「ディフェンダー」人気が加速しそう!新顔のショートボディ&ディーゼルも魅力満点
&GP / 2021年8月9日 7時0分
「ディフェンダー」人気が加速しそう!新顔のショートボディ&ディーゼルも魅力満点
ランドローバーのヘビーデューティSUV「ディフェンダー」に、ふたつの新顔が加わった。ひとつは2ドアショートボディの「90」。そしてもうひとつは、5ドアロングボディの「110」に設定されたディーゼルハイブリッド仕様だ。
いずれも目を見張る出来の良さ。プレーンなルックスに卓越した悪路走破性で人気のディフェンダーだが、バリエーションが広がったことでますます人気がアップしそうだ。
■悪路走破性と個性的なルックスは初代ゆずり
71年ぶりのフルモデルチェンジが話題を呼んだイギリス・ランドローバーのディフェンダー。新型は日本でも人気が過熱しているが、実は世界各地とも同じ状況になっている。工場には世界各国から多数のオーダーが集まり、生産枠の争奪戦が繰り広げられている。
先のフルモデルチェンジをおさらいすると、新型ディフェンダーとなって変わったのはすべてのメカニズムだ。ボディはラダーフレームからモノコックとなり、エンジンは従来モデルの最終世代が古いフォード製(しかも、かなり非力)だったのに対して新型はジャガー&ランドローバーの最新世代へと刷新。その結果、動力性能や快適性、オンロードでの操縦性が大幅にアップした。
従来モデルは基本に忠実でシンプルな、いわば古典的オフローダーだった。一方で新型は、電子デバイスを多数投入したイマドキのSUVに仕上がっている。従来モデルのファンからすれば、持ち味だった無骨さが失われたことなど納得いかない部分もあるだろうが、時代に合わせた進化を遂げたといえるのは間違いない。
その一方、新型になっても変わらないものもある。まずはランドローバー車の頂点に立つ卓越したオフロード走破性だ。これはディフェンダーの魂として新型がこだわり抜いた部分であり、いかに快適性や舗装路での操縦性がアップしても、これをおろそかにしてしまったらディフェンダーではなくなってしまうから当然といえば当然だ。
最低地上高291mm、最大渡河水深900mm、そして最大登坂能力45度といったオフロード性能に関する数値を並べてみても、その能力が突出していることがよく分かる。
もうひとつ変わらないものはデザインだ。新型は初代とは全く異なるモダンな意匠ではあるものの、ひと目でディフェンダーだと分かる個性を受け継いでいる。そのデザイン力はさすがであり、それが新型の爆発的な人気の大きな要因となっている。
■軽さと短いホイールベースで走りが軽快な90
そんなディフェンダーに、先頃ふたつの“新種”が加わった。
まずは90と呼ばれる3ドアのショートボディだ。エンジンは「P300」と呼ばれる2リッター4気筒ガソリンターボだけの設定となる。先行して上陸していた5ドアロングボディの110は、全長4945mm(スペアタイヤを除く)だったのに対し、90は4510mmと435mmも短いのも特徴だ。
この全長短縮におけるポイントは、ホイールベースも同じだけ短縮されていること。これにより、オフロード走破力の指標となる“ランプブレークオーバーアングル”が110の最大24.8度から90では31.0度へと引き上げられて、さらなる悪路走破性の向上につなげている(アプローチアングルとデパーチャーアングルは変わらない)。
また90は、交差点を曲がるだけでも分かるほど、コーナリングフィールが110よりキビキビと軽快になっている。その理由はふたつある。ひとつは、435mm短縮されたホイールベースだ。さすがに50cm弱もホイールベースが短くなれば走行時の挙動はクイックになり、曲がり角をひとつ曲がるだけでも違いがすぐに分かる。
もうひとつの理由は車両重量。エアサスペンションを搭載する「P300」どうしで比べてみると、110は2420kgもあるのに対し、90は2100kgと320kgも軽く仕上がっている。これは大人5人分に相当する重さだ。SUVでも軽快なコーナリングフィールを好む人にとって90は相当魅力的だ。
■後席の居住性は十分ながら荷室は狭い
対して、90で気になるのはキャビンの居住性だろう。当然のことながら、全長が短くなった分だけ室内、特にリアシートと荷室のスペースが狭くなっている。それはオーナーのクルマの使い方次第では、見過ごせないポイントとなるだろう。
とはいえ、リアシートは著しく狭いのだろうと想像していたら、案外そうではなかった。その秘密は、シートの取り付け位置にある。90はホイールベースが短縮された分だけリアシートの位置を前方へズラし、足下空間を狭くするのではなく、リアタイヤに対するリアシートの位置を後ろ寄りにすることで、普通に座れるだけの足下スペースを確保。カタログスペックを見ると、110の3列シート車に対して前後シートの間隔は46mm短くなっているが、実際に座ってみると大人が十分くつろげる居住性が保たれている。
ただし、90のラゲッジスペースは狭い。荷室の奥行き(2列目シートの後端からリアゲートまでの距離)は、110の3列シート車が900mmを確保しているのに対し、90は460mmと約半分にとどまっている。リアシートに人を載せた状態で荷物も多く積みたいというニーズには応えられそうにない。
その一方、90でも後席の背もたれを倒せば荷室長が1313mm(110の3列シート車は1879mm)まで拡大するので、ふたりでのキャンプやウインタースポーツには活躍しそうだ。
また90は、左右のドアが1枚ずつしかないため、リアシートへのアクセスはかなりタイトだ。つまり、リアシートを頻繁に使う人には向かないパッケージングであり、普段からリアシートを使う人は素直に110を選んだ方がいいだろう。
しかし90は、SUVとは思えないほど軽快な動きが美点であり、極限の悪路走破性を求める向きにも魅力的な選択肢となるだろう。
■ディーゼルとは思えないほど走りが上質な新エンジン
ディフェンダーにまつわるもうひとつのトピックは、「D300」と呼ばれるパワートレーンを積んだ110が、ついに日本に上陸したこと。
新パワートレーンの特徴は、なんといっても、核となる3リッター直列6気筒ディーゼルターボエンジン。そこに48Vのベルト駆動型スタータージェネレーターを組み合わせたマイルドハイブリッド仕様としている。
試乗して驚いたのは、パワートレーンの上質さだ。音や振動がしっかりと抑え込まれていて、目隠しした状態で乗せられたらガソリンエンジンなのかディーゼルエンジンなのか、いい当てる自信がないほど。最高出力は従来からある2リッター直列4気筒ターボと同じ300馬力で、最大トルクは2リッターターボの1.5倍超となる66.3kgf-mをわずか1500回転で発生するからとにかく力強い。おまけに、4750回転からとなるレッドゾーンまで軽快に吹け上がるなど、フィーリングも素晴らしい。
車両価格は「S」グレードどうしの比較で2リッターのガソリン仕様より60万円ほど高いが、筆者なら迷うことなくディーゼル仕様を選ぶ。ランニングコストで車両価格の差を埋めるのは不可能に近いものの、使用燃料がハイオクガソリンより2割ほど安い軽油というのも、ユーザーにとってはうれしい美点といえるだろう。
新しいボディラインナップとパワートレーンを手に入れたディフェンダー。抜群の悪路走破性と肩ヒジ張ることなく親しみやすいルックスと相まって、その人気はますます加速しそうだ。
<SPECIFICATIONS>
☆90 S P300
ボディサイズ:L4510×W1995×H1970mm
車重:2100kg
駆動方式:4WD
エンジン:1997cc 直列4気筒 DOHC ターボ
トランスミッション:8速AT
最高出力:300馬力/5500回転
最大トルク:40.8kgf-m/2000回転
価格:632万円
<SPECIFICATIONS>
☆110 X D300
ボディサイズ:L4945×W1995×H1970mm
車重:2420kg
駆動方式:4WD
エンジン:2993cc 直列6気筒 DOHC ディーゼル ターボ+モーター
トランスミッション:8速AT
エンジン最高出力:300馬力/4000回転
エンジン最大トルク:66.3kgf-m/1500〜2500回転
モーター最高出力:24.5馬力/1万回転
モーター最大トルク:5.6kgf-m)/1500回転
価格:1171万円
文/工藤貴宏
工藤貴宏|自動車専門誌の編集部員として活動後、フリーランスの自動車ライターとして独立。使い勝手やバイヤーズガイドを軸とする新車の紹介・解説を得意とし、『&GP』を始め、幅広いWebメディアや雑誌に寄稿している。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。
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