SUVルックのアウディ「A1シティカーバー」はワイルドで走りもいい個性派です
&GP / 2021年2月15日 19時0分
SUVルックのアウディ「A1シティカーバー」はワイルドで走りもいい個性派です
2020年秋にアウディ ジャパンが日本市場への導入を発表した「A1シティカーバー」が、先頃上陸しました。
SUV風のルックスに仕立てられた上質なコンパクトハッチバックの実力を、市街地や高速道路でチェックします。
■205mmのロードクリアランスを確保
世界的なSUVブームを受け、『&GP』で紹介する新車情報もSUV関連のネタが増えています。今回、紹介するA1シティカーバーも、コンパクトな5ドアハッチバック「A1スポーツバック」をベースに、SUV風のルックスに仕立てたクロスオーバーモデル。スマートな印象のA1スポーツバックに対し、オフロードテイストで力強さをプラスしています。
実は欧州車メーカーは、以前よりこの手の商品企画を得意としています。フォルクスワーゲン「クロスポロ」やシトロエン「C3」など、SUVテイストでライバルとの差別化を図った、ほかとはひと味違うコンパクトカーが人気を博してきました。そしてアウディも、今回、タフなイメージをプラスしたA1シティカーバーで、ラグジュアリースモールカーの新たな姿を提案しています。
ベースとなる現行のA1スポーツバックは、2019年に日本へ上陸したプレミアムコンパクトハッチバック。全長4m強というコンパクトサイズながら、先代モデルよりホイールベースを95mm延長することで居住空間を拡大。さらに“バーチャルコックピット”を始めとするアウディの最新デジタル技術と、高度な運転支援システムを兼備し、ここ日本でも高い支持を集めています。
その派生車であるA1シティカーバーでまず注目したいのは、力強いエクステリアデザイン。アウディのSUVである「Q」シリーズと共通の、オクタゴン(八角形)のシングルフレームグリル(セダンやハッチバックは六角形)を筆頭に、アンダーガード風のパーツが装着された専用バンパーや、光沢あるブラックに塗られたホイールアーチなどでSUVのような力強さをアピールします。
そうした雰囲気を一段と強調するのが、大幅に拡大されたロードクリアランス。最低地上高はA1スポーツバック比で約40mm高い205mmとなり、17インチと大径のタイヤ&ホイールと相まって、精悍な雰囲気を放っています。
A1シティカーバーと同様、5ドアハッチバックの車高を上げてSUVルックに仕立て、悪路走破性の高さでも定評のあるスバル「XV」の最低地上高が200mmということを考えれば、205mmというのは十分な値といえるでしょう。A1シティカーバーはFWD(前輪駆動)のみの設定ですが、わだちの大きい悪路や雪道を走る機会も多いレジャードライブでも大いに活躍してくれそうです。
そんなA1シティカーバーに搭載されるエンジンは、最高出力116馬力、最大トルク20.4kgf-mを発生する1リッター3気筒直噴ターボで、7速のデュアルクラッチ式トランスミッション“Sトロニック”と組み合わされます。
日本仕様のA1スポーツバックにも、1リッター(999cc)の3気筒直噴ターボ(95馬力/17.8kgf-m)を搭載する「25 TFSI」シリーズが設定されていますが、A1シティカーバーのエンジンはそれとは別物。30〜40kgアップした車重を考慮してか、ハイパワー仕様がおごられています。
■高速走行時の直進安定性がハイレベル
今回試乗したA1シティカーバーは、ファーストエディションともいうべき限定仕様の「リミテッドエディション」。3色ラインナップされるボディカラーのうち、パイソンイエローメタリックに塗られた個体でした(他の2色はミサノレッドパールエフェクトとアローグレーパールエフェクト)。
ドアを開けてコックピットに収まると、目の前にはベース車であるA1スポーツバックと同じ景色が広がります。約40mmのロードクリアランス拡大により、地面からヒップポイントまでの距離は高くなっているものの、フツーのハッチバックから乗り換えても違和感のない視界とドライビングポジションを得られます。
試乗車であるファーストエディションには、“ナビゲーションパッケージ”を標準装備。そのため正面のメーターパネルは、ナビゲーションを始めとする多彩な情報を映し出せる“バーチャルコックピット”となっていて、コックピット中央には、操作性に優れたタッチパネル式のインフォテンメントシステムも備わります。その高い先進性により、走り出す前から思わずワクワクさせられます。
インテリア各部に使われる樹脂パーツ類は、ひと昔前のアウディ車と比べると確かに少々見劣りするものの、その質感は依然としてコンパクトカーとしては最上級レベル。同クラスの他車よりも“いいモノ感”を味わえます。
キャビンはコンパクトカークラスとしては十分広く、特にリアシートは広々しているとはいえないものの、並みのライバルを上回るスペースが確保されています。また、サイドサポートがしっかりしたフロントシートは、乗員のカラダをしっかりと保持してくれるので、ロングドライブ時も快適に移動できそうです。
では早速、試乗と参りましょう。SトロニックをDレンジへ入れ、街へと繰り出します。100mほど走ってまず感じたのは「結構、乗り心地が硬めだな」というもの。とはいえこれは、試乗車が700kmほどしか走っていない、下ろしたての新車だったことが原因のようです。その証拠に、走行距離を重ねるに連れ、徐々にフラットでしなやかな乗り味が顔を見せるようになりました。マイレージを重ねた個体であれば、乗り心地に関する印象はより好転するものと思われます。
一方、ロードクリアランスが約40mmアップした悪影響は、全くといっていいほど感じられません。高速道路の曲がりくねったジャンクションを走る時でも、車体の姿勢は終始安定。また、高速道路をハイスピードで走行中にレーンチェンジを行っても、車体がグラッと大きく傾き、不安を覚えるといったことはありませんでした。
逆に、高速走行時の直進安定性が上々で、ハンドルを軽く握っているだけで真っ直ぐ走ってくれるのは好印象。SUVルックではあるものの、A1スポーツバックを始めとするコンパクトハッチバックと同じ感覚でドライブを楽しめます。
■up!GTIと同じ“DKR”型エンジンを搭載
A1シティカーバーに搭載される1リッターの直列3気筒直噴ターボエンジンは、日本仕様の現行A1スポーツバックには設定のない、本国仕様の「30 TFSI」と同じスペック。2000回転も回っていれば十分力強く、Sトロニックならではのシフトチェンジの小気味良さと相まって、流れをリードするだけの加速を瞬時に得られますし、高速道路におけるハイスピード巡航もラクにこなしてくれます。
そうした動力性能以上に好印象だったのが、エンジンの音と回転フィール。3気筒エンジンならではの低いビートを響かせながら高回転域までスムーズに回り、とても気持ち良くドライブできたのです。
「この音と回転フィール、以前、どこかで味わったことがあるな」と思っていたら、実は同じグループに属すフォルクスワーゲンのホットハッチ「up!GTI」と同じエンジンでした。
もちろんA1シティカーバーは、遮音性に優れるせいかup!GTIよりも車内が静かですし、車重がup!GTIより210kg重いこともあって加速はよりマイルドです。とはいえ、運転していてどこかワクワクさせられるのは、up!GTIに通じる魅力。ホットハッチ譲りの強心臓により、SUVルックからは想像もつかない爽快なドライビングプレジャーを味わえます。
イマドキのワイルドなSUVルックに、快適で上質なキャビンとホットハッチ譲りの走りを兼備したA1シティカーバー。中でも、今回試乗したリミテッドエディションは、先述したナビゲーションパッケージに加え、スポーティな仕立てとなる“Sラインインテリアプラスパッケージ”や、シートヒーターを始めとする“コンビニエンスパッケージ”、運転支援システムをまとめた“アシスタンスパッケージ”などフル装備状態だけに、ラグジュアリースモールカーの個性派として注目を集めそうです(その分、価格は少々お高めですが)。限定数は250台なので、気になる方はどうぞお早めに。
<SPECIFICATIONS>
☆リミテッドエディション
ボディサイズ:L4050×W1755×H1485mm
車重:1210kg
駆動方式:FWD
エンジン:999cc 直列3気筒 DOHC ターボ
トランスミッション:7速AT(デュアルクラッチ式)
最高出力:116馬力/5000〜5500回転
最大トルク:20.4kgf-m/2000〜3500回転
価格:483万円
文/上村浩紀
上村浩紀|『&GP』『GoodsPress』の元編集長。雑誌やWebメディアのプロデュース、各種コンテンツの編集・執筆を担当。注目するテーマは、クルマやデジタルギアといったモノから、スポーツや教育現場の話題まで多岐に渡る。コンテンツ制作会社「アップ・ヴィレッジ」代表。
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