油冷エンジンが復活!「ジクサーSF250」はスズキらしさ満点のフルカウルモデル
&GP / 2020年9月7日 19時0分
油冷エンジンが復活!「ジクサーSF250」はスズキらしさ満点のフルカウルモデル
競争の激しいフルカウルの250ccクラスに、スズキが新たに持ち込んだモデルが「ジクサーSF250」。
実はその心臓部には、久しぶりの復活となる油冷エンジンが搭載されています。今回はその魅力と実力に迫ります。
■クラスの標準に対抗する単気筒モデル
「最近のスズキは“攻めてる”なぁ」と思うわけです。スズキがインドからジクサーSF250を輸入し、日本でも販売するのを見て。
2008年に、2輪界のトレンドセッターたるカワサキが「ニンジャ250R」をリリースして以来、フルカウルの250ccクラスは国内で最も熱いカテゴリーといえましょう。ホンダ、ヤマハ、そしてスズキから意欲作が続々と発売されています。
そんな中、並列2気筒エンジンが事実上のスタンダードとなっているところに、カワサキが贅沢な4気筒を積む「ニンジャZX-25R」を投入するかと思えば、スズキは対照的に、シンプルな単気筒モデルのジクサーSF250を追加してきたわけです。
ご存知のように、スズキはすでに「GSX250R」というハンサムクオーターをラインナップしています。カタログ上のハイスペックより、日常における実際的な速さを追求した2気筒モデル。もしかしたら、気筒数の違いこそあれ「両者がキャラクター的にカブる部分もあるのでは?」と余計な心配をしてしまうのです。「攻めてるなぁ」と感心する所以です。
価格は、GSX250Rの53万6800円に対し、ジクサーSF250は50万円を切る48万1800円! フルカウルの250にして、この価格。期待がふくらみます。ちなみに、ネイキッドの「ジクサー250」は44万8800円、弟分の「ジクサー150」は35万2000円です。
■新しい油冷エンジンは小型軽量で経済性を重視
ワイドなLEDヘッドランプ、凝ったデザインの燃料タンクカバー、短くまとめられたマフラー、そしてリアアームにマウントされたリアフェンダーと、いかにも最新モデルらしいフォルムをまといながら、どこか親しみやすさを感じさせるジクサーSF250。
シート高が800mmと聞いて「意外に高いな」と不安に感じたアナタ、大丈夫です。ジクサーSF250は肉感的な見た目とは裏腹に、シートに跨ると単気筒らしいボディのスリムさを実感できます。足つきがいい。
ライディングポジションは、思いのほかアップライトです。スポーティなセパレートハンドルを備えるフルカウルのジクサーSF250ですが、グリップ位置が取り付け基部からググッと持ち上げられているので、上体の前傾はごく軽い。ステップ位置も自然に足を下ろしたところにあります。総じて、スポーティな実用バイクといった趣。これはラクですね。その上、車重が158kgと軽いので、日々、気楽につきあえそう。
249ccのシングルシリンダーは、26馬力/9000回転の最高出力と、2.2kgf-m/7300回転の最大トルクを発生します。シングルカムながら4バルブユニットで、単気筒らしからぬスムーズな吹け上がり。5000、6000回転の実用域まですんなり回り、意識すれば、無理なく1万回転に達します。十分な力強さと、自然なパワーの出方がいい。実用とスポーティの程良いバランスが印象的です。
実はこのエンジン、スズキファンを中心に、バイク好きの人たちから注目を集めていました。そう、久方ぶりの油冷エンジンの登場です! 1980年代に活躍した丸目2灯の「GSX-R750」を思い出して、ガタッと腰を浮かした方もいらっしゃるかも!?
ただし、“SOCS(SUZUKI Oil Cooling System)”と称される今回の油冷エンジンは、熱を持ちやすいヘッド周りにウォータジャケットならぬオイルジャケット(冷却回路)を設けて、冷却専用のオイルを循環させるもの。かつての、潤滑と冷却を兼ねたオイルをヘッド周りやピストン裏に吹き付け、軽さとハイパフォーマンスを両立させたレーシングユニットとはコンセプトが異なります。新しい油冷単気筒は、軽量コンパクトにして、経済性を重視したエンジンなんです。
一般に、空冷エンジンは軽くてシンプルなのが取り柄ですが、どうしても温度の上下が激しくなります。実用上は問題なくとも、昨今のように燃費や環境性能が厳しく求められるようになると、対応がなかなか難しい。そこで、空冷の良さはそのままに、ユニット全体の温度安定化を狙ったのがSOCSといえます。基本、空冷にもかかわらず、シリンダーブロックに冷却フィンが切られていないのが、同システムの有効性を暗示しているといえましょう。フィンがないのは空冷好きにはちょっと寂しいことですが、そこまでして軽量シンプルを徹底しているのです。
■ルックスを裏切らない程良いスポーティさ
新型油冷エンジンを積んだジクサーSF250を走らせると、シングルスポーツらしい小気味良さが光ります。ピーキーさを抑えながらもメリハリが利いた単気筒エンジン。軽快なハンドリング。ルックスを裏切らない程良いスポーティさがいいですね。
ただ、7段階のプリロード調整機能を持つリアサスペンションは、デフォルトのままだとナマに硬いので、もう少し乗り心地に振った方がバイクのキャラに合うように感じました。
ジクサーSF250の、上体を起こした姿勢は街乗りでは取り回しが良くていいのですが、高速道路を行く際には前方からの風をモロに受けがち。サイドはともかく、フロントのカウルはメーターバイザー的なもので、防風効果はあまり期待できません。ラクチンなポジションを活かしたツーリングバイクとして活用したい場合、「フロントスクリーンを変えてみたい」と考えるオーナーが出てくるかも。
いざ峠に行けば、クセのない回頭性で手軽にスポーツを楽しめます。ジクサー150より強化されたというフレームが頼もしい。ブレーキには、ブレンボ由来のバイブレ(BYBRE)がおごられ、タイヤは前後とも17インチのラジアルです。
デザインに凝っていながらも気の置けない性格で、惜しげなくガンガン使われ、場合によってはカスタムベースとしても愛用される…かも。そんな“スズキらしさ”を持つジクサーSF250は、気張らず乗れる実用スポーツバイクです。
<SPECIFICATIONS>
☆ジクサーSF250
ボディサイズ:L2010×W740×H1035mm
車両重量:158kg
エンジン: 249cc 油冷単気筒 SOHC
トランスミッション:6MT
最高出力:26馬力/9000回転
最大トルク:2.2kgf-m/7300回転
価格:48万1800円
文&写真/ダン・アオキ
ダン・アオキ|15年ほど出版社に勤務し、クルマ専門誌、カメラムックなどの編集に携わった後に独立。フリーランスの“カメライター”になる。現在は、2輪・4輪のコンテンツ制作を担当するほか、女性を被写体とした人物撮影も行っている。
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