2021年の注目株!輸入車No.1にも輝いたフランス車に黄金期が到来☆岡崎五朗の眼

&GP / 2021年1月2日 19時0分

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2021年の注目株!輸入車No.1にも輝いたフランス車に黄金期が到来☆岡崎五朗の眼

昨2020年は、日本車のビンテージイヤーともいうべき年でしたが、それにヒケを取らない勢いを見せたのが、これまでちょっとマイナーな存在だったフランス車です。

プジョー、シトロエン、DSオートモビル、ルノー、アルピーヌといった各ブランドの個性派たちが続々と上陸したほか、2020-2021日本カー・オブ・ザ・イヤーにおいて、プジョー「208/e-208」がインポート・カー・オブ・ザ・イヤーを受賞。まさにフランス車は、黄金期を迎えつつあります。

そんなフランス車の魅力を、モータージャーナリストの岡崎五朗さんが検証します。

■2020年のインポートカーNo.1に輝いたのはフランス車のプジョー

僕のフランス車“原体験”はシトロエンの「2CV」。徹底的にシンプルな構造でありながら、たっぷりしたサスペンションストロークとフカフカのシートで超快適。ダッシュボードから生えた棒をひねったり押したり引いたりしながら小排気量エンジンをぶん回して走るのは、最高に楽しかった。

とはいえそのクルマは、当時アルバイトをしていた『NAVI』という自動車雑誌の所有物。自分のクルマとして最初に買ったフランス車は2代目のルノー「サンク」だった。サスペンションといいシートといい、サンクもまた最高の快適性を備えていたが、やはりというべきか当然というべきか、よく故障するクルマだった。ガレージに停めておいたら漏れたガソリンで床が濡れていた…というのは、今、思い出してもゾッとする経験だ。

次に手に入れたのは、2代目のルノー「クリオ」。こいつも実に快適だったが、マイナートラブルは数知れず。オルタネーターの故障で家へたどり着いた途端にエンジンが止まった時は、クルマを責めるどころか「家までなんとか持ちこたえてくれてありがとう」という気持ちになった(笑)。

その後しばらくドイツ車を乗り継いだが、やはりフランス車特有の優しいタッチには離れがたい魅力があり、1999年にプジョー「406ブレーク」を購入した。あの繊細な乗り心地と、軽さの中にリアルな手応えを残す絶妙なステアリングフィールは今でも忘れられない。多少のマイナートラブルこそあったものの、この辺りからフランス車の信頼性は徐々に改善されていったような気がする。

その後、プジョー「RCZ」(2010年)、シトロエン「DS 3」(2014年)、シトロエン「C3」(2017年)と数台のフランス車を立て続けに購入したが、どれもノントラブル。長期間乗り続けた時の信頼性については、はっきりとしたことはいえないが、僕の経験からいうと、現代のフランス車の信頼性はかつてとは比べものにならないほど向上している。ついでにいうと、少し前まで弱点だった先進安全装備についても、今や目覚ましい進化を遂げている。

フランス車の魅力として筆頭に挙げたいのは、やはりデザインだ。イタリア車ほどセクシーではないし、ドイツ車ほど権威的でもないけれど、肩ヒジ張らないオシャレさを演出させたらフランス人の右に出るものはいない。合理性を忘れないクルマ作りや独特の優しい乗り味も大きな魅力であり、また、コストパフォーマンスの高さにも注目だ。

ということで今回は、2020-2021日本カー・オブ・ザ・イヤーにおいてインポート・カー・オブ・ザ・イヤーを受賞するなど、がぜん注目度が高まっているフランス車の中から、僕がオススメする5台の魅力について紹介したい。

■プジョー「208/e-208」

このクルマは抜群のデザイン力が光る。ビジュアルインパクトの強さはコンパクトカーの中では敵なしだろう。

もちろん、デザインには好みの要素も多いから「オマエの好みを押しつけるな!」とお叱りを受けるかもしれないが、僕が208のデザインをほめているのは単に自分の好みだからではない。まずフォルムが健全だ。横から眺めるとグラスエリアが大きめで、室内が広そうだな、明るそうだなという印象を伝えてくる。

それでいて、同じような印象を与えるホンダの「フィット」とは、見え方が全く違うのだ。フィットはミニバン的なフォルムだが、208はあくまで乗用車。それもかなりスポーティだ。これは、入念に調整されたピラーの位置や傾斜角、大きなタイヤ外径、フェンダー周りの巧みな造形によるもの。加えて、名車「205」へのオマージュをさまざまな部分に散りばめているのも心憎い演出だ。その上で、かぎ爪状のデイタイムランニングライトがモダンさを強調。3D表示のメーターも外観のイメージによくマッチしている。

そんな208は走りも好印象だ。“猫足”度はそれほど高くないが、低回転域からわき出る太いトルクと。プジョー車らしいニュートラルステア感の相性は抜群で、街中でもキビキビとしたドライブを楽しませてくれる。

■シトロエン「C5 エアクロス SUV」

このモデル最大の魅力は、乗り心地の良さだ。滑らかな路面はもちろん、荒れた路面でも空飛ぶ魔法のじゅうたんのような夢見心地の乗り心地を提供してくれる。

「滑らかな路面で乗り心地がいいのは当たり前」だって? いやいや、実はそうでもないのだ。そもそも完全に平滑な路面など存在しないし、実際の道路ではあり得ない平滑度を持つテストコースで試乗しても、クルマによってはブルブルした振動を伝えてくるケースが多い。ただし、荒れた路面のようなゴツゴツ感にはならないため、多くの人は「こんなもの」と思ってしまっているだけだ。

その点C5 エアクロス SUVは、フカフカとしたクッションを持つ出来のいいシートも相まって、平坦路でのブルブル感をほぼ完璧に抑え込んでいる。実際に乗ってみれば、自動車評論家がよく使う“フラットな乗り心地”という表現はこういうものだったのかと納得できるだろう。

正直、このレベルの乗り心地は、メルセデス・ベンツ「Sクラス」やアウディ「A8」、ロールスロイスといった超高級モデルでしか味わえない。それをたったの415万円で味わわせてくれるC5 エアクロス SUVは、間違いなく世界一のコスト・パフォーマンスならぬ、コスト・コンフォート性能の持ち主だ。

■「DS 3 クロスバック」

DSオートモビルは、シトロエンから独立したプレミアムブランドだ。ファッションでは多くのハイブランドが存在するフランスだが、なぜかクルマではプレミアム領域へ参入するのを頑なに避けてきた。フランス大統領の歴代公用車が、プジョー「607」やシトロエン「C6」といった、それほど高級に見えないフランス製セダンだったのは、それにふさわしいクルマをフランスの自動車メーカーが作っていなかったからだ。

そんな状況の中、2014年に誕生したDSブランドは、フランス流のプレミアムを前面に押し出している。とはいえその手法は、メルセデス・ベンツやロールスロイスとは全く違う。プジョーやシトロエンも使っている既存のプラットフォームを利用し、そこに“夜のパリ”をイメージした内外装を与えるというのがDS流プレミアムだ。この法則は最もコンパクトなDS 3 クロスバックにも使われている。

特に、一歩間違えれば下品になってしまうギリギリで寸止めしたインテリアなどは、ファッション上級者にしかちょっと理解できないであろう妖艶な雰囲気に満ちている。DS 3 クロスバックを見ていると、「これはちょっと街では着られないな」と思うような服をまとったモデルたちが、颯爽とランウェイを闊歩する様子が思い浮かぶ。

とはいえ、DSは決して見た目だけのプレミアムではない。DS 3 クロスバックのプラットフォームはプジョーの208と同一だが、ボディや足回りには追加の補強が施されるほか、遮音材も追加され、結果としてワンランク上質な乗り味を実現している。我こそはと思うファッション上級者には、ぜひともチャレンジしてもらいたいクルマだ。

■ルノー「ルーテシア」

2020年2月に常勝フォルクスワーゲン「ゴルフ」を抜き、ついにヨーロッパのベストセラーカーとなったルノーの新型「クリオ」(日本名・ルーテシア)。大胆な内外装デザインで存在感をアピールしてきたプジョーの208と比べると、新型ルーテシアのデザインは大人しい。先代オーナーは別として、普通の人が街で新型を見掛けても、新型であることに気づかないかもしれない。

この保守的なモデルチェンジの背景には、先代が大人気だったため「大きな変更は必要ない」との判断があったのだろう。しかしその結果、マーケットシェアを落としてしまったクルマは過去に多く存在する。新型ルーテシアもその轍を踏むのだろうか? 僕は心配していない。というのも、変わらないようでいて実は大きく変わっているからだ。

デザインテイストこそ共通しているが、灯火類のディテールは大幅にモダナイズされているし、ラインや面の質感もグンと向上しているからだ。遠目から見ると分かりづらいが、近寄って眺めれば車格がワンランク上がったかのような印象を持つだろう。

質感といえば、インテリアの向上ぶりも目覚ましい。ダッシュボードを始めとする大物パーツはほぼ100%ソフトパッド化され、コンパクトカーとは思えないほど立派に。エンジンもこのクラスの主流である3気筒ではなく4気筒を搭載し、余裕の走りを見せる。

聞くと、欧州でも大型車から小型車に乗り換えるダウンサイザーが増えていて、そういう人たちの取り込みに成功したことが販売好調の理由だという。これで236万9000円〜というのは、かなり買い得だ。

■アルピーヌ「A110」

フランス車とスポーツカー、あまりピンと来ない組み合わせかもしれないが、実はフランス人はイギリス人と並ぶモータースポーツ好きである。有名なところでは、毎年ル・マン24時間耐久レースを開催しているし、F1にもルノーが参戦中(2021年からはアルピーヌブランドとして参戦予定)。フォーミュラ・ルノーというF1への登竜門レースは長い歴史を持ち、一時期はF1ドライバーの約3分の1をフランス人が占めていた。そして何より、実際にフランスの道を走ってみると、運転が上手い人の多さに驚く。

そんな土壌から生み出されたのが、アルピーヌのA110だ。1960年代から’70年代にかけてラリーを中心に活躍した名車、A110の現代版として、2017年に登場した現行のA110は、駆動方式をかつてのRR(リアエンジン/リア駆動)からミッドシップへと変更。ミッドシップ化は前後重量配分を50:50に近づけて運動性能を高める目的のほか、エンジンをリアからミッドに移設することでボディ下部後端をディフューザー状に仕上げることが可能となり、デザインをスポイルする派手なスポイラーを設けることなく十分なダウンフォースを得ることにつながったという。

ドライブフィールは圧倒的に軽く、かつダイレクトだ。約1.1トンというウエイトはライバルのポルシェ「ケイマン」より300kg近く軽く、250馬力という現代のスポーツカーとしては控えめなパワーでありながら素晴らしくエキサイティングな運転体験をもたらす。

2シーターに割り切ったキャビンや、前後にある小さなラゲッジスペースなど、実用性は決して誉められたものではないが、過去の名車に最大限のリスペクトを払った美しいデザインと痛快な走りは、多くのスポーツカーファンを魅了している。

* * *

趣味は「愛車の壊れ自慢」といった、一部のカーマニアのためのクルマだったフランス車。しかし最近のモデルは、一般ユーザーでも無理なく付き合えるモデルが増え、かつ他の国のクルマにはない独自の個性を備えていることがお分かりいただけたのではないか。

ここに挙げた5台以外にも、プジョー「SUV 2008」やシトロエン「ベルランゴ」、ルノー「カングー」といった魅力的なモデルが出そろったフランス車は、2021年の注目株といえる。次期愛車候補として検討してみることをオススメしたい。

文/岡崎五朗

岡崎五朗|青山学院大学 理工学部に在学していた時から執筆活動を開始。鋭い分析力を活かし、多くの雑誌やWebサイトなどで活躍中。テレビ神奈川の自動車情報番組『クルマでいこう!』のMCとしてもお馴染みだ。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

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