6kgf-m
リアモーター最高出力:54馬力
リアモーター最大トルク:12.3kgf-m
価格:504万円
文/工藤貴宏
工藤貴宏|自動車専門誌の編集部員として活動後、フリーランスの自動車ライターとして独立。使い勝手やバイヤーズガイドを軸とする新車の紹介・解説を得意とし、『&GP』を始め、幅広いWebメディアや雑誌に寄稿している。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。
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