マツダ「MX-30」はココが面白い!①挑戦の意匠&構造でスペシャルなクーペSUVが誕生
&GP / 2020年10月11日 19時0分
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マツダ「MX-30」はココが面白い!①挑戦の意匠&構造でスペシャルなクーペSUVが誕生
世界の自動車メーカーが続々とニューモデルを投入し、百花繚乱の様相となっているコンパクトSUVマーケット。そんな激戦区にマツダが新たに投入したのが「MX-30」だ。
一風変わったこのモデルは、どんな魅力を秘めているのか? 2回に渡ってその真価を検証する。前編となる今回は、その希有なルックスとボディ構造にフォーカスする。
■マツダ初の量産EVだからこその挑戦
これぞ個性派。これぞ本物のクーペSUV…。マツダ自身も、たくさん売れるクルマでないことを十分理解しているのだろう(その証拠に、日本での販売計画台数は1000台と控えめ)。だからこそMX-30は、他に類を見ない思い切ったアイデアを投入してきた。その一例が“フリースタイルドア”と呼ばれる観音開き式のドアだ。
このタイプのドアは、かつてマツダがラインナップしていた4ドアクーペ「RX-8」にも採用されていたが、この特別な構造の導入で、MX-30は他のSUVとの明確な差別化に成功。個性際立つ特別な存在となっている。
そもそもMX-30は、昨今、続々と誕生している他のSUVとは異なり、単に、ラインナップのすき間を埋めるために誕生したモデルではない。それは、ボディサイズからも明らかだ。従来のマツダは、小さい方から順に「CX-3」、「CX-30」、「CX-5」、「CX-8」というSUVをラインナップしていたが、新たに誕生したMX-30の4395mmという全長や2655mmというホイールベースは、実は既存のCX-30と全く同じ値なのである。
CX-30と同じサイズなのに、なぜMX-30というブランニューモデルがマツダのラインナップに必要だったのか? それはこのクルマが、マツダにとって初の量産EV(電気自動車)だからである。日本市場向けは、まずマイルドハイブリッド仕様の“e-スカイアクティブG”でスタートを切ったMX-30だが、2021年1月にはEV版の市場投入もすでにアナウンスされているのだ。
その際、ありきたりな姿の“普通のクルマ”では、人々に受け入れられにくいと危惧したのだろう。マツダは初の量産EV投入に際し、ハッチバックの「マツダ3」やCX-30を単にEV化するのではなく、専用仕立ての車体を用意して特別なモデルと位置づけることで、より多くの人にアピールしたいと考えたようだ。これこそがMX-30誕生の狙いだとすれば、CX-30とほぼ同じボディサイズも腑に落ちる。
とはいえ、全長やホイールベースこそ同じものの、MX-30とCX-30のプロポーションは大きく異なる。MX-30はCX-30よりフロントのオーバーハング(前輪よりも前の部分)が長く、逆にリアのオーバーハング(後輪よりも後ろの部分)は短い。
つまりボディバランスは“ロングノーズ/ショートデッキ”といわれるスポーツカーの定番に近く、さらにリアゲートを大きく傾斜させることで、個性派SUVのトレンドである“クーペ感覚”もプラスしている。
■無難とは一線を画すモノ選びにマッチする特別感
このところ、ヨーロッパ車を中心にクーペSUVが増えているが、MX-30はそれらと比べても、よりクーペらしいクルマだ。その象徴となるのが、先述したフリースタイルドアである。
クーペスタイルをまとうSUVでも、一般的なモデルは日常的な使い勝手を重視し、ボディ側面に4枚のドアを備えている。ところがMX-30は、後方に支点を設け、通常とは逆方向に開くユニークなリアドアを採用。そのため、フロントドアが開いている時しか開閉できないなど、リアのドアはあくまで補助的な存在に過ぎない。また、リアシートへの乗り降りもフロントドアを開くことを前提としているため、感覚としては2ドアに近い。つまり、一般的なクーペSUVはいわば4ドアクーペであるのに対し、MX-30は2ドアクーペの派生形といえる。この違いこそが、MX-30が醸し出す特別感につながっているのだ。
もちろんMX-30には、そのための割り切りも見られる。例えば、リアシートへの乗り降りは一般的なSUVよりもしづらいというのが実情だ。しかし、そんなウィークポイントを抱えていても、カッコ良さや美しさを重視して2ドアクーペを選ぶ層が日本にも少なからず存在する。またヨーロッパでは、今なお「人生を楽しむ優雅なクルマ」としてクーペが根強い人気を集めている。MX-30は、そうした無難とは一線を画すモノ選びにマッチした、贅沢なクルマといえるだろう。
マツダはMX-30のプロモーションにおいて「わたしらしく生きる」というキャッチコピーを用いているが、それは、定番や無難といった枠にとらわれず“個”を大切にする人にぜひ乗ってもらいたいというメッセージである。いい換えれば、MX-30を選ぶということは、常識や生活環境に縛られることなく自由なクルマ選びを楽しめる人だけに与えられた特権、といえるのではないか。
デザインと実用性をバランスよくまとめたCX-30は、クロスオーバーSUVの王道だ。対してMX-30は、乗る人の個性を際立たせる存在。
同じマツダ車、ほぼ同じボディサイズのSUVでありながら、この2台は明確なすみ分けが図られているのである。
■シンプルさの中にこだわりが詰まったデザイン
続いて注目したいのは、MX-30のデザインだ。昨今、マツダ車は“魂動(こどう)”と呼ばれる統一されたデザインテーマの下に作られてきた。車名が分からない人でも、ひと目見ればすぐにマツダ車だと理解できるほど、すべてのモデルが明確にマツダ車であることを主張する。
しかしMX-30のルックスは、他のマツダ車と印象が異なる。マツダは「これも魂動デザインだ」と説明するが、曲線美を活かした他のモデルに対し、MX-30は直線的かつシンプルな仕立てで、躍動感も控えめだ。こうしたテイストはMX-30だけのものなのか、それとも今後、他のマツダ車にも波及していくのか、現時点では分からない。しかし、マツダがいう「乗る人の生き方やスタイルが加わって初めて完結する存在感」を具現するために、MX-30はあえて強い主張を抑えているのだろう。
またMX-30は、クルマ全体のフォルムだけでなくディテールにおいても、他のマツダ車とは明確な差別化が図られている。例えば、タイヤを囲むホイールアーチは直線基調の形状であるし、このところのマツダ車とは異なり、フロントグリルに付くエンブレムは立体的な形状となっている(他モデルは車両前方をチェックするレーダーを内蔵する関係上、エンブレムが描かれたプレートになっていた)。
さらにパッケージオプション装着車のリアピラーには、“MAZDA“の文字が刻まれた鈍い輝きを放つプレートが張られるなど、全身に興味深い仕立てが施されているのだ。
こうした、従来のマツダ車とは一線を画すルックスや、シンプルさの中にこだわりが詰まったディテールも、MX-30が醸す特別感につながっている。
※「Part.2」では、MX-30のインテリアの出来栄えに迫ります
<SPECIFICATIONS>
☆MX-30(2WD)
ボディサイズ:L4395×W1795×H1550mm
車重:1460kg
駆動方式:FF
エンジン:1997cc 直列4気筒 DOHC+モーター
エンジン最高出力:156馬力/6000回転
エンジン最大トルク:20.3kgf-m/4000回転
モーター最高出力:6.9馬力/1800回転
モーター最大トルク:5.0kgf-m/100回転
価格:242万円〜
<SPECIFICATIONS>
☆MX-30(4WD)
ボディサイズ:L4395×W1795×H1550mm
車重:1520kg
駆動方式:4WD
エンジン:1997cc 直列4気筒 DOHC+モーター
エンジン最高出力:156馬力/6000回転
エンジン最大トルク:20.3kgf-m/4000回転
モーター最高出力:6.9馬力/1800回転
モーター最大トルク:5.0kgf-m/100回転
価格:265万6500円〜
文/工藤貴宏
工藤貴宏|自動車専門誌の編集部員として活動後、フリーランスの自動車ライターとして独立。使い勝手やバイヤーズガイドを軸とする新車の紹介・解説を得意とし、『&GP』を始め、幅広いWebメディアや雑誌に寄稿している。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。
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