【DS4 クロスバック試乗】SUVルックの個性派。ガイシャの醍醐味を満載
&GP / 2016年8月3日 18時30分
【DS4 クロスバック試乗】SUVルックの個性派。ガイシャの醍醐味を満載
300万円台で“個性的なガイシャ”が欲しい人にとって、DSブランドの「DS4 クロスバック」(338万円)は、なかなか面白い選択肢ではないでしょうか。
これが“賢い輸入車選び”となると、フォルクスワーゲン「ゴルフ」辺りが鉄板でしょうが、「人と違うクルマが欲しい」とか「自分のライフスタイルを反映したい」なんてことを重視すると、フランス発のクロスオーバーモデルが、にわかにクローズアップされてきます。
念のために復習しておきますと、DSとはシトロエンから独立した新進のブランドです。2009年、シトロエン「C3」ベースとしたスペシャルティコンパクト「DS3」をリリースしたのを皮切りに、「DS4」、「DS5」(ともに2011年に登場)と、シトロエンは往年の名車「DS」の名を冠した車種を続々とリリース。そして2014年、“Different Style”を略した(と主張する)DSブランドが、シトロエンから独立し誕生しました。シトロエンよりも贅沢で尖ったイメージを狙っています。
トヨタに対するレクサス、日産のインフィニティ、ホンダでいえばアキュラといったところですが、企業規模と予算の関係もあるのでしょう。今のところそれほど、シトロエンとの差は感じられません。意地の悪いクルマ好き(←ワタシです)の脳裏には、5チャンネル時代のマツダ「クロノス」、「MX-6」、アンフィニ「MS-6」、オートザム「クレフ」…といった面々がよぎります。
とはいえ、シトロエンの金看板であった“ハイドロニューマチック”(空気と油を使ったサスペンション)が“過ぎ去った未来”になってしまった今、「何はともあれ、デザインを前面に押し出す!」というコンセプトは、強い個性を維持するためには絶対必要な、そして現実的な手段でしょう。自動車業界の多様性確保のため、まことに微力ながら、諸手を挙げて応援したく存じます。
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■フロントウインドウとパリコレに関連あり!?
DS4 クロスバックは、DS4の車高を30mm高め、ルーフレールを装着。そして、ホイールアーチに黒い樹脂製のモールをプラスしてワイルドに装ったモデルです。前後バンパーの中央下部をブラックアウトし、視覚的にも車高が高く感じるよう工夫。黒く塗られたホイールも、同じ効果を発揮しています。
ただし、215/55R16というタイヤサイズは、ベースとなったDS4と同じ。1.6リッター直4ターボ(165馬力/24.5kg-m)と6ATを組み合わせた動力系のスペックも、DS4と共通です。駆動方式はFF(前輪駆動)で、4WDモデルは用意されません。
DS4自体、シトロエン「C4」の4ドアクーペという位置づけで、独特のスタイルを持っていますが、SUV風味を振りかけてクロスオーバー化したDS4 クロスバックにも、ちょっと不思議な、国籍不明ともいえる存在感があります。それでいて、フロントフェイスがダブルシェブロンを掲げた“シトロエン顔”から卒業しているので、手掛かりが少ない。
でもそれって、悪いことじゃありません。DSのようなブランドは「あのクルマ、なんだろう…?」と関心を持たれたら、勝ったも同然(!?)ですから。
後ろ下がりの流麗なルーフラインに、Bピラーをブラックアウトしてサイドウインドウと一体化したウインドウグラフィック、さらに、後方へ延ばしたリアサイドガラスの後端にドアオープナーを埋め込んだデザインは、クーペルックのDS4ゆずり。同様に、リアのドアを開けると、後方へ鋭角なサイドウインドウ後端部が飛び出して乗り降りする人を脅かす(!?)弊害も、DS4から引き継がれました。コレ、日本のメーカーだったら、決して「Go!」が出ないデザインでしょう。しかも、リアのサイドウインドウは“はめ殺し”で開きません! デザインコンシャスを掲げるDSの、面目躍如といったところです。
一方、フロントのドアを開けると、オプションの“クラブレザーシート”(38万円)が迎えてくれました。体が当たる部分を3列の細かいブロックに分け、立体的に裁断した贅沢なシートです。車内でおせんべいなんて食べようものなら、ブロックの間に食べかすが挟み込まれて大変なことになりそうですが、いい大人はDS4 クロスバックの中でおせんべいを食べるなんてことはしません(ぬれせんべいにしときましょう)。
センターに速度計を置いた3連メーター、センターコンソールにはナビゲーション画面(19万7640円のオプション)と、順当なインパネまわりですが、面白いのが、サンバイザーに加え、サンバイザー部分の天井そのものを前後することができ、フロントウウインドウの広さを拡大できること。シトロエンは一時、フロントガラスがルーフ部分にまで大きく食い込んだショーモデルを提案していましたが、そのコンセプトの市販化バージョンが、この“パノラミックフロントウインドウ”というわけです。
以前、フランス・パリのファッションショーで「誰が着るんだ!?」と思わせるスケスケの服が大挙して現れたことがありました。そんな尖ったコンセプトが次第に咀嚼され、ブラウスの袖部分やスカートの一部に“スケ素材”が採り入れられ、一般に販売される。そんな過程を思わせる、DS4 クロスバックの装備です。
個性的な内外装を誇るDS4 クロスバックですが、“走り”は相対的に、ごく平凡。1.6リッターターボは、1370kgのウエイトに対して十分なアウトプットを提供しますが、エンジンノイズの車内への侵入は大きめ。アイシン製6ATのハードウェアは文句なしですが、シフトアップのタイミングやプログラムの面で、都市部の渋滞で鍛えられた日本車ほどの洗練はありません。時にまごついたり、シフトショックが大きかったりすることも。
また、乗り心地は総じて硬め。ハイドロシトロエンの“雲のような快適さ”は、はなから期待していませんが、路面からの突き上げが強めで、ステアリングホイールへの入力も“生”な感じです。「デザインに注力しすぎて、ドライブフィールのブラッシュアップにまで手が回らなかったのか!?」と苦言を呈したいところですが、でもそれらは、クルマメディア特有の、職業的な粗探しに過ぎません。実用上はなんの問題もないのです。
ひるがえって、オーナーとなった自分を夢想してDS4 クロスバックに接してみると、フロントシートの豊かなクッション感は運転者をリラックスさせますし、クーペルックの上屋にもかかわらず、後席の居住性は、着座位置、スペースとも、大人用として満足いくものです。
リアゲートを開ければ、切り欠きから20cm以上の深さを持つ、使いやすそうなラゲッジルームが広がります。リアシートは6:4の分割可倒式。アームレスト部には、スキー板を差し込むホールも備わります。
こうして見ていくと、DS4 クロスバックのドライブフィールが、外観ほどスペシャルではないからといって、それがナンになるのでしょう!?
もしアナタが、DS4 クロスバックのオーナーになったなら「このクルマ、何?」から始まって、「どうして買ったの?」「乗ってみてどう?」と、さしてクルマに興味がない人たちとの間でも、ハナシが弾むことでしょう。クラブレザーシートの縫製をジマンし、パノラミックフロントウインドウとパリコレの関連性を語り、さらにはリアのドアを開けて、サイドウインドウの鋭い後端を見せて、ビビらせることも可能です。
そのうち「彼は、○○○に乗っている。彼はそういう人だ」(※)と評されるようになるでしょう(もちろん“彼女”でもOK)。クルマから人柄が推定されるなんて、まさに“ガイシャ”に乗る醍醐味ですね!(※○○○には本来「シーマ」が入ります)。
<SPECIFICATIONS>
☆DS4 クロスバック
ボディサイズ:L4285×W1810×H1530mm
車重:1370kg
駆動方式:FF
エンジン:1598cc 直列4気筒 DOHC ターボ
トランスミッション:6AT
最高出力:165馬力/6000回転
最大トルク:24.5kg-m/1400〜3500回転
価格:338万円
(文&写真/ダン・アオキ)
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