科学×プラモ=男のロマン!? バンダイ「1/48 しんかい6500」をジオラマ化!【達人のプラモ術<しんかい6500>】
&GP / 2022年5月28日 7時0分
科学×プラモ=男のロマン!? バンダイ「1/48 しんかい6500」をジオラマ化!【達人のプラモ術<しんかい6500>】
【達人のプラモ術】
バンダイ
エクスプローリング・ラボシリーズ
1/48 しんかい6500
01/05
戦闘機やバイク、ロボット、スポーツカーなど、さまざまなプラモデルの作り方・楽しみ方を紹介する、プロモデラー長谷川迷人さんによる【達人のプラモ術】。
前回までは白銀のロケットを製作していましたが、今回からは舞台を一気に低くして海の中に! 未知の深海を探査する有人深海調査船「しんかい6500」製作のスタートです。
長谷川迷人|東京都出身。モーターサイクル専門誌や一般趣味雑誌、模型誌の編集者を経て、模型製作のプロフェッショナルへ。プラモデル製作講座の講師を務めるほか、雑誌やメディア向けの作例製作や原稿執筆を手がける。趣味はバイクとプラモデル作りという根っからの模型人。YouTubeでは「プラモ作りは見てナンボです!「@Modelart_MOVIE」も配信中。
■なんでもありだったプラモデル
今回からは「しんかい6500」。達人の趣味炸裂しまくりのアイテムチョイスですが、例えば以前製作したアポロ宇宙船とか、プラモデルと科学モノって切っても切れない深~い関係があるのです。深海潜水艇はプラモ好き男のロマン(最近こればっか)であります!
プラモデルが広く普及しだした1960~70年代には、ミリタリーモデルやカーモデル、キャラクターモデルだけでなく、なんでもプラモデルになっていた時代でありました。例えば建物や家電もプラモデル化。東京タワーとか霞が関ビルとか、世界の家や水車小屋、小便小僧なんてのもありました。家電模型では扇風機(ポータブルじゃなくて据え置き型のヤツ)とかクーラー(冷えません)とかラジカセとか。そして科学プラモとでも言うべきジャンルがありました。人体模型とか、昆虫の模型などがそれにあたります。
▲1960年代にマルサンから発売されていた人体模型プラモ「驚異の人体」。いやリッパな科学プラモ。箱絵に手術着の医師が描かれているのは、当時TVで人気を博していたアメリカのTVドラマ『ベン・ケーシー』の人気にあやかったもの(懐かしい)
科学プラモをピックアップするとキリがないのですが、アメリカのRevellではウエスチングハウス原子力発電所を模型化、原子炉の構造が分かるように内部が再現されているものがありました。
▲1959年代に発売されたアメリカRevellのウエスチングハウス原子力発電所(文句なしに科学プラモ)。レアキットということもあって現在ではお宝アイテム
同社はこの手のアイテムが好きらしく、70年代に大ブームとなったアポロやジェミニといった宇宙モノのみならず、近年ではドイツRevellが海底油田や1/700コンテナ船、さらには誰が買うんだろうと思ってしまう大型バケットホイール(科学模型というより建機だけど)を模型化しています。
▲ドイツRevellの「1/200 海底油田」! 超マニアック! でも欲しい
▲こちらは同じくドイツRevellの「1/700 コンテナシップ『コロンボ・エクスプレス』」。ちなみに積んでいるコンテナは全部塗分けが必要というモデラー泣かせのキット
■深海潜水艇は科学のロマン!
さて前置きが長くなりましたが、近年では科学模型と呼べるアイテムが少なくなったと思っていたのですが、まだまだ廃れちゃいません。日本が誇る有人深海調査船「しんかい6500」がプラモデル化されているんですね、これは立派な科学プラモであります。
▲1960年代当時フジミがアメリカのアルビン号、当時初めてマリアナ海溝で1万メートル到達したトリエステ号といった深海潜水艇のプラモを出していた
▲トリエステ号は水底に着くと自動で浮上するギミックや基本ゴム動力や水中モータで遊べる仕様だった
深海潜水艇のプラモデル自体は70年代からありました(潜水艦のプラモは人気が高い)。ただしゴム動力で水に潜るといった玩具的な要素が強いものでした。それはそれで魅力ですが。そして2010年にバンダイが“エクスプローリング・ラボシリーズ”としてプラモデル化した「1/48しんかい6500」(5184円)は、内部も再現され、LEDによるライトの発光も再現した本格的な科学プラモデルです。最新ではありませんが、今でも魅力あふれるキットで、同シリーズでは「1/700 地球深部探査船『ちきゅう』」「1/10 ISS船外活動用宇宙服」がラインナップされています。
■しんかい6500とは?
「しんかい6500」はJAMSTEC(国立研究開発法人 海洋研究開発機構)が運用する深海調査船です。
©2012 Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology
地震大国である日本。1933年に起きた三陸沖地震の震源域の断層が水深6200~6500mにあったことから、潜航深度6500mの潜水艇が必要でした。そこで1981年に、まずは潜航深度2000mの「しんかい2000」が開発され、それで得られたノウハウやその間の技術革新を活かして1989年に建造されたのが、世界でもトップクラスの性能を持つ深海探査船「しんかい6500」です。
現在、世界各国では開発中のものを除くと5隻の科学調査専用の有人潜水船が稼働しており、アメリカ「アルビン」の設計深度が4500m、フランスの「ノチール」とロシアの「ミール I、II」は共に6000m。一方「しんかい6500」は、1989年8月11日の試験潜航で水深6527mに到達。そして中国が2010年に就航させた「蛟竜」が2012年にマリアナ海溝で7020mに到達しています。
ちなみに現在、有人潜水艇での世界最深記録は、米国の探検家ビクター・ベスコボ氏が開発したプレッシャー・ドロップ号で、太平洋のマリアナ海溝で1万928mまで下降し、2012年3月に映画監督のジェームス・キャメロンがマリアナ海溝のチャレンジャー海淵で記録した水深10898.4mを16m更新しています。ロマンだなぁ(こればっか)。
■キットに関して
内部構造が再現されているのでパーツは多いのですが、船体構造に外装を取り付けていく実機同様の構造や、耐圧球内部のコクピットの再現、細かいパーツは一体で成形されるなど作りやすさにも配慮されており、接着剤なしで組めます。
パーツは色プラで成形と、ガンプラの技術を使ってスケールモデルを作るとこうなりました的な好キット。塗装が苦手といったプラモデルビギナーでもリアルな仕上がりを得られます。なおバンダイは2012年の改装で推進器が増設された改造型もキット化しています。今回は前期型を製作します。
▲プラモデルを店頭で選ぶ際に箱絵(ボックスアート)は大事な要素。本キットは海底のブラックスモークに迫る「しんかい6500」を描いた最高にカッコ良いボックスアートとなっている
▲パーツのランナー(枠の部分)をよく見ると、タラバカニやナマコ? 謎の生き物のデイテールが彫りこまれている。バンダイの遊び心といったところか
■耐圧殻(コクピット)を製作
さて、製作を開始しましょう! インスト(説明書)に沿ってまずは耐圧殻を製作していきます。
「しんかい6500」の耐圧殻は直径2m、厚さ73.5mmのチタン製で、深海の水圧に耐えるためにほぼ完全な球体(誤差は2ミリ以下)となっていて、このチタンの耐圧殻が6500メートルまで潜ると水圧で約2センチ縮むそうです。恐ろしや。
耐圧殻のパーツは4分割されており内部のメカを組み込んでいけばサクサクと完成です。キットは色プラなので塗装しなくても、らしく仕上がるが、今回はよりリアルに仕上げたいので全塗装しています。
▲塗装後デカールを貼って仕上げたコクピット周り
パーツを組み合わせて、3か所の観測窓を取り付ければ耐圧殻の完成です。観測窓は実物と同じ台形型のクリアパーツはめ込むようになっているのがリアル。実物はメタクリル樹脂(アクリル樹脂)製で、7cm厚の2枚重ねで計13.8cmの厚みがあるのですが、潜行では水圧で最大約9mm表面がヘコんで凹面レンズになるそうです。恐ろしや恐ろしや。
さてさて、科学プラモ「しんかい6500」いかがでしたでしょうか? 次回は船体を製作しつつジオラマのアイデアを考えます! お楽しみに!
>> [連載]達人のプラモ術
<製作・写真・文/長谷川迷人>
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