エンジンだけじゃなかった!目に見えぬ部分こそ改良型「マツダ3」の見どころです
&GP / 2021年2月7日 19時0分
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エンジンだけじゃなかった!目に見えぬ部分こそ改良型「マツダ3」の見どころです
なんとマニアックな! 2020年11月に実施された「マツダ3」の商品改良に関する資料を読んで驚いた。改良ポイントは多岐にわたるが、そのすべてが“細かい内容”だったのだ。
逆に考えれば、それはマツダのクルマづくりに対する真摯な姿勢の表れともいえる。重箱の隅を突くように進化の余地がある細かい箇所をしっかりとケアし、クルマの完成度を高めていこうと彼らは考えているのである。
■スカイアクティブDは加速の“伸び感”が向上
マツダ3の改良がマニアックだと感じたひとつ目のポイントは、バリエーションの追加だ。「100周年特別記念車 2020 ワールド・カー・デザイン・オブ・ザ・イヤー受賞記念モデル」という期間限定の特別仕様車に加えて、自然吸気ガソリンエンジン“スカイアクティブG”の2リッター版を搭載するファストバックにMT仕様が追加された。これによりマツダ3のファストバックは、1.5リッターと2リッターのスカイアクティブG、そして、2リッターの“特別”なガソリンエンジン“eスカイアクティブX”という3つのパワーユニットにおいてMTを選べるようになったのだ。
とはいえ、日本の新車販売におけるMT比率は2%ほどに過ぎない。はっきりいって今回のMT仕様追加は大きな販売増に結びつく可能性は低いが、「MT好きの人のために選択肢を用意したい」というマツダの心意気には敬意を表したい。日本の約98%のドライバーには関係のない、実にマニアックなバリエーション追加といえる。
続いてマニアックだなと驚いたのはパワーユニットの改良。今回はクリーンディーゼルターボの“スカイアクティブD”と、スカイアクティブXが変更を受けている(後者は名称もeスカイアクティブXに変更された)。
マツダ3が搭載するスカイアクティブDは1.8リッター仕様で、燃費が良く経済性に優れるのが特徴だ。
今回は新たに、
1:燃料噴射制御の最適化で高回転域まで力強さを持続
2:排出ガス再循環装置の綿密なコントロールなどによる応答性の向上
3:アクセルの操作に応じて素早く最適なギヤを選ぶAT制御
という3つの改良が施され、最高出力が14馬力アップしている。また、3000回転弱から4500回転にかけてのトルクがアップしたことで、加速の“伸び”がドライバーの感覚とよりマッチするようになったのも見逃せない進化。
今回、試乗したのはセダンだったが、アクセル操作に対する反応が良くなったことで、運転時のダイレクト感も増しているのを実感できた。
■eスカイアクティブXは従来型の更新にも対応
マツダ3に搭載されるeスカイアクティブXは、“火花点火制御圧縮着火”という特殊な燃焼方式を採用する“特別”なガソリンエンジンだ。スパークプラグの火花でガソリンと空気の混合気に直接点火する一般的なガソリンエンジンとは異なり、条件がそろえば燃焼室の圧力を高めて高温状態にし、シリンダー内で混合気を自然着火させる仕組みとなる。
量産車ではマツダが世界で初めて採用した技術であり、ディーゼルエンジンのような低回転域でのトルク感と、ガソリンエンジンのような高回転域での伸びを両立させながら、燃費にも優れるというメリットを持つ。
今回の商品改良では、
1:燃焼制御の精度を高めることによる応答性の向上
2:トルクと出力の向上
3:エンジンとAT制御の最適化
という3つのブラッシュアップによってエンジンの力強さと伸び感をさらに引き出し、気持ち良くドライブできるよう変更されたという。
結果、10馬力のパワーアップと1.6kgf-mのトルク向上を果たしているが、正直なところ、街中でのドライブでは従来モデルとの差を感じとるのは難しかった。フィーリングに関しても「いわれてみれば、ちょっと違うかな?」といった程度の違いしかなかったのだ。
事実、パワーアップ分は全体の5%にも満たないし、フィーリングも劇的に進化しているわけではないため、よほど感覚の研ぎ澄まされたドライバーでなければ違いを明確に感じとることは難しいだろう。逆にいえば、細かな違いでもしっかりと手を加え「少しでも完成度を高めたい」というマツダの真摯な姿勢、エンジニアの意地のようなものを感じた。
ちなみに、eスカイアクティブXへの改良は、メカニズムの変更はなく制御プログラムだけが更新された、いわば“熟成”だ。そのためマツダは、従来型スカイアクティブX搭載車のバージョンアップにも対応すべく準備を進めている。希望するユーザーには、すでに手元にある従来モデルのエンジンとATの制御を無償でバージョンアップし、最新スペックにしてくれるという。これは業界にとっても新たなトライといえるだろう(準備ができ次第、ユーザーには案内が届くという)。
■走りの楽しさを求めてGVCなどもアップデート
改良型マツダ3は、目に見えない部分にもマニアックな改良が施されている。
例えば足回りは、すべてのグレードにおいてスプリングやショックアブソーバーの特性を改良。サスペンション全体をより滑らかに動かす方向へとセッティングを改めることで、路面から伝わる振動を抑制してフットワークと乗り心地のバランスを高めている。従来モデルの乗り心地は硬い印象で、舗装の状態が悪い路面では車体が揺すられる感覚が強かったが、改良型ではそれがかなり改善されている。
またマニアックな改良として挙げておきたいのが、eスカイアクティブX搭載車に組み込まれているエアシャッターの制御変更だ。
エアシャッターとは、フロントグリル内にある開口部を開け閉めし、空気の流れを変える電気式のシャッターのこと。空気抵抗の軽減を目的に閉じた状態を基本とし、ラジエターなどの放熱が必要な時にはシャッターを開けて風を取り込むなど、状況に応じて細かく制御されている。
今回の改良では、シャッターの開閉に伴う車両の挙動変化に着目。例えば、高い速度域からのブレーキング時にシャッターを開くことで、車体前部が沈むのを抑え、急減速時の姿勢を安定させたという。
またマツダ3には、ハンドルを切った際にエンジン出力をドライバーが気づかないレベルで制御し、ハンドリングを向上させる“GVC(Gベクタリングコントロール)”が搭載されているが、これをエアシャッターと協調制御。高速域でシャッターが開いた際、フロントリフトによるハンドリングの悪化(車体前部が浮くことで、ハンドルを操作した際の反応が鈍くなる)を防ぐべく、ハンドルを切る際にはシャッターの開閉に連動し、GVCの効きが変わるよう改良させている。
これにより、以前はある速度域において、シャッターの開閉によって前輪の接地荷重が5%ほど変化していたというが、改良型はGVCによる補正でエアシャッターによるハンドリングへの悪影響をキャンセルし、どんな状況でも統一されたフィーリングを実現したという。これもまた実にマニアックな改良だ。
さらに、eスカイアクティブX・AT仕様では、ドライブモードで「スポーツモード」を選ぶと、従来のエンジン&ATの制御変更に加え、GVCの効きも切り替わるようになった。スポーツモード時はGVCの効きがより強くなり、ハンドル操作に対してダイレクトにクルマが反応。その違いは「数%ほど」というが、オーナーになったらどこまで違いを体感できるのか、試してみるのも楽しいだろう。
楽しいといえば、eスカイアクティブX・4WD仕様のセッティング変更も見逃せない。“i-ACTIV(アイ・アクティブ) AWD”と呼ばれるマツダの4WDシステムはこれまで安定性重視の味つけだったが、改良型では旋回中にドライバーがアクセルペダルを深く踏み込むとクルマが「ドライバーがドライビングを楽しんでいる」と判断。後輪へのトルク配分量を増やすことで“より曲がる4WD”へと進化している。腕に覚えのあるドライバーなら、アクセルオンによるテールスライドなどアグレッシブな走りを楽しめることだろう。
このように今回の商品改良は、目に見えない部分に至るまで、実にマニアックなものばかり。大きなパワーアップや見た目の激変(従来モデルとの違いは、eスカイアクティブX搭載車のフロントフェンダーにエンブレムが加わったのみ)はないものの、運転を楽しむドライバーに寄り添った内容となっている。ドライビングの楽しさや喜びを伝えたいという開発陣の心意気が、マツダ3の完成度をまた一歩高めた。
<SPECIFICATIONS>
☆ファストバック X バーガンディセレクション(2WD/6MT)
ボディサイズ:L4460×W1795×H1440mm
車重:1420kg
駆動方式:FWD
エンジン:1997cc 直列4気筒 DOHC
トランスミッション:6速MT
エンジン最高出力:190馬力/6000回転
エンジン最大トルク:24.5kgf-m/4500回転
モーター最高出力:6.5馬力/1000回転
モーター最大トルク:6.2kgf-m/100回転
価格:345万1963円
<SPECIFICATIONS>
☆セダン XD プロアクティブ ツーリング セレクション(4WD/6AT)
ボディサイズ:L4660×W1795×H1445mm
車重:1460kg
駆動方式:4WD
エンジン:1756cc 直列4気筒 DOHC ディーゼル ターボ
トランスミッション:6速AT
最高出力:130馬力/4000回転
最大トルク:27.5kgf-m/1600〜2600回転
価格:314万8241円
文/工藤貴宏
工藤貴宏|自動車専門誌の編集部員として活動後、フリーランスの自動車ライターとして独立。使い勝手やバイヤーズガイドを軸とする新車の紹介・解説を得意とし、『&GP』を始め、幅広いWebメディアや雑誌に寄稿している。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。
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