トヨタ「カローラクロス」はココがスゴい!広いキャビンと秀逸な走り味は小型SUVの新基準
&GP / 2021年10月26日 7時0分
![トヨタ「カローラクロス」はココがスゴい!広いキャビンと秀逸な走り味は小型SUVの新基準](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/goodspress/goodspress_407852_0-small.jpg)
トヨタ「カローラクロス」はココがスゴい!広いキャビンと秀逸な走り味は小型SUVの新基準
正式発表前から、高い注目を集めていたトヨタの新しいSUV「カローラクロス」。
前回は、主にポジショニングやライバルとの違い、海外向けとの作り分けなどについて紹介したが、後編となる今回は、気になる居住性や使い勝手、そして走りの印象についてレポートする。
>>カローラクロスの立ち位置や海外仕様との違いはコチラから
■デザインの上手いまとめ方はトヨタならでは
トヨタの最新SUVであるカローラクロス。その正体は「カローラ」のメカニズムをベースにSUVのパッケージングを組み立てたクロスオーバーモデルだが、実車に触れてみてまず感心したのは、“ちょうどいいサイズ感”と“まとまりのいいデザイン”だ。
トヨタのSUVを選ぶ際、「コンパクトな『ヤリスクロス』や『C-HR』ではリアシートやラゲッジスペースが狭い。けれど『ハリアー』や『RAV4』では大きすぎる」と考える人は少なくないだろう。その点、全長4490mm、全幅1825mmのカローラクラスはその中間に位置するちょうどいいサイズ感で、普段使いでも運転しやすい。その上で、十分なリアシートの居住性と広いラゲッジスペースを用意しているのだ。
デザインの上手いまとめ方も、さすがはトヨタといったところ。クルマ全体を多くの人に受け入れられるであろうクリーンなラインでまとめつつ、前後フェンダーを張り出させてSUVの力強さをしっかり強調している。そのバランスは見事である。
日本仕様専用のフロントマスクは、海外向けの力強い意匠に比べると不思議な印象を受けたが、それも最初だけ。すぐに馴染め、素直に受け入れられた。
■ラゲッジスペースの広さではライバルを凌駕
カローラクロスの運転席に乗り込んでみると、ダッシュボードの造形などはカローラのセダンやワゴン(「ツーリング」)、そしてハッチバック(「スポーツ」)と同じだが、SUVらしく高めのドライビングポジションが新鮮だ。SUVを選ぶ人の多くは、運転席からの見晴らしの良さを求めているというが、それがカローラクロスでもしっかり味わえる。
一方、リアシートはどうか? 頭上スペースは十分に確保されており、ウインドウも大きいから開放感がある。リアシートに2段調整式のリクライニング機構が組み込まれているのもうれしいポイントで、ゆったりとした着座姿勢をとることができる。
その一方、リアシートの足下スペースは“広さ自慢”というほどには広くない。2640mmというホイールベースはカローラのセダンやワゴンと同じ。そのため、基本となる前後席間の距離も共通なのだ。
ただし、セダンやワゴンに比べて着座位置を高くしたことで、同じ体格の人が座ってもフロントシートのスライド位置は前寄りとなり、その分、リアシートの足下は余裕が拡大している。また、フロアと着座位置の高低差が大きくなったことで、乗員の足の収まりが良化するなど、足下のゆとりも増している。いずれにせよ、ホンダ「ヴェゼル」や日産「キックス」のように余裕しゃくしゃくではないけれど、大人2名が不満なく座れるだけの空間はきちんと確保されている。
インパネを始めとするインテリアの質感は、「このクラスとしては悪くない」といったレベル。ガチンコのライバルであるマツダ「CX-30」ほどの高品質感はないが、それはCX-30のレベルが群を抜いて高いだけのこと。むしろカローラクロスはこのクラスとしては標準的な質感で、本物のステッチを入れたダッシュボードの処理などは、ひとクラス下のヤリスクロスと比べて明らかに仕立てがいい。
カローラクロスのパッケージングにおけるハイライトは、ラゲッジスペースだ。最も広い仕様(スペアタイヤ&アクセサリーコンセント非装着車)の荷室容量は、487Lとボディサイズからイメージするよりはるかに広い(最も狭いハイブリッド4WD仕様は407L)。
この数値をライバルと比べてみると、CX-30の430L(ホンダ「ヴェゼル」やスバル「XV」はさらに狭い)を上回り、クラストップにつけている。さすがにひとクラス上のRAV4(580L)やマツダ「CX-5」(500L)には及ばないが、ハリアー(490L)に迫る容量を確保しているのだから立派である。
カローラクロスのラゲッジスペースが広い理由のひとつが、フロアの低さだ。リアゲートを開けた瞬間、フロアの低さに驚かされる(ただし、オプションでスペアタイヤやAC100V電源を選ぶと、床面の一部が5cmほど高くなる)。
一方、リアシートの背もたれを倒した際には、荷室のフロアと倒したシートの部分に大きな段差が生じるが、それは段差を減らすことよりも荷室容量を増やすことを重視したため。もしもフロアの段差を解消したい場合は、販売店オプションとしてフラットになるアイテムが用意されているので、それを装着するといいだろう。
■乗り心地が良くハンドル修正も少なくて済む上質な走り味
カローラクロスの走りはどうか? 走り始めてすぐに理解できたのは素性の良さだ。
現行カローラのセダンやワゴンから、トヨタ車の操縦安定性の味つけは格段に進化し、車体の揺れをしっかり抑え、乗員のカラダが上下に揺さぶられにくくなった。そんな素性の良さをカローラクロスもしっかり受け継いでいて、乗り心地も好印象。ハンドリングも、ドライバーがイメージした通りに曲がってくれるから、コーナリング中のハンドル修正も少なくて済む。
パワートレーンは、1.3トンを超える車重に対してやや物足りないかな、と想像していたが、意外にも不足は感じなかった。
中でも、ハイブリッド仕様のエンジンは“ダイナミックフォース”と呼ばれるトヨタの最新タイプではなく、「プリウス」譲りのひと世代前のタイプだが、制御や味つけが進化しているのだろう、まるで最新システムのようにアクセル操作に対する加速感のレスポンスの良さが印象的だった。
そんなハイブリッド仕様のメリットは、やはり燃費の良さだ。ガソリン車の燃費は、街乗りで10km/Lほど、高速道路では15km/L程度なのに対し、ハイブリッド仕様は街乗りで25km/L、高速道路で23km/Lくらいまで無理なく伸びる。
もちろん、燃料代の差額だけで約35万円アップするガソリン車との車両価格の差を取り返すのは厳しい。しかし、スムーズな走りや、燃料補給の頻度を減らせることなど、金額には換算できないメリットがハイブリッド仕様にはある。
また、1500Wもの大電力を供給できて、停電時に役立つAC100Vコンセントをオプションで装着できるのもハイブリッド仕様だけの魅力。さらには手放す時の下取り価格や減税&免税措置も含めれば、実質的な価格差は35万円より小さくなるため、多少の出費増は覚悟の上でハイブリッド仕様を選ぶ方がいい選択だと思う。
そんなカローラクロスは、使いやすいサイズ感と居住性や積載性のバランスがお見事だ。さらに、スターティングプライスが200万円を割り込むリーズナブルさも、多くの人に愛されるカローラ譲りといっていい。トヨタが満を持して送り出した実用的なコンパクトSUVは、フォルクスワーゲン「ゴルフ」と並ぶベーシックカーのスタンダードともいうべきカローラの名に恥じぬ“SUV界のカローラ”だと断言できる。
<SPECIFICATIONS>
☆Z(ガソリン)
ボディサイズ:L4490×W1825×H1620mm
車重:1350kg
駆動方式:FWD
エンジン:1797cc 直列4気筒 DOHC
トランスミッション:CVT
最高出力:140馬力/6200回転
最大トルク:17.3kgf-m/3900回転
価格:264万円
<SPECIFICATIONS>
☆Z(ハイブリッド/2WD)
ボディサイズ:L4490×W1825×H1620mm
車重:1410kg
駆動方式:FWD
エンジン:1797cc 直列4気筒 DOHC+モーター
トランスミッション:電気式無段変速機
エンジン最高出力:98馬力/5200回転
エンジン最大トルク:14.5kgf-m/3600回転
モーター最高出力:72馬力
モーター最大トルク:16.6kgf-m
価格:299万円
文/工藤貴宏
工藤貴宏|自動車専門誌の編集部員として活動後、フリーランスの自動車ライターとして独立。使い勝手やバイヤーズガイドを軸とする新車の紹介・解説を得意とし、『&GP』を始め、幅広いWebメディアや雑誌に寄稿している。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。
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