【ル・マン24時間】まさかの残り3分半、他チームも困惑する結末
&GP / 2016年6月21日 0時1分
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【ル・マン24時間】まさかの残り3分半、他チームも困惑する結末
サーキットの誰もが、そして世界中で見ていた全ての人たちが、目の前で起きたことを理解できないまま、ル・マン24時間耐久レースの最後の3分間は過ぎていきました。結果だけを見れば、優勝ポルシェ、2位トヨタ、3位アウディとトップ3チームが1台ずつ表彰台。しかし、記録以上に記憶に残る24時間でした。
23時間56分40秒、これがル・マンの厳しさなのか
夕暮れのインディアナポリス・コーナーを走るTS050 HYBRID
チェッカーフラッグが振られるまでがレース。ここはル・マン、その24時間の間にはどんなことでも起こりうる。わかってはいても、これほどの結末を見せられては言葉を失ってしまいます。長いル・マンの夜を走り抜いて朝をむかえ、その間にトヨタ6号車がGT車両にぶつけられたりコースアウトしたりするシーンはありましたが、トヨタ5号車は順調に周回を重ねているように見えました。しかしポルシェもその30秒ほど後ろを追い掛けており、長距離耐久レースらしからぬ緊張を維持したまま、レースは進んでいたのです。
スタンドではためく日の丸。誰もがトヨタ初優勝の瞬間を待っていました
トヨタのピット前で、優勝の瞬間を撮ろうと集まったカメラマンたち
ゴール1時間前になると、グランドスタンドもいっぱいに埋まり、みなゴールに備え始めます。23時間以上戦ってもトヨタの5号車とポルシェの2号車は同一周回で走り続けていました。アクシデントに見舞われたトヨタ6号車も3ラップ後ろの3位を走っており、トヨタ-ポルシェ-トヨタの1-2-3位のまま歴史的なゴールをむかえるものと、誰もが信じていました。
残り3分37秒、最後の1周に向かう6号車。しかしその後からくるはずの5号車が来ない
残り時間が10分を切り、心の中では600秒をカウントダウンが始まります。ホームストレートをトップのトヨタ5号車が通過し、実質あと2周。祈るような気持ち、そして歴史的な初優勝を期待しながら観客たちは待ちます。残り5分、4分、そして3分37秒となったとき、トヨタの6号車がホームストレートに戻ってきました。あと1周。すぐ後ろをトップの5号車が走ってくるはず。しかしその姿はなかなか表れませんでした。
ピット前で止まってしまった5号車にサーキット中がどよめく
ようやく5号車の姿が最終シケインを抜けて見えました。しかしその走りに力強さはなく、よろめくようにしてピット前でクルマが止まります。誰もが目の前で起こっていることを理解できません。6号車を待っている? パフォーマンス? しかしその停車時間が長くなるにつれて、事態の異常さに気付き始めます。どよめく観客席と送られる声援。そして、なんとかもう一度走り出そうとするTS050 HYBRIDの脇を、無情にもポルシェ2号車が追い越していったのです。
優勝したポルシェ2号車のヴィクトリーラン。しかし選手の顏には困惑も見てとれる
ようやく走り出し、ゆっくりと最後の1周に向かう5号車の後ろ姿が、ル・マン24時間耐久レースを物語っているようでした。どんな映画よりも劇的な、ありえないシナリオ。ポルシェ・チームのピットは歓喜で溢れているようですが、どこか戸惑いも見てとれます。優勝後、ビクトリー・ロードに帰ってきたポルシェ2号車のドライバーたちの表情からも、喜びと動揺が見えます。その中の一人、ニール・ジャニ選手はレース後のコメントでこう語りました。「トヨタのドライバー達の気持ちを考えると悲しくなります。レーシングドライバーであれば誰でも、それがどのようなものか痛いほどわかると思います。ル・マン24時間での優勝をまだ言葉で表現することはできません」
レース後の会見にのぞむ中嶋一貴、小林可夢偉の両選手
こうして2016年のル・マンは幕を閉じました。まさに「歴史的敗戦」でした。しかしその"歴史"は勝利への歴史であるはずで、この敗戦は初優勝を果たしたときに再び語られるべきものなのでしょう。その戦いはすでに始まっていて、さらに速く、強いマシンを作るため、ドライバーたちもチームも動き始めているはずです。その日を365日後にむかえるために。
写真で振り返るル・マンの夜と朝、ゴールと、戦いのあと
ホームストレートを走り抜けるトヨタ TS050 HYBRID 5号車
日が暮れ始めた、ユノーディエールの第一シケインを立ち上がるアストンマーティン
漆黒のポルシェ・コーナーを抜けるアルピーヌ
ダンロップ・ブリッヂへと加速するトヨタ TS050 HYBRID
空が白み始め、夜明けを告げる。最終シケインへ向かうトヨタ TS050 HYBRID
10時を回ると観客が増え始める。スタートとは打って変わって快晴の日曜日
残り4時間半、まだまだ先は長い。ホームストレートを駆け抜ける3台
チェッカーフラッグを受ける総合優勝のポルシェ・チーム、Porsche 919 HYBRID 2号車
LMP2クラス優勝、シニャテック・アルピーヌのAlpine A460 Nissan 36号車
GT Proクラス優勝、フォード・チップ・ガナッシ・チームUSAのFord GT 68号車
GT Amaクラス優勝、スクデリーア・コルサの Ferrari 458 Italia 62号車
総合2位でチェッカーをうけるトヨタ TS050 HYBRID 6号車
パワーを失いながら、なんとか1周を走り戻ってきたトヨタ TS050 HYBRID 5号車に、観客から大きな拍手と労いの声援が送られる
かつてトヨタでF1を戦ったアラン・マクニッシュが、アウディのピットからトヨタのスタッフに駆け寄る
Toyota Gazoo Racing >> http://toyotagazooracing.com/
(文・写真/GoodsPress編集部 取材協力/トヨタ自動車)
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