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種、苗からコーヒー豆へ!「トアルコ トラジャ」ができるまで<コーヒー農園訪問記・中編>

&GP / 2020年9月21日 22時0分

写真

種、苗からコーヒー豆へ!「トアルコ トラジャ」ができるまで<コーヒー農園訪問記・中編>

※この記事は2019年7~8月にかけて行った取材をもとに構成しています

前編はこちら

インドネシア、スラウェシ島の中央部にあるトラジャ地方。ここはトラジャ族の暮らす地域です。

名産はコーヒー。

インドネシアにコーヒーの産地はいくつもありますが、こだわりのカフェなどで出されるアラビカ種のコーヒーを栽培している場所は多くありません。有名どころはスマトラ島のマンデリンや、ここトラジャのトラジャコーヒーになります。

アラビカ種は、標高が高く昼夜の温度差があり適度な降雨量がある土地でないと育てられません。そしてトラジャは、これら厳しい条件に合致した土地なのです。実は18世紀頃には“セレベスの名品”と呼ばれるほど盛んにコーヒーが栽培されていたそうなのですが、いつしかなくなり幻のコーヒーとなってしまいました(セレベスはオランダ統治時のスラウェシの呼び名です)。

▲昔の名残か今でも田んぼの周りにコーヒーの木が自生しています

それを復活させたのが日本のキーコーヒーです。1976年にトアルコ・ジャヤ社(PT. TOARCO JAYA)を設立し、地元の人たちとコーヒーの栽培を始めました。それが、いまや世界的に高い評価を得るコーヒーの生産地に。TOARCOはTORAJA ARABICA COFFEEの頭文字。そしてJAYAは現地語で栄光という意味です。だから、トアルコ・ジャヤは「栄光のトラジャコーヒー」となります。まさに、トラジャの人々が誇りに思えるコーヒー作りが、40年以上にわたって行われているのです。

とはいえアラビカ種は病気に弱く、1本の木からの収量も多くない。高い質を保ちながら収穫を続けることが大変な品種です。そのためトアルコ・ジャヤ社は、ただ栽培するだけではなく研究や品種改良も行い、病気に強く、収量が少しでも多く、そしておいしいコーヒーを目指して今も日々研究を続けているそうです。

そんなトアルコ・ジャヤ社の自社農園である「パダマラン農園」で、コーヒーができるまでのすべてを教えてもらいました。

■ヨンマルで雲海を見に行く!

トラジャに着いた翌日は、夜も明けない朝4時にホテルを出発。トラジャでの移動は懐かしのランクル40系! アジアや中米などで見かけたことはあるのですが、やっぱり世界のランクル、古いモデルでもいまだにファンがいるんですね。このクルマは、トラジャの40系ファングループが出してくれたそう。ロクマルでもナナマルでもなくヨンマルですからね。朝からテンション上がりまくり。乗り心地は…まぁご想像におまかせします(笑)。

▲かなりのラフロードですが、意外としっかりした道

ヨンマル数台に分乗し、向かうはパダマラン農園にある見晴台。山の中腹に広がるパダマラン農園の最も高い場所へと向かいます。

1時間ほど右へ左へぐわんぐわん揺れつつ到着した見晴台には、トラジャ地方の伝統的な建物「トンコナン」がありました。そして空が白み始めて見えてきたのは“雲海”!

一面に広がる雲の海! さまざまな気象条件がそろわないと見られない雲海ですが、ここはかなりの確率で見られるとか。それにしても幻想的。まさに雲の上にいるよう。

▲かなり手を入れているヨンマル

幻想的な雲海を眺めたあとは、トンコナンの下で朝食をとり、いよいよパダマラン農園ツアーのスタートです。

 

■種から苗、そしてコーヒーチェリーへ

トアルコ・ジャヤ社の自社農園であるパダマラン農園。トラジャの中心都市であるランテパオから東南東に10kmほど行ったところにあります。

ここでは、コーヒーの栽培から精選まで、あらゆることが行われています。だから、コーヒー生産のすべてを見られます。

では順を追って見ていきましょう。

▲農園長のイサックさんが苗の作り方を実演。「苗を作る時に重要なのはセレクションです」

▲整然と並ぶ苗。8カ月から3年で生産樹になる

▲収穫期になると実は熟して赤くなります。通称“コーヒーチェリー”と呼ばれ、トラジャでの収穫期は7~9月です

▲世界中のコーヒーの生産地では収穫期に臨時で人を雇います。パダマラン農園でもこの時期には数百人を雇用しているそう

▲濃い赤に色づいたコーヒーチェリー。ちゃんと赤く熟したものだけ摘まなければいけないので、人の目は欠かせません

▲摘んだチェリーから、また青さが残っているものや傷んでいるものを取り除きます。このような細かい作業は品質を保つために重要なんです

▲そして計量し記録

▲みんないい笑顔!

▲お昼はみんなお弁当。トラジャは米が主食なので、どのお弁当にもしっかりご飯が詰め込まれています。日本のお弁当に近いかも

パダマラン農園の面積はなんと530ha。馴染み深い東京ドーム換算にしてみると、約113個分の広さになります。そこで約35万本のコーヒーの木が栽培されているとか。

収穫用の木以外にも、国際的なコーヒーの研究機関と連携してさまざまな調査を行っているエリアもあります。そして精選施設も備えています。

コーヒーチェリーは、精選工程を経ることで生豆になります。多くはこの生豆の状態で産地から輸送されます。パダマラン農園は、栽培から精選までを一環して行える施設です。

■コーヒーチェリーから生豆へ

コーヒー豆の精選方法にはいくつか種類があります。大まかに分けると、水洗式(ウォッシュド)、半水洗式(セミウォッシュド、パルプドナチュラル)、非水洗式(ナチュラル)の3つ。ウォッシュドとナチュラルでは味わいは大きく異なります。コーヒーショップで売られている豆の説明に書かれていると思うので、ぜひ一度チェックしてみてください。

パダマラン農園では水洗式で精選しています。

ではここで、水洗式の工程を見ていきましょう。

▲まずパルパーと呼ばれる機械にコーヒーチェリーを入れ、最も外側の果肉を剥きます

▲大型機械で大まかに果肉を飛ばしたあとも、しっかり果肉を飛ばします

▲剥かれた果肉

▲果肉はそのまま発酵させて肥料として使われます

▲果肉がなくなると、ネバネバしたミューシレージという粘膜の層が出てきます。これも落とさなければなりません。水槽に一定時間浸けておき、発酵させてミューシレージを分解します

▲最後は人の手で水槽の中をかき混ぜて、しっかり落とします

▲ミューシレージを落とすために使った水は、そのまま流してしまうと環境汚染につながるため、しっかりと浄化

▲ミューシレージが落ちたら次は乾燥。乾燥むらができないように、定期的にかき混ぜてしっかり乾燥させます

▲乾燥させた豆。見慣れたコーヒー豆のカタチをしていますね

▲乾燥はこのようなドラム式の機械で行うこともあります

▲熱で水分を飛ばします

▲乾燥させた豆には、パーチメントと呼ばれる内果皮が付いていて、それも落とさなければなりません。それには脱殻機を使います。米と同じですね

▲脱殻されパーチメントが取れたもの。これが生豆です。大きさで選別もされます

▲そして最後の最後に、人の目でチェック

▲ここでは、生豆の中から不良豆を取り除く作業が行われています

▲さらにベテラン検査員による最終チェック

▲割れた豆や黒ずんだ豆など不良豆のサンプル

これらセレクションが、質の高いコーヒー豆にするためにとても重要です。これがしっかりできていないと、雑味やばらつきのある味になってしまいます。手間をかけ人の目で選び抜かれたものだからこそ、おいしいコーヒーになるということです。

しかし、セレクションはこれで終わりではありません。

■生産農園、収穫日ごとに味をチェック

パダマラン農園で収穫されたコーヒー豆以外は、トアルコ・ジャヤ社が行っている出張集買で買い取ったものや、持ち込まれたものです。

もちろん、豆の買い取りには厳しい条件があります。でも、トラジャ地方のコーヒー農家は、長年のトアルコ・ジャヤ社との関係からそれを熟知しています。また高品質なコーヒーの栽培方法や精選方法を教わっていることもあり、今では集買所に持ち込まれる豆のほとんどは買い取り条件を満たすものだといいます。

そうして集められた豆は、農園内やランテパオにあるトアルコ・ジャヤ社の事務所でクオリティチェックが行われます。

▲どの場所で栽培され、いつ誰が持ち込んだものかまでしっかり記録された生豆

▲同条件で焙煎

▲焙煎した豆と生豆を並べて見た目もチェック

▲そして、豆を挽いた粉に直接お湯を注いでカップテスト(カッピング)

▲まずは表面に浮いた粉をどけて香りをチェック。左はパダマラン農園に常駐する唯一の日本人、トアルコ・ジャヤ社生産担当取締役の藤井さん

▲香りをチェックしたら空気と一緒に吸い込んで味のチェック。この時、小鳥の鳴き声のような音が出るとベテランっぽく見えます(笑)。ちなみに藤井さんの音は高く澄んだ美しい音でした

このようなチェックを受け、問題なしとなってようやくトアルコ・ジャヤのトラジャコーヒー「トアルコ トラジャ」となるのです。香り高くコクがあり、そしておいしい。その評価を得続けるために、多くの人の手と目と舌で何度も何度もセレクションを行う。そうしてトラジャの名産が作られ、トラジャの人々の生活を支えています。

1976年に始まったキーコーヒーのトラジャ事業は、まず道路を作ることからスタートしたといいます。

▲まずはこの道を作ることから始まった

そして40年以上経ったいま、農園では多くの現地の人が働き、トラジャの人々の手によってクオリティの高いコーヒーが作られています。1杯のコーヒーに、それだけの歴史があり、人の手があると思うと、さらに味わい深く感じます。

最後はトラジャやスラウェシ島の文化に触れて帰国です。

後編へ続く

<取材・文/円道秀和(&GP) 写真/田口陽介>

 

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