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トラックボールにシェルドライブ…「Let's note」25年超の歴史を振り返る

&GP / 2023年2月11日 19時0分

トラックボールにシェルドライブ…「Let's note」25年超の歴史を振り返る

トラックボールにシェルドライブ…「Let's note」25年超の歴史を振り返る

【PRODUCT HISTORY #002】

「Let's note(レッツノート)」シリーズは、パナソニックが1996年から展開してきたノートPCのブランドです。長く愛用してきた人にとっては、まさに定番の一台といったところでしょう。

一方、2022年には「CF-SR」シリーズが発売されるなど、イマドキなデザインへと改良するような新しい動きも見られました。「これまであまり馴染みがなかったけれど、実はちょっと気になった」という人のなかには、20年以上の歴史のなかでどんな変遷を経て今に至るのか、把握できていない人も多いかもしれません。

今回は、Let's noteシリーズの開発に携わるパナソニック コネクトの田中慎太郎氏と上原菜月氏のおふたりにインタビューを実施。同シリーズにおける各時代の象徴的なモデルについて教えてもらいました。

パナソニックコネクトの田中氏と上原氏 ▲Let's noteシリーズの開発に携わるパナソニック コネクトの主幹技師、田中慎太郎氏(左)とデザイナーの上原菜月氏(右)

懐かしいと思う人はもちろん、いま使っている人や新たにPCを新調しようとしている人も、時代ごとのLet's noteの変遷を知れば、より興味が湧くかもしれませんよ。

 

【1996-1998年】シリーズ誕生

「ノートPC」自体が誕生したのは、1980年代のこと——。Let's noteシリーズの歴史は、1996年に発売された「AL-N1」から始まりました。

AL-N1 ▲「AL-N1」

この頃は、他社メーカーとの差別化をするために、意識的にコンパクトなモデルが展開されていたと言います。

パナソニックコネクト 田中氏 ▲パナソニック コネクト 田中氏

「当時、パナソニックの前身である松下電器は、は、小型の“サブノート”に力を入れていました。まだラップトップ型のPCが主力で使える時代ではなかったので、あくまでメインとなるデスクトップPCがあったうえで、サブ用途でラップトップPCを使う。そのような時代でしたよね。当時は1時間ぐらいしか電池がもたないのは普通でした」(田中氏)

AL-N1 ▲「AL-N1」では、タッチパッドが小さめで操作が難しそうだ

かつてのLet's noteシリーズといえば、筐体に厚みがあるのが印象的でした。この構造は、実は筐体の表面積を減らすことで重量を下げるのに一役買っていると言います。

「我々はフットプリントを小さくすると表現していますが、体積が同じであれば、製品の面積を小さくする方が筐体は軽くなります。 Let's noteはフットプリントを最小にすることで、軽量を追求してきました。」(田中氏)

1997年に登場した第2世代モデル「AL-N2」では、タッチパッドの代わりに「トラックボール」が搭載されました。これも筐体に十分な厚みがあったからこそ、実現したもののひとつと言えます。このトラックボールは、シリーズを象徴するアイコンとなっていき、現在の丸い形のホイールパッドにつながっていきます。

トラックボールの画像 ▲小さいタッチパッドの操作性を解消したのが、こちらの「トラックボール」。現在のLet's noteが装備する丸いホイールパッドの原型にもなっている。この写真は1998年発売の「CF-S21」のもの

 

【1998-2001年】ネットワークの発展とスリム化

1998年といえば、Windows 98が登場した時代。PCでは「ネットワーク」がキーワードになっていきました。この頃は、まだ「無線LAN」が普及していない時代でしたが、Let's noteでは「PHS」を使ったコードレスインターネットを提案。「CF-A1」など、先進的なモデルを開発・投入していました。

また、「銀パソ」という言葉が流行ったように、ノートPCの筐体がメタリックなシルバーへと変わっていったのも、この頃でした。こうしたデザインは、今でこそ当たり前に見かけるものですが、その原型はこの頃に生まれたと言えます。

ちなみに、「Let’s note」のロゴも、1999年9月に刷新されました。

 

【2002-2008年】頑丈設計の追求

2002年頃には、OSはWindows XPに。この頃になると「モバイル」での利用スタイルが一般に定着し、それに伴い新たな課題も生まれました。それが「堅牢性」です。実際、通勤・通学時の満員電車内の圧力などによって、ディスプレイが壊れたりした事例もあったとのこと。こうした背景もあり、2002年頃からには、軽く・長時間駆動し・頑丈な機種が登場してきます。

CF-R1 ▲「CF-R1」

2002年3月に発売された「CF-R1」は、なんと重さが約960g。この時代にすでに1kgを下回っていました。マグネシウム合金の採用によって軽量化を図りつつ、ボンネット構造によって堅牢性を高めているなど、多くの人がイメージするであろう「Let's note」らしさが固まってきた一台だとも言えます。

CF-W2 ▲「CF-W2」

同年11月には、12.1型へサイズアップした「CF-T1」も登場。さらに、2003年6月には、その後継機である「CF-W2」が発売されました。同機には、「シェルドライブ」というパームレストがカパっと貝のように開いて、ドライブが現れるというギミックを採用。

シェルドライブ ▲パカッと開く「シェルドライブ」は、CF-W2から採用された特徴的なギミックだ

「シェルドライブを採用することで、側面から飛び出すドライブと比べて、100gほどの軽量化を実現できました。ちなみに、『CF-W2』ではシェルドライブはホイールパッドの左側にあり、ホイールパッドごと蓋が開きましたが、後継機では軽量化を追求し、レイアウトを最適化することで、右側に移りました」(田中氏)

▲2005年発売のCF-W4は右側が開く構造に

ちなみに、2006年がLet's noteシリーズ10周年の節目。この前後で、さらに堅牢性が強化されたモデルが登場していきました。

CF-W4 ▲「CF-W4」

「当時は、首都圏のある鉄道路線の乗車率が非常に高く、“カーブで骨折者が出る”などと言われていた時代でもありました。私の設計としての最初の仕事が、その満員電車に乗って、実際にかかる荷重を計測してくることだったのを覚えています。こうした調査によって、携行しているノートPCに累積100kgfもの荷重が加わっていることがわかったのです。2005年5月に発売した『CF-W4』が“耐100kgf級の頑丈設計”を謳っていたのは、決して数字のキリが良いからではなく、こうしたデータに基づいていたんですよ」(田中氏)

ボンネット構造 ▲CF-W4では、天板のボンネット構造をはじめとする複数の工夫によって、100kgまでの頑丈設計が実現された

同様に、2007年3月発売の「CF-R6」では、76cm落下試験をクリアし、キーボード全面が防滴になるといった進化を遂げました。この76cmという数値も、多くのデスクの高さを実際にメジャーで図って、基準として定めたとのこと。

 

【2009-2011年】サブからメインへ

2009年は、Windows 7が登場した時代。この頃からモバイルノートは、徐々に“デスクトップPCに対するサブPC”という立ち位置ではなくなってきました。OSが成熟し、プロセッサーなどの性能も高まってきたことで、“モバイルノートがメイン”という捉え方ができるようになっていきます。Let's noteは、こうした変化をいち早く捉え、高性能なモバイルノートを追求していったパイオニア的な存在だったと言います。

CF-S8 ▲「CF-S8」

「2009年10月に発売した『CF-S8』では、“標準電圧版”のCPUを先駆的に搭載したことがポイントでした。ただし、これによってデスクトップPCにも引けを取らない性能を実現できる反面、放熱の問題や、バッテリー消費量の増加などの課題も生まれます。S8はこうした部分にチャレンジした一台でした」(田中氏)

ちなみに、いわゆる「タブレットPC」が登場しだしたのも、この頃。Let's noteシリーズとしても、2010年に、画面の向きをぐるっと変えられる2in1型の「CF-C1」が投入されています。

 

【2012-2022年】多様化と洗練

2012年にLet's noteシリーズは15周年を迎えます。性能面の成熟を果たしたノートPCは、ビジネスパーソンの相棒として重要な存在になっていきました。また、2009年頃から「ノマドワーカー」という言葉が登場したように、「働き方の多様化」というトレンドも、この辺りから次第に強まっていきます。

Let's noteシリーズとしても、軽量・長時間駆動・頑丈・高性能という従来の特徴に比べて、「タブレットとしても使える」といった柔軟性や、「外観の格好良さ」などのデザイン性もユーザーから重視されるようになっていきました。ちなみに、タブレットのようにタッチ操作での運用にも対応するWindows 8が登場したのも同年のこと。

「例えば、MR(医療情報担当者)の方なら、病院などで医師に対して営業をするのに、ノートPCの画面に表示した資料を見せますよね。そこで、ノートPCとタブレットPCの2台持ちを選択すると、情報システム担当者からすれば管理が大変になってしまいます。一方、2in1型のノートPCならば、MRの方が携行する機材も1台で済みますし、情シスとしても管理が簡単です。細かいところですが、こうした需要を想定して、2in1型の機種では、タブレット状態で使用するときに、キートップが外れないよう、アイソレーションキーボードが採用されています」(田中氏)

▲アイソレーションキーボードを搭載した「CF-AX2」

▲「CF-AX2」はタブレット状での使用も可能

例えば、2012年発売の「CF-AX2」は、Windows 8を採用したコンバーチブルタイプの2in1ノートPCでした。翌2013年にはフルHDのIPS液晶を採用した「CF-AX3」も発売されました。

また、この頃から画面サイズの大型化もトレンドに。Let's noteとしても、最近では21年6月に加わった「CF-FV」シリーズが、14型かつアスペクト比3:2のディスプレイを備えています。

「『CF-FV』は、従来の13型の筐体サイズに14型のディスプレイを搭載させようと開発したシリーズです。ちなみに、3:2というアスペクト比のメリットは、作業領域が縦に広がるという以外にも、実はオフィスの引き出しには入りやすいというメリットもあるんです」(田中氏)

そして、デザインとしての格好良さや、カバンへの入れやすさなどについても、改良が重ねられてきました。その集大成と言えるのが、2022年に発売された「CF-SR」シリーズです。

CF-SR3 ▲「CF-SR」

「Let's noteシリーズは、2016年に20周年、21年に25周年を迎えました。市場に関しては、ここ数年は特に、在宅ワークが普及し、オフィスがコミュニケーションを生む場として捉えられるようになってきました。いわゆる“多様性”の時代です。そんな時代や、現代のユーザーのスタイルに合った機種を作りたい、と開発したのが『SR』シリーズです。とにかく、支給されたときに嬉しいと思ってもらえるデザインにしたいと思いました」(上原氏)

SRシリーズのデザインを担当した上原氏 ▲SRシリーズのデザインを担当した上原氏

もちろん、SRシリーズでは、単にデザインを刷新したのではありません。Let's noteならではの魅力が損なわれないようにも工夫が凝らしてあるといいます。

「例えば、天面のボンネット構造は、筐体の内側にも工夫を加えました。これによって耐久性を維持しつつも、外観をスッキリした印象に整えています。ホイールパッドも従来より広く配置しました。一方で、ディスプレイの狭額縁を上端まで細くしていないのは、ここにモバイル通信のためのアンテナを配置するのが、通信品質を保つためです。I/Oも従来通り豊富に備えています。長く愛されてきた使い勝手や、これまで培ってきた “Let's noteらしさ” を失わないようにしつつ、その上で“どんなシーンでも働く姿が美しくなるように”という思いを込めています」(上原氏)

*  *  *

ひょっとすると、Let's noteといえば「法人向けの頼れるノートPC」といった印象を抱いている方も多いかもしれません。しかし、同シリーズは、個人向けにも展開されてきたシリーズです。

上述したように、20年以上の歴史を重ねるなかで、徐々にその姿が変化してきたことも分かりますし、昨今は特に、デザイン面での洗練化が目立ちます。法人・個人を問わず、いま改めて注目してみると面白いノートPCだと言えるでしょう。

>> パナソニック「レッツノート」

 

>> 【PRODUCT HISTORY】

<取材・文/井上 晃

井上 晃|スマートフォンやタブレットを軸に、最新ガジェットやITサービスについて取材。Webメディアや雑誌に、速報、レビュー、コラムなどを寄稿する。Twitter

 

 

 

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