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電動化で“らしさ”が明快に!EV版「DS3クロスバック」の走りはクラスを超越

&GP / 2020年12月29日 19時0分

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電動化で“らしさ”が明快に!EV版「DS3クロスバック」の走りはクラスを超越

“シトロエンの上級版”という位置づけだったシトロエンDSから分離独立するカタチで、新しいカーブランド・DSオートモビルが誕生したのは2014年のこと。

これまで日本にも、ミドルサイズのラグジュアリーSUV「DS 7 クロスバック」や、コンパクトラグジュアリーSUVの「DS 3 クロスバック」が上陸していたが、先頃新たに、ピュアEV(電気自動車)である「DS 3 クロスバック E-TENSE(イー・テンス)」のデリバリーも始まった。

電動化によってブランドの“らしさ”まで明快になった、注目モデルの魅力を深掘りする。

■3年3万kmでの所有コストはガソリンターボとほぼ同等

DSオートモビルはプジョーやシトロエンと同様、フランスのグループPSAに属しているが、2014年の分離独立後は開発陣やデザイナーが完全に別部隊となり、ブランドの独自性を強めている。

ここ日本には、DS 7 クロスバックとDS 3 クロスバックという2モデルが導入されていたが、先頃、バッテリーに蓄えたエネルギーでモーターを駆動するピュアEV、DS 3 クロスバック E-TENSEのデリバリーが始まった。

ちなみにDSオートモビルは、今後、EVやPHEV(プラグインハイブリッド車)といった電動化車両に“E-TENSE”のサブネームを使用していく意向で、すでに欧州では、ガソリンエンジンに加え、前後に1基ずつモーターを配置したPHEV「DS 7 クロスバック E-TENSE」も発表されている。

DS 7 クロスバック E-TENSE

一般的に、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンといった内燃機関を搭載するモデルに対し、EVは値が張るというのがこれまでの常識だった。クルマの価値やグレードが価格に比例するという旧来的な考え方であれば、内燃機関を搭載した仕様よりもEVの方が上級、ということになる。しかしDSオートモビルでは「コストではなく、純粋に使い方と乗り方に応じて内燃機関モデルがいいか、EVがいいかを選んで欲しい」というメッセージを我々に投げかけている。

DS 3 クロスバックの内燃機関モデルは、1.2リッターの3気筒ガソリンターボエンジンに8速ATを組み合わせる。最高出力は130馬力、最大トルクは23.5kgf-mだ。一方、ピュアEVのE-TENSEは、最高出力136馬力、最大トルク26.5kgf-mのモーターを搭載する。スペック的にはお互い似たようなものだが、それぞれの価格は内燃機関モデルが373万円と426万円、E-TENSEは499万円と534万円となっている。

同じグレードどうしで比べると、内燃機関モデルとEVとでは100万円以上の価格差があるが、インポーターであるグループPSAジャパンによると「保険料やメンテナンス費用、月々のガソリン代と電気代、EV購入時に利用できる補助金や低金利プランなどを勘案すると、3年3万km乗った場合の所有コストは、ほぼ同等になる」という。要するに“パワー・オブ・チョイス”であり、内燃機関モデルにするかEVにするかの選択は、コストではなく単純に好みに応じて選べばいいわけだ。

■懐古に走らずモダンなデザインへと昇華

スタイリング上の差はほとんどない、とはいえ、ガソリンエンジンを積むDS 3 クロスバックと、EV版のDS 3 クロスバック E-TENSEとでは、ラグジュアリーの度合いが異なっている。見るからに、よりラグジュアリーなのはE-TENSEの方で、DSオートモビルが目指す世界観がより色濃く投影されている。

例えばエクステリアでは、ボンネットフード先端に付くバッジが専用品となるほか、フロントグリルはアントラシートグレー(フランスの伝統色である黒に近いグレー)で、ホイールはサテンクロームで仕上げられている。

対するインテリアは、まさに圧巻のひと言。シートやダッシュボード、ドアトリムをホワイトで統一したインテリアは、ラグジュアリーモデル定番の仕立てともいえるが、中でも上級グレード「グランシック」では、インテリアをパリ1区のリボリ(Rivoli)通りになぞらえ、ハンドルまでオフホワイト(正確にはパールグレー)で統一している。ここまでホワイトのオンパレードなのに、いやらしさを感じないのはデザイナーの手腕によるところが大きい。

DSオートモビルでは“サヴォアフェール(Savoir-Faire)”を意識してクルマづくりを行っているという。英語的に表現すれば“フレンチノウハウ”だし、日本語に意訳すると“匠のワザ”となるが、単にフランスの伝統技法を適用するにとどまらず、より良いもの、より美しいものを希求する前向きな姿勢がそこには込められている。

DSの各モデルには、アールデコと呼ばれる1920年代半ばにパリで起こり世界へと広がった幾何学模様がデザイン上の特徴だが、モチーフを引用するだけの懐古に終わらず、モダンなデザインへと昇華させているところが、まさにDS流のサヴォアフェールといえるだろう。

話をインテリアに戻すと、内燃機関モデルでは空調のアウトレットとスイッチパネルにひし形のパターンがあしらわれているが、E-TENSEではそれに加え、ダッシュボードやドアトリム、シートのサイドサポートなどにも展開され、統一性を高めている。

ホテルの部屋に例えるなら、E-TENSEのインテリアは内燃機関モデルのそれに対し、ひとつ上の空間へとグレードアップしたかのような印象だ。

■1日40km走る人でも充電は1週間に一度でOK

DS 3 クロスバック E-TENSEに採用されるプラットフォームは、グループPSAのコンパクトカーセグメントをカバーする“CMP(コモン・モジュラー・プラットフォーム)”と一括して開発された、EV版の“eCMP(エレクトリック・コモン・モジュラー・ プラットフォーム)”だ。そのためハードウェアの多くを、同じeCMPを採用するプジョーのEV「e-208」や「SUV e-2008」と共有している。

グループPSAの考え方が独特なのは、内燃機関モデルとEV仕様とでプラットフォームの基本構造を共有していること。フォルクスワーゲンやBMW、アウディなどのように、EV専用のブランドやプラットフォームを設けることなく、同一モデルにおける動力源のバリエーションとして、EV版を設定しているのだ。

その際、使い勝手に関して一切妥協しないのが、グループPSAのこだわりともいえる。多くのEVは、床一面にバッテリーを敷き詰める構造を採り入れているが、これだとフロア位置が高くなり、リアシートに座る乗員は足の置き場に困ることも。その点eCMPは、そうならないよう後席乗員の足下を避けるカタチで、フロントシート下やセンターコンソール、そして、リアシートの下にバッテリーを搭載する。

実際、後席に座ってフロントシート下につま先を入れてみたが、バッテリーの存在はさほど気にならず、快適に移動することができた。もちろん、バッテリーはラゲッジスペースを浸食しておらず、荷室の使い勝手も内燃機関モデルと変わらない。

ちなみにバッテリーの容量は50kWhで、カタログに記載されるJC08モードでの一充電走行距離は398kmをマークする。実際の“電費”はその7割だと仮定すると、280km走れることになる。通勤などで1日40km走る人なら、1週間に一度充電すればいいという計算だ。これなら自宅に充電設備がなくても、EVライフを送れるのではないかと思わせるに十分なスペックだ。

なお、DS 3 クロスバック E-TENSEは、“CHAdeMO(チャデモ)”規格での急速充電(50kW:80%充電まで約50分)や、家庭用のコンセント型普通充電(3kW/200V:100%充電まで18時間、50km充電まで約3時間)、そして、街の一部店舗などに設置されるウォールボックス型普通充電(6kW/200V:100%充電まで9時間、50km充電まで約1.5時間)に対応している。

■フォーミュラE王者のノウハウが息づく

DSオートモビルは、分離独立した翌年の2015年から、電動化技術を鍛えるべくFE(フォーミュラE)への参戦を開始し、モーターやインバーター、ギヤボックスといったEVパワートレーンの独自開発を行ってきた。

FEはレースで消費できるバッテリー容量が決められているため、勝負はモーターやインバーターの効率、そして、エネルギーマネジメントがカギを握る。そんな中、DSオートモビルは、シーズン5(2018-2019年)とシーズン6(2019-2020年)にドライバーとマニュファクチャラーの両タイトルを獲得。これはひとえに、DSオートモビルのEV技術の高さを示す何よりの証拠といえるだろう。

そんなFEで培ったノウハウが、DS 3 クロスバック E-TENSEにも生かされている。それも、サヴォアフェールを意識したカタチでだ。

実際、ドライブしてみると、アクセルペダルをひと踏みしただけで感動が全身を貫く。内燃機関モデルに比べてレスポンスに優れる上に、発進時から力強さを発揮するのはモーター駆動車ならではの強み。最高出力136馬力、最大トルク26.5kgf-mのモーターは、内燃機関モデルより300kg重い1580kgのE-TENSEをいとも軽々と走らせる。しかもその時の振る舞いは、実にスムーズだ。

内燃機関モデルと同様、E-TENSEには「スポーツ」、「ノーマル」、「エコ」という3つのドライブモードが用意される。センターコンソールにあるスイッチでモードを切り替えるとモーターの出力とトルクが変わり(スポーツ/ノーマル/エコの順に数値が低くなる)、アクセルペダルの踏み込みに対する反応も変化する。最も元気に走れるのはもちろんスポーツモードだが、日常的なシーンではノーマルでも十分だ。

■サイズやクラスを超越した上質な乗り味

一方、モーターの発電機能によって制動力を発生させる回生ブレーキには「D」と「B」の2モードが用意され、シフトレバーの操作によって切り替える。デフォルトのDモードは、内燃機関モデルのエンジンブレーキに相当する減速Gを発生させるが、これは「内燃機関を搭載するクルマから乗り換えても違和感を抱かないように」との配慮から導かれたものだ。対するBモードは回生ブレーキが強くなり、同じEVの日産「リーフ」や「ホンダe」のように、アクセルだけのワンペダルで加減速のほとんどをコントロールできる。しかし、完全停止までは対応していないため、停止する際にはブレーキペダルを踏んでやる必要がある。

「E-TENSEはEVだから、走りはスムーズだろう」というところまでは想定内だったが、それ以上に驚いたのは静粛性の高さだ。そして、そうした感動に追い打ちをかけたのが、重厚な乗り味である。「本当に“Bセグメント”に属すコンパクトSUVなのか?」と思い、外に出てボディサイズを改めて確認したくなったほど、DS 3 クロスバック E-TENSEは全長4120mm、全幅1790mm、全高1550mmというボディサイズやコンパクトSUVというクラスを超越した上質な乗り味を提供してくれる。車体の動きがとてもゆったりしていて、足回りはしなやか。そのライドフィールは“Dセグメント”の高級セダンに近い落ち着きぶりだ。徹底した遮音への気配りや車体骨格への手当てが奏功しているのだろう。

DS 3 クロスバック E-TENSEの真価は、環境に優しいとか乗り味が滑らかといったレベルでは到底語り尽くせない。EVパワートレーンとサヴォアフェールの精神とが融合することで全方位的に個性が強まった、フレンチラグジュアリーの真髄を体現する1台といえるだろう。

<SPECIFICATIONS>
☆グランシック
ボディサイズ:L4120×W1790×H1550mm
車重:1580kg
駆動方式:FWD
最高出力:136馬力/5500回転
最大トルク:26.5kgf-m/300〜3674回転
価格:534万円

文/世良耕太

世良耕太|出版社で編集者・ライターとして活動後、独立。クルマやモータースポーツ、自動車テクノロジーの取材で世界を駆け回る。多くの取材を通して得た、テクノロジーへの高い理解度が売り。クルマ関連の話題にとどまらず、建築やウイスキーなど興味は多岐にわたる。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

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