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脱内燃機関が叫ばれる今、マツダ「CX-60」が3.3リッター6気筒ディーゼルエンジンを搭載した理由とこだわり

&GP / 2022年9月19日 9時0分

脱内燃機関が叫ばれる今、マツダ「CX-60」が3.3リッター6気筒ディーゼルエンジンを搭載した理由とこだわり

脱内燃機関が叫ばれる今、マツダ「CX-60」が3.3リッター6気筒ディーゼルエンジンを搭載した理由とこだわり

プロダクトって、作り手のこだわりを感じるとうれしいものです。クルマもしかり。大量生産の工業製品だから、個性なんてないんじゃない、って思われるかもですが、例えばマツダが発表したラージサイズ商品群のSUV「CX-60」は、こだわりが詰まったようなクルマです。

こだわりってなんだろう。私なりの結論は、見識だと思っています。作り手の世界観が反映されていること。例えば今回では、カーボンニュートラルに対するマツダの考えが表れています。

二酸化炭素ゼロ社会を目指すといっても、いきなりすべてのクルマをピュアEVにはできない、ってマツダでははっきり言います。

バッテリーの供給にはじまり、生産設備、充電インフラ、さらに2トンを超える重量級のEVを受け入れる駐車場などの社会インフラにいたるまで。たとえば明日から急に、すべての車両がEVになったら…世のなか大混乱でしょう。

ピュアEVも手がけているマツダですが、CX-60の開発陣が考えたのは、走行距離あたりのCO2をできるだけ減らすこと。つまり現状では、燃費にすぐれるパワートレインも社会に貢献できると、技術開発を進めたといいます。

■大きめ排気量の多気筒エンジンを搭載した理由

▲ 切れ長の眼のようなヘッドランプを特徴としていた従来のマツダ車と一線を画し縦基調になったフロントマスク。

CX-60には4つのパワートレインが用意されます。真っ先に市場に投入されるのは「e-SKYACTIV D」(イースカイアクティブディー)。3.3リッター直列6気筒ディーゼルエンジンです。

脱内燃機関(エンジン)なんて叫ばれる時代に、そんなに大きめな排気量でかつ多気筒のエンジンをなぜ? と思う方もいるでしょう。

マツダが、排気量の比較的大きな6気筒ディーゼルエンジンを開発したのには理由があります。バブルの時代みたいに、単に自社の持てる技術を最大限アピールしたかったというわけではないようです。

▲後輪駆動ベースで開発されており、ロングノーズのプロポーションも特徴的。車体色は写真のソウルレッドクリスタルメタリックいがいは、ホワイト、ブラック、ダークブルー、シルバーなど無彩色ばかりとなる

「これからマツダはラージ商品群といって、より余裕あるサイズのSUVをグローバルに展開する計画です」。CX-60の開発を陣頭指揮した和田宜之主査は言います。

企業の生き残りのためには、市場で商品力を持つラージサイズのSUVが必要。そのクルマを余裕もって走らせるためには、「550Nmのトルクは必要だと考えました」と和田氏。

そのために考えられたのが排気量大きめの6気筒でした。4気筒で排気量を増やすと、振動などで無理が出てきます。そのためにはバランスシャフトだったり、補機類が必要になるでしょう。

「いっそ、直列6気筒にしてしまえば、そもそも、回転マナーがスムーズなため、バランスシャフトは必要なくなります」

新開発の3.3リッター6気筒ディーゼルエンジンには、燃焼効率のいいピストンを採用したことをはじめ、ターボチャージャーと、さらにごく低回転域のトルク不足をカバーするためのマイルドハイブリッドシステムも組み合わせています。

トルクが太ければアクセルペダルを強く踏み込まなくていいし、もっともトルクが薄いごく低回転域では電気モーターがトルクの積み増しをして、やはりアクセルペダルの踏みこみを抑制してくれます。

アクセルペダルを全閉するような低負荷領域では、エンジンは駆動系から切り離されるのです。これも燃費のため。

▲メーター、インフォテイメント、空調操作など、ゾーンを明確にわけた設計

8段オートマチック変速機もマツダ独自開発。通常のようにギアを締結するためのトルクコンバーターを使わず、走り出しからエンジンと駆動系のギアを直結します。これも燃費に寄与。

▲腰の部分でからだをしっかり支え、上半身はステアリングホイール操作などのために自由に動けるようにした設計のシート

副次的なメリットとして、ギアボックスがよりスリムになったそうです。そのため、乗員がいるキャビンへの張り出しが抑えられ、レッグルームに干渉しなくなったので、ドライバーはより自然なポジションで運転できるようになったといいます。

■思わず納得するCX-60の走り

▲写真はスポーティな仕立てのXD e-SKYACTIVプレミアムスポーツ

このドライブトレインを搭載したCX-60「XD e-SKYACTIVプレミアムスポーツ」なるモデルをドライブしてみました。

約1.8トンのボディは、実にスムーズに発進します。電気モーターもしっかり仕事しているのでしょう。そのあと1500rpmを超えるあたりからターボチャージャーが効き始めて、大きな力を感じさせながらクルマは加速していきます。

▲「Mi-Drive」で「ノーマル」「スポーツ」「オフロード」の切り替えができ、山道はスポーツが楽しい

感心するのは、低いエンジン回転域でも、モーターが動いているためでしょう、しっかりトルクが出ることです。そのため、アクセルペダルを軽く踏んでいるだけで、力が途切れることがありません。常に気持ちよく加速感を味わえます。

燃費がリッターあたり21.1kmと、サイズからすると信じられないぐらい良好。そのためこのクルマは、週末にはちょっと足を延ばしてゴルフとか、家族ですこし遠出をすることが多いとか、そんな使いかたに向いてそうです。

いっぽう、カーブを曲がるのも大得意。サスペンションシステムには副室付きダンパーを採用するとともに、「キネマティックポスチャーコントロール」なる技術も搭載。

後者は、ロードスターで初採用されたもので、コーナリング時の姿勢を安定する設計。カーブでは、内側後輪のブレーキを電子制御して、いわゆるアンチリフト効果を生み、姿勢を安定させます。

おかげで、CX-60は、カーブからカーブへひらりひらりと軽快な動きでカーブからカーブへと走り抜けます。クルマ好きの視点からすると、実際これがこのクルマの最大の美点と、私は思いました。

▲ブラックとのコントラストが雰囲気の「タン」内装車

CX-60の運転を楽しんでいると、ロードスターを作っているマツダならではの製品だなあと思わず納得。ステアリングホイールは多少重かったり、荒れた路面を比較的高速で走ると路面の凹凸を拾いすぎて乗員はぽんぽんっと跳ねを経験することもあるかもしれません。

まあでも、それもCX-60の味と言ってしまってもいいかもしれません。プロダクト開発の思想が伝わってくるだけに、今回のマイルドハイブリッドディーゼルはもちろん、ほかのモデルもおそらく、所有する意義を感じさせてくれるはず。いまのプロダクトで、もっとも大事なことかもしれません。

今回のe-SKYACTIV-D(505万4500円~)が9月に発売され、4気筒ガソリンエンジンのプラグインハイブリッド「eーSKYACTIV PHEV」(539万円)、3.3リッター6気筒ディーゼル(マイルドハイブリッドなし)の「SKYACTIV D3.3」(323万9500円~)、そしてベースモデル「SKYACTIV-G 2.5」(299万2000円~)の3車種は22年内の発売が予定されています。

▲ホイールベースが2870mmあり後席も余裕がたっぷり

【Specifications】
☆Mazda CX-60 e-SKYACTIV-D
ボディサイズ:L4740xD1890xH1685mm
エンジン:3283cc直列6気筒ディーゼルターボ+マイルドハイブリッド 全輪駆動
最高出力:187kW/3750rpm
最大トルク:550Nm/1500~2400rpm
燃費:21.1km/リッター(WLTC)
価格:505万4500円~

>>マツダ「CX-60」

<写真・文/小川フミオ>

オガワ・フミオ|自動車雑誌、グルメ誌、ライフスタイル誌の編集長を歴任。現在フリーランスのジャーナリストとして、自動車を中心にさまざまな分野の事柄について、幅広いメディアで執筆中

 

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