黒の下地塗装がリアルな金属感を生み出す【達人のプラモ術】
&GP / 2021年4月17日 21時0分
黒の下地塗装がリアルな金属感を生み出す【達人のプラモ術】
【達人のプラモ術:かっこいいファントムを作る_03】
プロモデラー長谷川迷人による【達人のプラモ術】。前回の記事(>> エアブラシと筆塗りの“ハイブリット塗装”で迷彩の自然な塗り分けを再現!【達人のプラモ術】 )で完成した、「アメリカ空軍 F-4E戦闘機(前期型)“ベトナム・ウォー”」の東南アジア(SEA)迷彩。今回は、よりリアルなファントムに仕上げるため、ジェットノズルと尾翼に金属風塗装を施していきます! それでは「金属塗装編」をどうぞ!
* * *
F-4ファントムは、今回のベトナム迷彩をはじめ、派手なマーキングが映える海軍のハイビジ塗装(軍用機の塗装)などで模型映えする機体です。ですが、プラモの魅力をより引き立たせるポイントがいくつかあります。中でも水平尾翼から下側エンジンノズル周囲は、高温となるジェットエンジンの排気に晒されるため、チタン合金などが使われた無塗装の金属地肌がむき出しになっていて、これがファントムの大きな特徴になっています。このナチュラルメタル(無塗装の金属)の質感を塗装でリアルに再現することで、ファントムのカッコよさをより強調できます。
長谷川迷人|東京都出身。モーターサイクル専門誌や一般趣味雑誌、模型誌の編集者を経て、模型製作のプロフェッショナルへ。プラモデル製作講座の講師を務めるほか、雑誌やメディア向けの作例製作や原稿執筆を手がける。趣味はバイクとプラモデル作りという根っからの模型人。YouTubeでは「プラモ作りは見てナンボです!@Modelart_MOVIE」も配信中
■塗装で金属の質感を再現するには?
▲インスト(説明書)ではMr.カラーのより、細かく塗装指示がされているので、指示に沿って個々のパーツを金属色で塗装していく
プラモデル用塗料でもシルバーをはじめガンメタルなど金属の質感をリアルに再現できるメタル系のカラーは多数発売されています。キットでは、機体後部パーツと水平尾翼がMr.カラー61番「焼鉄色」、ジェットノズルが28番「黒鉄色」での塗装が指定されています。もちろんそのままでもいいのですが、よりリアルな金属感を出すためひと工夫していきます。
▲Mr.カラーは金属色も多数揃っており、リアルな金属感を再現できます。エアブラシでは最低でも専用溶剤(ラッカー用薄め液)で1:1まで希釈して使用します
POINT1:金属感を出すためのコツは下地塗装にあり!
航空機に使われているアルミ、ジュラルミン、チタンといった金属の質感をエアブラシ塗装でリアルに仕上げるには、平滑な下地塗装が重要なポイントになります。
▲サンプルの右側が下地に「ツヤありの黒」を塗装してからシルバーを塗り重ねたもの。左側は敢えて「つや消し黒」を下地に塗装した上からシルバーを塗ったもの。光沢の違いがよく分かる
基本的には「平滑な黒」「ツヤあり黒」を下地に塗装することで、メタルカラー系の塗料に含まれている金属微粒子の向きが揃って光を反射し、金属感をより強調できます。逆に、下地が平滑でない(ザラついている)と、金属的な反射が抑えられるため鋳造、鍛造のようなマットな質感となります。
▲水平尾翼の付け根側両面とエンジン部分の上半分を塗装していく
そこで作例では、金属色となるパーツを「ツヤあり黒」で下地塗装を行い、指定されている焼鉄色とシルバーをエアブラシで塗り重ねることで金属感を強調しています。
▲シルバーを乾燥させたのち、マスキングをして焼鉄色をエアブラシで塗装していく
筆塗りの場合は、下地の黒が溶け出してしまうため同じラッカー系塗料を塗り重ねることができません。そこで、下地はラッカー系の黒を塗装し、重ねる金属色は水性アクリル系塗料を使います。
▼塗装前
▲金属色で塗装するパーツ。本キットはエンジン回りのパーツが塗装を考慮して分割されているので、楽に塗装できます
▼下地黒塗装後
▲金属感をより強調するため、ツヤありの黒で下塗りを済ませたパーツ
▼塗装完了後
▲焼鉄色、シルバー、黒鉄色で塗装を仕上げた状態
POINT2:リアルタッチマーカーで金属感を強調
▲使用するのは「リアルタッチイエロー1」と「リアルタッチグレー2」の2色。「ぼかしぺン」(一番下)は、マーカーで描いた線にぼかし(グラデーション)表現を施したり、消しゴムのように使ったりできる
塗装のみでもリアルな金属表現を得られますが、作例では、リアルタッチマーカーを使うことで、焼けた金属感をさらに強調させています。リアルタッチマーカーは水性なので下地の塗装を侵すことがありません。
▲「リアルタッチイエロー1」を焼鉄色で塗装した部分に塗り重ねて高温で焼けた金属感を表現
金属色のエアブラシ塗装のあと「リアルタッチイエロー1」をモールドに沿って色を塗り重ね、乾かないうちに綿棒を使い塗り広げていくいことで、よりリアルな焼けた金属感を表現できます。シルバーで塗装した部分は、「リアルタッチグレー2」で同様に塗装(凹部分にグレーが入り込むことで、ディテールをより強調)していきます。
▲パーツ左側が焼鉄色のみの状態。右側が「リアルタッチイエロー1」を使いグラデーションを入れて仕上げた状態。
▲シルバーで塗装したあと、「リアルタッチグレー2」でスミ入れを施し、仕上がったパーツ
■ジェットノズルの焼け跡をリアルに再現
インスト(説明書)の塗装指定ではジェットノズルは黒鉄色の指定がされていますが、ノズルの内側とエンジンダクト内側は、ジェット排気の高温に晒されるため、白く焼けています。そこで、黒鉄色の上からつや消しライトグレーをオーバーペイントすることで、リアルな質感が再現できます。
▲黒鉄色で塗装したエンジンダクト内側とノズル内側をつや消しのライトグレーで塗装。排気熱で焼けた質感を再現
POINT3:半ツヤクリアーでオーバーコート仕上げ
リアルタッチマーカーは定着力があまり強くないため、塗装後に強くこすられると落ちてしまう場合があります。そこで、機体の仕上げに使用する「半つやクリアー」を軽くオーバーコート塗装(上塗り)することで剥離を防ぎます。また、実機のファントムを見るとエンジンまわりの無塗装部分はギラギラ感は強くありません(機体にもよりますが)。なので、模型的には「半つやクリアー」で金属塗装の光沢を抑えて仕上げるのが良いでしょう。
▲仕上げのオーバーコート塗装に使用したタミヤカラーの「X-35 セミグロスクリアー(水性カラー)」。ラッカー系の「LP-24 セミグロスクリアー」もあるが、エンジン回りに塗装した焼鉄色など金属色の塗装面を侵す場合がある
■いよいよ完成間近!
「機体製作編」「迷彩塗装編」「金属塗装編」と順番にきて、いよいよファントムの完成が近づいています。次回は【かっこいいファントムを作る】の最終回として、最後のキャノピー塗装、外部武装の取り付け、仕上げとなるデカール貼りを行っていきます。もう間もなく「F-4ファントムII」が完成します!
【迷人流!金属塗装のポイント】
ファントムのような現用機では、アルミやスチール、さらにはチタンといったさまざまな金属製品が使われています。こういった金属の質感の違いを塗装でいかに再現していくかが、リアルな仕上がりに繋がるのです。 金属の質感を再現できるメタルカラーを使うのはもちろんですが、塗料の金属感をより活かすためには、ブラックでの下地塗装が欠かせません。またリアルタッチマーカーによる焼けた質感の再現など、さまざまなテクスチャーを組み合わせることでリアルな金属感が再現できます。ぜひチャレンジしてみて下さい。
>> 次回【総仕上げ編】(4月24日公開予定)
>> 達人のプラモ術
<写真・文/長谷川迷人>
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