高級車はこうでなくちゃ!レクサスの旗艦「LS」が原点回帰で極上の乗り味が復活
&GP / 2021年1月16日 19時0分
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高級車はこうでなくちゃ!レクサスの旗艦「LS」が原点回帰で極上の乗り味が復活
1989年に、北米市場での展開がスタートしたレクサス。その鮮やかなスタートダッシュを牽引したのが旗艦モデルである「LS」だ。
その後、乗り味の変化などでかつての名声に陰りが見えたこともあったが、2020年秋に登場した最新モデルは格段に実力を高めてきた。今回はそんな最新型LSを紹介する。
■高級車づくりの方向性を一変させた初代LS
いわずもがなだが、レクサスはトヨタ自動車が展開するプレミアムカーブランドだ。レクサスの各モデルはトヨタ車とは異なるチームが開発を担当し、レクサス独自のディーラーで販売される。
差別化を図る狙いは、従来のトヨタ車では満足できなかった顧客の心をつかみ、メルセデス・ベンツやBMW、そしてアウディといったドイツのプレミアム御三家にチャレンジすること。そのためレクサスは、ドイツのプレミアムブランドに準じる品質や安全性、そして走行性能を備えつつ、日本車が得意としてきた優れた信頼性や経済性までをフォローする新たなプレミアムカーブランドを目指してきた。
日本市場には2005年から導入されたレクサスだが、北米ではひと足早く1989年から販売がスタート。フラッグシップセダンとして展開した「LS」(日本名はトヨタ「セルシオ」)はデブビュー直後から現地で大ヒットを記録する。その北米マーケットでの成功から、レクサスのサクセスストーリーは始まったのだ。
初代LS
それまでの日本車は、安くて信頼性のあるクルマとして高い評価を受けていたが、決して人々に憧れを抱かれるような存在ではなかった。しかしLSは、そうした日本車のイメージを完全に過去のものとしたのである。
初代LSのどこが評価されたのか? それは圧倒的なまでの快適性だった。キャデラックやリンカーンといったアメリカの高級車ブランドや、北米でも憧れの対象となっていたドイツ・プレミアムブランドの上級セダンは、当時、振動や乗り心地の対策がまだまだ徹底されていなかった。しかし初代LSは、高級車ユーザーは快適性を求めていると判断し、振動や乗り心地、加えて信頼性を徹底的に磨き上げたのだ。
その象徴ともいえるのが、アメリカで流れた初代LSのテレビCMだ。なんと、ボンネットの上にシャンパンタワーを設置し、そのままエンジンを始動させてもタワーが崩れない様子を流したのである。このテレビCMは人々の間で大きな話題となり、レクサスは新規ブランドでありながら一気に注目を集める存在に。もちろん、LSを始めとするレクサス車も“本物”だと認められ、大きな支持を得たのである。
しかし、ユーザーに高級車として認められたことは、初代LSのスゴさを物語るエピソードのほんの一端に過ぎない。なぜなら本当に衝撃を受けたのは、ライバルの自動車メーカーだったからである。レクサスが極上の快適性を実現したこと、そして、そのことをユーザーが高く評価したことに驚いた彼らは、以降、それまで二の次としていた快適性の向上に本腰を入れるようになる。そうして世界の高級車づくりの方向性をガラリと変えたことが、初代LSの何よりのスゴさだといえるだろう。
■サスペンションの味つけをすべてやり直した
初代LSが北米マーケットに導入されて、すでに30年以上の歳月が流れた。現在、販売されているLSは、2017年10月にフルモデルチェンジを果たした5代目に当たる。(日本市場向けは2代目)。
現行LSに搭載されるエンジンは、全グレードとも3.5リッターのV6。ツインターボで過給されたガソリンエンジンを積む「LS500」と、自然吸気エンジンにモーターを加えたハイブリッド仕様「LS500h」が用意される。そんな現行LSも、デビューから3年以上が経過。先頃、2020年秋にマイナーチェンジを受けた最新モデルに試乗する機会を得たので、今回はその印象をお伝えしたい。
まず最新モデルは、若干ではあるがエクステリアデザインに手が加えられている。フロントバンパーは左右の開口部が四角くなり、角の部分にキャラクターラインが加わったことでシャープな印象が強まっている。
また、ヘッドライトの形状やリアコンビネーションランプのモール類も変更が加えられた。とはいえ、見た目で分かる従来型との違いはごくわずか。パッと見ただけでは従来型の違いが分からないほどだ。
一方、メカニズムの方はかなり改良されている。パワートレーン系では、V6ターボエンジンのトルクの立ち上がりを素早くしたり、AT制御の変更によって頻繁なダウンシフトを抑えたりと、細かな改良が施された。
一方、足回りの変更は規模が大きい。フロントサスペンションアームが鍛造アルミ製になった(後輪駆動車のみ)ことに始まり、新設計のショックアブソーバーの採用やスタビライザーの硬さの変更、さらには、新構造のランフラットタイヤの採用など、多岐に渡っている。
開発者いわく「サスペンションの味つけをすべてやり直した」というくらい、大規模な改良が行われているのである。
■原点回帰で乗り味の上質感が格段にアップ
そんな最新のLSに試乗して真っ先に感じたのは、原点回帰という言葉。何しろ、ほんのわずかな距離をドライブしただけで、乗り味の上質感がアップしていることをはっきりと感じ取れたのである。乗り心地が良化しているのはもちろんのこと、ガソリンターボの加速感もより滑らかになっていたのだ。
それらの改良によって、新型LSはリアシートに座った際の快適性も一段と向上している。実は、初代モデルは快適性の高さで支持を得たLSだが、その後、レクサスがエモーショナルな走行フィールを求めるようになっていったことから、特に現行モデルは操縦性重視した味つけに変化していた。しかし、少なくないショーファードリブン(主が後席に乗る使い方)のユーザーから「乗り心地が良くない」という声があったという。そこで最新モデルでは、主に足回りのセッティングに軌道修正が施されたというわけだ。
この最新のアップデートは、LSの真髄をあらためて見直すことで結実したものともいえる。レクサスの開発陣による「LSらしさとはどんなことか?」という自問自答の答えが注ぎ込まれているのである。今回、最新のLSをドライブし、筆者は“最新のLSこそ最良のLSだ”と実感した。
初代の誕生から30年以上の時を経て、今回、原点回帰を果たしたレクサスのフラッグシップセダン。その仕上がりは実に素晴らしいものだった。最新のLSは、従来の日本車が達することのできなかった領域に到達しているモデルだが、それを可能にしたのは、レクサス開発陣の志の高さではないだろうか。
<SPECIFICATIONS>
☆LS500 エグゼクティブ(2WD)
ボディサイズ:L5235×W1900×H1450mm
車重:2230kg
駆動方式:RWD
エンジン:3444cc V型6気筒 DOHC ターボ
ミッション:10速AT
最高出力:422馬力/6000回転
最大トルク:61.2kg-m/1600~4800回転
価格:1539万円
<SPECIFICATIONS>
☆LS500h Fスポーツ(2WD)
ボディサイズ:L5235×W1900×H1450mm
車重:2260kg
駆動方式:RWD
エンジン:3456cc V型6気筒 DOHC+モーター
トランスミッション:電気式無段変速機
エンジン最高出力:299馬力/6600回転
エンジン最大トルク:36.3kg-m/5100回転
モーター最高出力:180馬力
モーター最大トルク:30.6kgf-m
価格:1351万円
文/工藤貴宏
工藤貴宏|自動車専門誌の編集部員として活動後、フリーランスの自動車ライターとして独立。使い勝手やバイヤーズガイドを軸とする新車の紹介・解説を得意とし、『&GP』を始め、幅広いWebメディアや雑誌に寄稿している。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。
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