街乗りだけじゃ分からない!ロングドライブで見えたマツダ「CX-30」の本当の姿
&GP / 2020年9月6日 19時0分
街乗りだけじゃ分からない!ロングドライブで見えたマツダ「CX-30」の本当の姿
2019年9月の予約受付開始から早1年。これまで街乗りを中心とした試乗レポートをお届けしてきたマツダ「CX-30」で、先頃、ロングドライブに出掛ける機会を得た。
そこで見えてきたのは、一般的なクロスオーバーSUVとはひと味違う、玄人ウケするCX-30の真価だった。
■古い街並みにも違和感なく溶け込む美しいルックス
ハッキリいってCX-30は「これだけは競合他車に負けない!」という“飛び道具”に乏しいモデルだ。
パッケージング面では、後席や荷室が驚くほど広いといった長所はなく、運転感覚が飛びきりスポーティだったり、ライバルを蹴散らすほどパワフルだったりということもない。さらに、抜群に安いといった分かりやすい特徴もない。強いて競合他車に対する明確なアドバンテージを挙げるとするならば、美しいルックスくらいだろう。
なので、ライバル車と直接比較して優劣をつけるとなると高得点を得にくい。分かりやすいアピールポイントが希薄なのは、バイヤーズガイド的な記事においてはどうしても不利になってしまうのだ。
しかし、実際に触れて運転してみれば、CX-30はとても味わい深いクルマであることがよく分かる。そこで今回は、トータル600kmほどのロングドライブを通じて見えてきた、CX-30の本当の魅力についてご紹介したい。
まず、長所として先述したエクステリアデザインについてだが、今回改めて、その美しさに惚れ惚れした。長野方面へと足を伸ばしたのだが、雄大な自然をバックにしても存在感が失われることなど一切なかった。
また、古い街並みや建物が並ぶシーンにも違和感なく溶け込んでくれる。デザインは人それぞれ好みがあるが、CX-30のルックスは誰もが美しいと感じることだろう。
続いて車内の実用性についてチェックしたい。CX-30は、ハッチバック&セダンの「マツダ3」と基本設計を共用する兄弟車のような関係にあり、ホイールベース(CX-30=2655mm、マツダ3=2725mm)こそ異なるが、開発も並行して行われた。そんな両車を乗り比べると、CX-30の方が格段に使いやすく、開放的な雰囲気であることが分かる。
例えば前後シート。単純に、後席に座る乗員のヒザ回りスペースだけを比べれば、ホイールベースが長い分、マツダ3の方が前後席間距離(飛行機におけるシートピッチ)は大きい。しかし、CX-30はフロアに対する着座位置が高いなど座り方が異なるため、より自然な姿勢で座れる。さらに窓が大きい分、居心地がいいのだ。
またラゲッジスペースは、マツダ3(ファストバック)の334Lに対して430L(サブトランク含む)と格段に容量が大きい。「大型のベビーカーを積んでも、他の荷物をしっかり置けるようにしたい」という開発コンセプトがしっかり反映されている。
つまり、マツダ3、特にそのファストバックは、実用車というよりも美しいデザインを軸とするスペシャルティカーであり、対するCX-30は、ファミリーとのマッチングも良好なイマドキの実用ハッチバックと、明確にキャラクター分けすることができる。
■クルマとの対話を濃密に楽しめる乗り味
今回、そんなCX-30を600kmほど走らせてみて、つくづく玄人ウケするクルマだなと感じた。
何より「いいなぁ」と感じたのは、スッキリとしたドライバビリティだ。ハンドリングフィールは、切れ味がシャープだとか俊敏性に富むといった分かりやすさこそないが、ハンドル操作に対する遅れや過剰に切り込むといったドライバーの意思との相違がなく、思った通りに曲がっていく感覚が秀逸。
それは、ドライバーの手元を見ていると一目瞭然で、旋回が始まるところから直進状態に戻るまで、舵角の細かな修正をほとんど必要としないのである。
またブレーキは、他の日本車から乗り換えると、踏み始めの効きが弱いと感じるかもしれないが、それは、踏力をしっかり掛けて踏み込むことによりググッと効く設定になっているため。つまり、ブレーキのコントロール性を重視した味つけになっている。
このように、CX-30のハンドリングとブレーキのフィーリングは、ドライバーの操作に対して忠実に反応するようチューニングされていて、経験豊富なドライバーであれば、クルマとの対話をより濃密に楽しめるようになっている。
そんなCX-30には、“普通”の2リッター自然吸気ガソリンエンジン“スカイアクティブG”と、1.8リッターのディーゼルターボ“スカイアクティブD”、そして“特別”な2リッターガソリンエンジン“スカイアクティブX”という3タイプのパワーユニットが用意されている。
スカイアクティブGは、排気量が同じ一般的なガソリンエンジンと比べ、低回転域でのトルクが厚い印象で、トランスミッションには6速MTも用意されている。このスカイアクティブG×6速MT仕様は、山道の上り坂でも不足のない動力性能を発揮。オープン2シーターの「ロードスター」にも通じるクルマとの一体感を味わえる。
ディーゼルターボのスカイアクティブDは、スカイアクティブGよりもトルクが格段に太く、発進時や日常域での加速が力強い。さらに、燃費の良さという強力なメリットを備えていて、高速道路などでの巡行時には簡単に20km/L超のデータをマークする。
一方、CX-30の走りの世界観を余すところなく味わいたいなら、マツダが量産車として世界で初めて実用化した“火花点火制御圧縮着火”と呼ばれる特殊な燃焼方式を採用するスカイアクティブXがオススメだ。
スカイアクティブXは、スカイアクティブGのように万人ウケするエンジンではないし、高トルクのスカイアクティブDのような分かりやすさもない。おまけに、普通のハイパワーエンジンのように、アクセルペダルを踏み込んだ時のガツンと来るパワー感もないから、チョイ乗りレベルでは真価を実感できない人も多いはずだ。
しかし、ジワリとアクセルペダルを踏み込んだ時の、回転上昇に伴う自然なパワーの盛り上がりや、ドライバーの思い通りにエンジン回転数が高まっていく様子など、なんとも味わい深い魅力を持つ。
おまけに、そんな心地良さを味わうための対価として、スカイアクティブGに対して60万円ほどのエクストラコストを必要とするところもマニアック。効率とかコストパフォーマンスといったありきたりの基準では語れない魅力が、スカイアクティブXには備わっている。
■インテリアの高い質感は誰もが一目瞭然
一方、美しいエクステリアデザインと並んで、誰でも魅力を実感できるのがインテリアのクオリティだ。インパネやスイッチ類は、国産の競合他車より上質だと断言できるし、欧州プレミアムブランドのライバルと比べても決して見劣りすることがない。この上質なインテリアだけでもCX-30を買う理由に十分なり得るし、そうしたインテリア重視のクルマ選びができる点も、玄人好みのクルマだと感じる所以だろう。
クルマとの対話と楽しめるハンドリングやブレーキのフィール、さり気ない心地良さを味わえるスカイアクティブX、そして、上質な仕立てのインテリア。これらを軸とするクルマ選びは、限られた人だけに許される贅沢な行為だ。今回、ロングドライブで長い時間をともに過ごしてみて、CX-30は玄人ウケするクルマだとつくづく実感させられた。
<SPECIFICATIONS>
☆XD Lパッケージ(4WD)
ボディサイズ:L4395×W1795×H1540mm
車重:1530kg
駆動方式:4WD
エンジン:1756cc 直列4気筒DOHC ディーゼル ターボ
トランスミッション:6速AT
最高出力:116馬力/4000回転
最大トルク:27.5kgf-m/1600~2600回転
価格:330万5500円
<SPECIFICATIONS>
☆20S プロアクティブ ツーリングセレクション(4WD/6MT)
ボディサイズ:L4395×W1795×H1540mm
車重:1460kg
駆動方式:4WD
エンジン:1997cc 直列4気筒 DOHC
トランスミッション:6速MT
最高出力:156馬力/6000回転
最大トルク:20.3kgf-m/4000回転
価格:297万円
<SPECIFICATIONS>
☆X Lパッケージ(4WD/6MT)
ボディサイズ:L4395×W1795×H1540mm
車重:1530kg
駆動方式:4WD
エンジン:1997cc 直列4気筒 DOHC
トランスミッション:6速MT
最高出力:180馬力/6000回転
最大トルク:22.8kgf-m/3000回転
価格:371万3600円
文/工藤貴宏
工藤貴宏|自動車専門誌の編集部員として活動後、フリーランスの自動車ライターとして独立。使い勝手やバイヤーズガイドを軸とする新車の紹介・解説を得意とし、『&GP』を始め、幅広いWebメディアや雑誌に寄稿している。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。
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