良品廉価のハイブリッドでダイハツ「ロッキー」&トヨタ「ライズ」人気が再加速する
&GP / 2021年12月13日 7時0分
![良品廉価のハイブリッドでダイハツ「ロッキー」&トヨタ「ライズ」人気が再加速する](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/goodspress/goodspress_417411_0-small.jpg)
良品廉価のハイブリッドでダイハツ「ロッキー」&トヨタ「ライズ」人気が再加速する
コンパクトSUVのダイハツ「ロッキー」とその兄弟車であるトヨタ「ライズ」に“シリーズ式”のハイブリッド仕様が追加された。
シリーズ式のハイブリッドといえば、日産自動車の“e-POWER”が有名。その走り味は高く評価されているが、果たしてダイハツ&トヨタ版のシリーズハイブリッドは、どんな魅力を備えているのだろうか?
■ダイハツが独自開発したシリーズ式ハイブリッド
コンパクトSUVの人気モデルであるロッキー&ライズにハイブリッド仕様が登場するというシナリオは、大方、予想されていたことだ。しかし、実際に登場したハイブリッド仕様の概要を見て驚いた。トヨタの「ヤリス ハイブリッド」や「アクア」に搭載されるトヨタ式とは全く異なる、ダイハツ独自開発のシリーズ式を採用していたからだ。
ロッキーとライズは異なるブランドから販売されているものの、2台の違いはフロントマスクのデザイン程度。開発と生産はいずれもダイハツが担当する、いわば兄弟車の関係にある。
トヨタ ライズ
2019年11月に登場するや、2台は人気を獲得。特にトヨタ版のライズは、2020年1月に、日本における月間新車登録台数においてSUVで初めてナンバーワンを獲得。同2月と6月にも1位を獲得するなど、スマッシュヒットを記録している。
そんなロッキーとライズは、これまで純粋なガソリンエンジン車しか設定がなかったが、今回、時代の要求に合わせてハイブリッド車が追加されたのは当然の流れといえるだろう。しかし先述したように、そのシステムはトヨタ式ではなく、ダイハツが独自開発したシリーズ式ハイブリッドだったのだ。
ハイブリッドにはいくつかの概念があるが、ヤリス ハイブリッドやアクアに搭載される“THS(トヨタ・ハイブリッド・システム)”に代表されるパラレル式は、エンジンとモーターを効率よくミックスして使う仕組みだ。一方、ロッキーとライズが採用したシリーズ式は、エンジンを発電専用として活用。そこから生じた電気を使ってモーターを回し、それを駆動力とする。そのため走行フィールは、一般的にEV(電気自動車)に近いモーター感の強いものとなる。
そんなシリーズ式ハイブリッドのメリットとしては、システムがシンプルで価格を抑えやすいことがまず挙げられる。そして、街乗りなど低い速度領域において燃費を稼ぎやすいという美点もある。
一方ウィークポイントとしては、70km/hを超えるような高速領域で燃費を伸ばしにくいことが挙げられる。ただしこれは、あくまで「他のハイブリッドシステムに対して」という前提であり、純粋なガソリンエンジン車に比べれば高速領域でも省燃費というのが一般的だ。
そうしたシリーズ式ハイブリッドにおいて、すでに高い評価を得ているのが日産自動車のe-POWER。それだけに“e-SMART HYBRID”と名づけられたロッキー&ライズのハイブリッドにも期待が持てる。
■室内の広さを犠牲にしていないe-SMART HYBRID
ロッキー&ライズのe-SMART HYBRIDと対面し、まず感心させられたのは、その巧みなパッケージングだ。
ロッキーとライズは昨今のコンパクトSUV人気の波に上手く乗ったモデルだが、単にコンパクトでリーズナブルというだけでヒットを記録したわけではない。4mにも満たない短い全長ながら、広いリアシートとラゲッジスペースを備えた高効率パッケージングは素晴らしく、このことが2台の高い評価につながっている。
今回のハイブリッド化でそうした美点が失われていないか気になっていたのだが、それは杞憂に終わった。
ハイブリッドに必須の駆動用バッテリーは、リアシートの座面下に搭載。さらに、スペースの制約によってエンジンルームから追い出された補器類用バッテリーは、ラゲッジスペースのフロア下に移設されている。
とはいえ、リアシートの居住性はガソリンエンジン車と変わらないし、ラゲッジスペースもフロア下の収納こそ狭くなってはいるものの、フロアより上はガソリンエンジン車と変わらない空間を確保。ロッキー&ライズの自慢である“室内の広さ”を犠牲にしないe-SMART HYBRIDは、多くの人に支持されるはずだ。
そんなe-SMART HYBRID仕様とガソリンエンジン車のスタイリングにおける違いは、ブルーに彩られた前後のトヨタ&ダイハツエンブレムや、フロントフェンダーに貼られたe-SMART HYBRIDのエンブレム、そして、ハイブリッド仕様専用のメーターパネルデザインなど、さりげない変更にとどまっている。
ちなみにe-SMART HYBRID仕様には、4万4000円のオプション設定ながら、家電品に電気を供給できる1500W/AC100Vのアクセサリーコンセントが設定される。
これはハイブリッド仕様だけのアイテムであり、停電などの非常時はもちろん、キャンプなどのアウトドアレジャーにも役立つため、ぜひ装着をおすすめしたい。
■ドライブフィールはガソリンエンジン車に近い印象
登場自体は想定内だったロッキー&ライズのハイブリッド仕様だが、その走り味はまさかの想定外だった。シリーズハイブリッドの先輩格である日産自動車のe-POWERが、エンジンの存在を感じさせないEVのような感覚であるのとは対照的に、驚くほどガソリンエンジン車っぽいフィーリングだったのだ。同じシリーズ式ながらこれほどまでに違うなんて想像もしていなかった。
e-SMART HYBRIDとe-POWERの違いはどこにあるのか? それはエンジンの使い方にほかならない。
e-POWERは、エンジンの存在感を消し去るべく、できるだけエンジンを掛けない、または、できるだけエンジンの回転数を上げないようにしている。一方、ロッキー&ライズのe-SMART HYBRIDは、走行中、多くのシーンでエンジンが掛かる。しかも、アクセルペダルの踏み込み量に応じて、比較的リニアにエンジン回転数が上下するため、ガソリンエンジン車に近い印象を受けるのだ(ただし、アクセルペダルを踏み込んでいないのに、突然エンジンの回転数が高まるような違和感は皆無)。
もちろん停止状態からの発進時は、モーター駆動車ならではの滑らかさを感じられるし、約40km/hまではバッテリー残量さえあれば積極的にエンジンを止めて走るから、その領域に限ってはモーター駆動車らしさを感じられる。しかし総合的に見ると、電動車らしいドライブフィールは薄いというのが実情だ。
では、ロッキー&ライズのe-SMART HYBRIDは、シリーズハイブリッドなのにエンジン回転がダイレクトに上下し、モーターでの走行感覚が薄いのか? その背景には、ダイハツの“良品廉価”のモノづくりがある。ストレートにいうと、価格を下げるためだ。
クルマの販売価格を下げるためには、ハイブリッド車といえども高価なバッテリーはできるだけ小さくした方がいい。その分、電気を貯められる量に制約が生じるため、ロッキー&ライズのe-SMART HYBRIDはアクセルペダルの踏み込み量に応じて発電量を調整して対応。その結果が、ガソリンエンジン車っぽい乗り味につながっている。見方を変えれば、ガソリンエンジン車ならではの走り味が好きな人には、マッチングのいいハイブリッドといえるのではないだろうか。
走り味こそハイブリッドらしさは希薄ながら、ロッキー&ライズのe-SMART HYBRIDはシリーズハイブリッド化の目的だった燃費と低価格の両立を果たしている。実際、同様のルートで燃費を意識せずドライブしたところ、e-SMART HYBRIDと同時に追加された1.2リッターの自然吸気エンジン車が17km/Lほどだったのに対し、ハイブリッド仕様は23km/Lほどと、3割以上も燃費が向上していた。その上、ロッキー&ライズのe-SMART HYBRIDは価格も抑えめ。商品力はかなり高いことから、2台の人気にますます拍車が掛かりそうだ。
<SPECIFICATIONS>
☆ロッキー プレミアムG HEV
ボディサイズ:L3995×W1695×H1620mm
車重:1070kg
駆動方式:FWD
エンジン:1196cc 直列3気筒 DOHC
エンジン最高出力:82馬力/5600回転
エンジン最大トルク:10.7kgf-m/3200〜5200回転
モーター最高出力:106馬力/4372〜6329回転
モーター最大トルク:17.3kgf-m/0〜4372回転
価格:234万7000円
>>ダイハツ「ロッキー」
>>トヨタ「ライズ」
文/工藤貴宏
工藤貴宏|自動車専門誌の編集部員として活動後、フリーランスの自動車ライターとして独立。使い勝手やバイヤーズガイドを軸とする新車の紹介・解説を得意とし、『&GP』を始め、幅広いWebメディアや雑誌に寄稿している。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。
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