雪上試乗で確信できたスバル初となる市販EV「ソルテラ」のスバル車“らしさ”
&GP / 2022年4月18日 6時0分
![雪上試乗で確信できたスバル初となる市販EV「ソルテラ」のスバル車“らしさ”](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/goodspress/goodspress_443712_0-small.jpg)
雪上試乗で確信できたスバル初となる市販EV「ソルテラ」のスバル車“らしさ”
「ソルテラ」はスバルらしいクルマになっているのか? はじめて触れるソルテラの、何より注目したい部分はそこだ。
ソルテラとは、スバル初となる専用の車体設計で作られた市販EV(電気自動車)のこと。この夏ともいわれている市販を前にプロタイプ(試作車)に試乗する機会を得たのだが、まず驚いたのはその試乗ステージ。なんと、スバルは雪が降り積もったコースを選んだのである。今回は、そんなソルテラの「スバルらしさ」に焦点を当てて、キャラクターに迫っていこう。
■スバル“らしさ”はどこにあるのか
なぜ「スバルらしさ」を気にするのか? スバルのクルマなんだからスバルらしくて当然じゃないか?
そう思う人もいるかもしれない。しかし、あえてスバルらしさを探したくなるのは理由がある。それは、ソルテラはトヨタとの共同開発車であり、トヨタ版として「bZ4X」という兄弟が存在するからだ。そんな兄弟がいるからこそ、スバル車はやっぱりスバルらしくあってほしいと思うのは、筆者だけではないだろう。
ところで、スバルらしさの前提としてまず驚いたのが、クルマの開発手法だ。通常、複数のメーカーをまたいで基本設計を共通するモデルはどちらかの会社が開発を担い、それをアレンジして別メーカーの車種として展開するのが一般的だ。たとえばトヨタの中でも人気車種となっている小型SUVの「ライズ」やコンパクトハイトミニバンの「ルーミー」はそれぞれダイハツ仕様(「ロッキー」&「トール」)が存在し、開発はダイハツが担当。トヨタ仕様は、それをベースに一部のデザインなどを変更するのみに留まる。
しかしソルテラとトヨタ版であるbZ4Xの開発はどちらかのメーカーが専任でおこなうのではなく、トヨタ内にトヨタのスタッフとスバルのスタッフが集められて会社の垣根を超えたプロジェクトして開発したのだという。それは共同開発の新しいスタイルにほかならないし、関わるエンジニアの比率はスバルとトヨタでほぼ半分ずつだったそうだ。
ある意味、ソルテラとbZ4Xはスバルとトヨタの両社の技術と知見が込められたクルマといえるだろう。総合安全性能や走行性能などはスバルの得意領域、いっぽうで環境性能、快適性、内外装の質感、コネクテッド機能などの先進領域はトヨタの知見が多く活用されいている。だから、よくあるメーカーをまたいだ兄弟車とはちょっと…いやかなり違う。それを知れば、ソルテラに関して「ただのバッジエンジニアリングでは…?」なんて誤解することはなく、商品を正当に判断できるはずだ。
■譲れないオフローダーとしての性能
さて、話をテーマの「ソルテラのスバルらしさ」に戻そう。
実車を見ると外観はスバル版もトヨタ版も車体は共用だし、外観で異なるのはヘッドライト、フロントバンパー(いわゆるグリル部分を含む)、ホイール、テールランプ程度である。しかしながら、パッケージングにはスバル側の声も大きく反映されている。
それは210㎜ある最低地上高やアプローチ/デパーチャーアングルを大きくするための前後オーバーハングの短縮化などだ。それらが効果を発揮するのは悪路走行時で、つまりスバルとしては「EVとはいえスバルが売るSUVだからオフローダーとしての性能は譲れない」とパッケージングにこだわったというわけである。
■機能部分にも違いがあるインテリア
インテリアもシートやコックピットのデザインなどは基本的に両車共通だが、茶色いインテリアカラーはスバル専用。見た目だけでなく機能部分にも違いがあり、たとえばシートヒーターは発熱部の面積までスバルのほうが広い。これは雪国で愛されるスバル車が多いことを反映した差別化に他ならない。
また、bZ4Xには採用のないソルテラ専用アイテムになっているのがパドルシフトだ。これはアクセルをオフにした際の減速度の大きさをドライバーの好みに応じて設定できるもので、減速度を3段階+コースティングの合計4つの調整から選択できる。これについてスバルは「ドライバーの好みに合わせて操る楽しさ、走る楽しさを実現するため。これまでの走りの楽しさをEVでもしっかり継承する」と説明する。
思い通りの運転といえば、ソルテラもbZ4Xも駆動方式はFFと4WDを展開するが、4WDの味付けに関してはスバル側のエンジニアがかなりの部分を任されたという。ある意味トヨタ版のbZ4Xも「スバルらしい走り」というわけだが、ソルテラの4WDモデルはサスペンションの味付けを独自とすることで、よりスバルらしいハンドリングを身につけている(FFのサスペンションは両車で共通)。具体的に言えばショックアブソーバーを硬めとし、ドライバーのハンドル操作に対する応答をよりシャープにしたのだ。
■スバルらしさにあふれる走り
実際、走りはスバルらしさにあふれていた。
今回の試乗コースは踏み固められた雪が路面を多い、車両はスタッドレスタイヤを装着していた。それはクルマの運転感覚として個性がでにくい状況といっていいだろう。しかし、滑りやすい路面でのしっかりしたトラクション、思い通りに曲がるハンドリング、4輪から感じられる接地感などドライブしていると「スバル車ってこうだよね」という気持ちになってきた。
そのうえで、驚いたのは音だ。bZ4Xには非設定のソルテラ専用アイテムとしてスバルの上級車種が搭載する「harman/Kardon(ハーマン/カードン)」のプレミアムオーディオを用意して耳からもスバルのオリジナリティを提供する。でもそれだけではない。半ドアなどの警告音もbZ4Xとは異なる“スバルの音”となっているのだ。そこまで差別化を作り込むとはなんというこだわり…。
そんな「スバルらしさの追求」の裏には何があるのか? ズバリ「ターゲットユーザーに寄り添う」ということだ。実は、ソルテラがもっとも重視しているターゲット層はこれまでもスバル車を愛用している人たち。彼らがソルテラに乗り換えた際に「スバルはEVになって変わってしまった」「なんだかスバルらしくない」と言われないように、ソルテラの開発にあたって開発者は意図的にスバル濃度を高めたというわけだ。
ソルテラが、どこからどう見ても、実際に運転しても、スバルらしさがたっぷり詰まっていた。これならスバルファンが愛車としても満足できるに違いない。
それにしても、なんといってもスバルらしいのは最初の試乗会場だ。それが「雪道」なんて一般常識では考えられない、なんともスバルらしい選択ではないだろうか。
SUBARU SOLTELLA プロトタイプ AWD
<SPECIFICATIONS>
ボディサイズ:L4690×W1860×H1650mm
車重:2020kg~
駆動方式:AWD
システム最大出力:218馬力
一充電走行距離:460km前後
文/工藤貴宏
工藤貴宏|自動車専門誌の編集部員として活動後、フリーランスの自動車ライターとして独立。使い勝手やバイヤーズガイドを軸とする新車の紹介・解説を得意とし、『&GP』を始め、幅広いWebメディアや雑誌に寄稿している。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。
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