このイメージはなかったわ!電気で走れるジープ「レネゲード4xe」は街乗りがスムーズ
&GP / 2020年10月31日 19時0分
このイメージはなかったわ!電気で走れるジープ「レネゲード4xe」は街乗りがスムーズ
他を寄せ付けない優れた悪路走破性を武器に、アメリカ本国だけでなく、ここ日本でも右肩上がりのセールスを続けるジープ。
そんなオフロード車の名門ブランドから、電気で走れるPHEV(プラグインハイブリッドカー)が登場した。エントリーSUVの「レネゲード」に追加されたPHEV「レネゲード4xe」の実力を、今回は街乗りで試した。
■オフロード車の名門も時代には逆らえない!?
ジープ史上最高の燃費データをマークすると同時に、同ブランド初のPHEVとなったレネゲード4xeに触れてまず思ったのは「ジープもこうなる時代なんだな」ということ。
自動車は今、ヨーロッパ市場を中心にヒステリックなほどの二酸化炭素排出量削減が求められていて、燃費を向上させることが急務となっている。昨今、電気自動車や燃料電池車が増えているのもそれを受けての動きだし、同様に、ハイブリッドカーもますます増えてきている。
今回、PHEVをラインナップに加えたジープは、そうしたクルマを取り巻く大きな流れとは無縁のブランドと考えていた人も多いのではないか? ジープブランドのルーツは第二次世界大戦中に軍用として開発された小型の万能四輪駆動車で、そのスピリットを色濃く受け継ぐ代名詞的モデル「ラングラー」は、道なき道を走破する生粋のオフローダーとして世界中で多くのファンを獲得している。そんなオフロード車の名門ブランドであっても、時代には逆らえないのである。
■巧みなパッケージングでPHEV化のネガはほぼなし
ジープ初のPHEVにおけるベース車となったのは、ラインナップ中、最もコンパクトな「レネゲード」。全長4255mm、全幅1805mmというボディサイズは、日本車でいえばトヨタ「ヤリスクロス」や日産「キックス」と同じくらいの大きさ。街中でも運転しやすいコンパクトクロスオーバーSUVだ。
左リアのフェンダー部に充電口が備わること、そして、ジープのPHEVを示す“4xe”のエンブレム(もしかすると今後、ジープのモーター付き車両全般に与えられるのかもしれない)が添えられていることを除けば、ルックスにおいてPHEVであることを主張する部分はない。
それはインテリアも同様。ベースとなったガソリン車と異なるのは、PHEV専用のメーター、モーターとエンジンの作動バランスを3段階に切り替えられるドライブモードスイッチ、回生ブレーキの効き具合を2段階に調整できるスイッチ、そして、路面状況に合わせて最適な駆動力を発生させるトラクションコントロールシステム“セレクテレインシステム”に、スロットルレスポンスとステアリングフィールがシャープになる「SPORT」モードが追加された程度だ。
注目のパワートレーンは、1.3リッター4気筒ターボエンジンを核とし、フロントとリアにそれぞれモーターを配置する。エンジン自体は制御の違いにより、リミテッドが131馬力、トレイルホークが179馬力を発生。一方のモーターは、フロント側が減速時やアクセルをオフにした際の回生ブレーキ用として機能し、定格出力60馬力のリア側は、モーター走行時に駆動力を発生させる。
ちなみに駆動方式は、リアタイヤをモーターだけで駆動させる電気式4WDで、前後輪を結ぶプロペラシャフトは存在しない。可能な限りエンジンを止めて走る「ELECTRIC」、バッテリーの消費を抑えるべくエンジンを積極的に活用する「E-SAVE」、そして、状況に合わせてモーターとエンジンを効率良くミックスさせる「HYBRID」という3種類のドライブモードが用意されるが、FF車ベースのプラットフォームであるにも関わらず、モーターのみでの走行時は後輪駆動となるのが面白いところだ。
また、電気でも走るPHEVであっても、オフロード向けの走行モードを用意しているところは、いかにもジープらしい。4WDの「LOCKモード」や「LOWモード」が用意されているし、オフロード性能を重視したグレード「トレイルホーク4xe」には、セレクテレインシステムに「ROCK」モードも用意されている。
その上、シティ派グレードの「リミテッド4xe」で水深40cm、先述したトレイルホークで水深50cmの渡河性能を確保したというから、ジープはPHEVであってもファンの期待を裏切らない。
そんなレネゲード4xeでうれしいのは、PHEV化されても巧みなパッケージングによって、実用性がほとんど犠牲になっていないこと。走行用バッテリーをリアシート下に収めることでフロアが高くなるといったネガを解決。前後シートの居住性を犠牲にしていない。
ベースモデルと比べれば、ラゲッジルームのフロアが高くなっているが、その差はわずかだ。ちなみに荷室の床下は、グレードによって構成が異なる。リミテッドはフロアボード下にかなり広い収納スペースを確保。さらにフロアボード自体も、荷物の量や大きさに合わせて高さを2段階に調整できる。
対して、オフロード性能重視のトレイルホークは、フロア下にフルサイズのスペアタイヤを積むためスペースに限りがある(これはベースとなったガソリン車も同様だ)。
■レネゲード4xeはモーターだけでもかなり粘る
それでは、街へと繰り出そう。レネゲード4xeはPHEVだけあって、バッテリー残量がある場合、アクセルペダルを踏んでもエンジンが掛からないまま、滑らかにスーッと走り始める。この時の様子は、ジープらしくない、というか、ジープとしてはなんとも不思議な感覚。悪路をガンガン進めるワイルドなジープなのに、エンジン音もなくスマートに動き出すのが実に“新しい”。
そこから先のシーンでも、レネゲード4xeはちょっとした驚きをもたらしてくれる。アクセルペダルを深く踏み込まなければ、想像をはるかに超えるレベルまで、エンジンが掛からないのだ。とにかくモーターだけで粘って走り続ける。高速道路に入ってもモーター走行のまま粘り、気づけばスピードが100km/hに達しているのだから驚きだ。
資料によると、エンジンを掛けない状態での最高速度はなんと130km/h。しかもバッテリーを上手にセーブしながら走れば、モーターのみで最長48kmも走れるというからなかなかのスタミナだ。一般的なユーザーなら、普段はガソリンを使うことなく過ごせることだろう。
一方、バッテリー残量が減ったり、アクセルペダルを深く踏み込んだりすると、当然のことながらエンジンが掛かる。その時の乗り味は、モーターの存在を感じさせないガソリン車に似た感覚。エンジンが止まっている時と作動している時とでまるで走行フィールが異なり、しかもそれらを、好みによってスイッチひとつで任意に切り替えることもできるのだから“一粒で二度美味しい”運転感覚といえる。
エンジンとモーターを合わせたパワーは、リミテッドが191馬力、トレイルホークが239馬力とかなり強力。ともに車重はちょっと重めだが、加速はかなり鋭く力強い。ちなみにトレイルホークは、停止状態から100km/hまで約7秒で加速し、最高速度は180km/hに到達するというから、なかなかの俊足だ。
気になる価格は、リミテッドが498万円、トレイルホークが503万円となる。ベースとなった純粋なガソリン車と比べると120万円ほど高いが、そのうち約30万円は税金の免除などによって圧縮されるという。
あのジープからPHEVが登場したことに、時代の流れを感じずにはいられない。世の中の動きを見る限り、今後もハイブリッドカーやPHEV、電気自動車などが続々誕生するだろう。そうした中、オフロードブランドの雄であるジープにも選択肢があるということは、ユーザーとして歓迎すべきニュースといえそうだ。
<SPECIFICATIONS>
☆トレイルホーク4xe(ホワイト)
ボディサイズ:L4255×W1805×H1725mm
車重:1860kg
駆動方式:4WD(電気式4WDシステム)
エンジン:1331cc 直列4気筒 SOHC ターボ+モーター
トランスミッション:6速AT
エンジン最高出力:179馬力/5750回転
エンジン最大トルク:27.5kgf-m/1850回転
フロントモーター定格出力:20馬力
フロントモーター最高出力:45馬力
フロントモーター最大トルク:5.4kgf-m
リアモーター定格出力:60馬力
リアモーター最高出力:128馬力
リアモーター最大トルク:25.5kgf-m
価格:503万円
<SPECIFICATIONS>
☆リミテッド4xe(ブルー)
ボディサイズ:L4255×W1805×H1695mm
車重:1790kg
駆動方式:4WD(電気式4WDシステム)
エンジン:1331cc 直列4気筒 SOHC ターボ+モーター
トランスミッション:6速AT
エンジン最高出力:131馬力/5500回転
エンジン最大トルク:27.5kgf-m/1850回転
フロントモーター定格出力:20馬力
フロントモーター最高出力:45馬力
フロントモーター最大トルク:5.4kgf-m
リアモーター定格出力:60馬力
リアモーター最高出力:128馬力
リアモーター最大トルク:25.5kgf-m
価格:498万円
文/工藤貴宏
工藤貴宏|自動車専門誌の編集部員として活動後、フリーランスの自動車ライターとして独立。使い勝手やバイヤーズガイドを軸とする新車の紹介・解説を得意とし、『&GP』を始め、幅広いWebメディアや雑誌に寄稿している。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。
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