ソニー「WF-1000XM5」全方位レビュー。アップル「AirPodsPro(第2世代)」、テクニクス「EAH-AZ80」と比較も
&GP / 2023年9月3日 7時0分
![ソニー「WF-1000XM5」全方位レビュー。アップル「AirPodsPro(第2世代)」、テクニクス「EAH-AZ80」と比較も](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/goodspress/goodspress_553388_0-small.jpg)
ソニー「WF-1000XM5」全方位レビュー。アップル「AirPodsPro(第2世代)」、テクニクス「EAH-AZ80」と比較も
9月1日、ソニーの完全ワイヤレスイヤホン「WF-1000XM5」が発売されました。&GPでは既に7月25日の予約開始日に一度速攻レビューをしているのですが、多機能なソニー「WF-1000XM5」の魅力は語り尽くせていません。
それに完全ワイヤレスイヤホンの定番モデルである、2022年9月発売のアップル「AirPodsPro(第2世代)」や、ライバルと目される2023年6月発売のテクニクス「EAH-AZ80」との違いも気になります。
そこで3機種の実機を用意して、装着感、音質、ノイズキャンセル、接続性、通話音質、空間オーディオ、アプリ機能の7つのポイントで比較してみました。
■7つのポイントで比較
【ポイント1】装着感
ソニー「WF-1000XM5」のアップデートポイントが小型化です。3機種を並べてみてもサイズの違いは一目瞭然ですが、単純なサイズより耳に装着した際の収まり方を語るべきでしょう。
▼ソニー「WF-1000XM5」
▲耳に対する面積の狭さが特徴
小型化した本体から突き出たノズル(イヤーピースの付いている箇所)を耳穴に押し込む耳栓型。小型化した結果、外耳への引っかかりが少なく僕の耳ではイヤーピースの密着がイヤホン全体を支えます。
▼アップル「AirPodsPro(第2世代)」
▲アンテナが伸びる一方、耳への収まりも小さい
ステムと呼ばれるアンテナが下に伸びて、耳の溝に引っ掛けるタイプ。イヤーピースの密着度は低めで、ゆったりしています。
▼テクニクス「EAH-AZ80」
▲耳穴を蓋するような形状。内部の形状で装着は安定
本体サイズこそ一見大きめですが、耳の下側にあるくぼみ(コンチャ)にハマる形で意外と装着時の負担はありません。イヤホン全体で耳穴を蓋するように密閉していて、イヤーピースによる密着は普通程度です。
* * *
どの形が上手くハマるかは人それぞれなので、可能なら3機種とも付け比べを推奨したいところ。快適さの観点では、アップル「AirPodsPro(第2世代)」が装着していて最もラクですね。あと、ソニー「WF-1000XM5」は表面がツルツルしていて、ケースから取り出す際などに落としやすいので気を付けたいところです。
【ポイント2】音質
音楽を聞く完全ワイヤレスイヤホンだけに、音質は常に気になるポイント。ソニー「WF-1000XM5」とテクニクス「EAH-AZ80」はLDACコーデック対応で、Androidスマホではワイヤレスでも高音質リスニングが可能です。
▲3機種で音質比較。LDACコーデック対応のスマホ「Xperia 1Ⅳ」で試聴
ソニー「WF-1000XM5」は音の広がりと浮かび上がるボーカル、楽器も音数多く空間再現に長けた臨場感タイプ。リズムを刻む低音も気持ちいいサウンドです。
テクニクス「EAH-AZ80」は解像度重視のモニター系で、中高域の再現が精緻かつ高域まで鮮やか。低域は情報より量感志向といったところ。
これら2機種と比較してしまうと、アップル「AirPodsPro(第2世代)」は中音域の音の細やかさと低音に不足を感じてしまいます。
高音質重視ならソニー「WF-1000XM5」かテクニクス「EAH-AZ80」。この2機種ではサウンドの方向性が異なるので、好みに合う方を選んでほしいところです。
【ポイント3】ノイズキャンセル
ソニー「WF-1000XM5」が“世界最高ノイキャン”を打ち出したこともあって、ノイズキャンセルの強度も比較したいポイント。走行中の電車内でそれぞれを実際に試してみます。
▲電車内で3機種のノイズキャンセル性能をテスト
ソニー「WF-1000XM5」は前作より騒音低減はアップしバランス良く騒音を低減するタイプ。ですが、イヤホンが小さくなったためか、密閉度不足を感じるところも。
アップル「AirPodsPro(第2世代)」は、高いノイキャン性能が健在。耳の密閉度は低くても低域の騒音などを強烈に消して強力ですが、その分違和感も大きめです。
テクニクス「EAH-AZ80」は、耳の密閉度具合と、特に高域に低域にしっかり効く騒音低減がバランス良くトータルで優秀。
3機種ともノイズキャンセル性能はトップグループ。騒音の種類や耳の形状、密閉具合、違和感をどれだけ重視するかで選びましょう。
【ポイント4】接続性
完全ワイヤレスイヤホンの使い勝手を左右する、Bluetoothの複数台同時接続のマルチポイント接続機能も実は昨今のトレンド機能。
ソニー「WF-1000XM5」は2台同時に接続したままにできるマルチポイント接続で優秀。しかし、さらにその上をいくのがテクニクス「EAH-AZ80」で、3台マルチポイント接続対応でトップ。3台接続時はLDACコーデックを使えない制約がありますが、2台接続時の機能は共通です。
一方、アップル「AirPodsPro(第2世代)」はマルチポイント接続ではないのですが、アップル製デバイス間ではポップアップ画面でスムーズに切り替えできるという他社にない利便性を提供しています。iPhone、iPad、Macなどアップル製品で揃えているなら使い勝手はいいですね。
また、ソニー「WF-1000XM5」はベータ版の機能として新世代のBluetooth接続方式であるLEオーディオ(LC3コーデック)に対応しています。こうした先進機能に魅力を感じるならソニー「WF-1000XM5」がイチオシです。
【ポイント5】通話音質
昨今は、完全ワイヤレスイヤホンの通話機能が、ビデオ会議などでの利用機会が増えています。
▲ビデオ会議でマイク音質をテスト
ソニー「WF-1000XM5」はAIによる高精度ボイスピックアップテクノロジーと骨伝導センサーもあって、通話音声の情報の細かさ、声の厚みなど素直なマイク音質の良さが優秀。
一方、アップル「AirPodsPro(第2世代)」は人の声をピンポイントでクリアに拾うボイスピックアップが強力で、通話相手に声を届けることを重視するならトップです。
テクニクス「EAH-AZ80」も「JustMyVoice」の機能がありマイク音質は十分良いですが、ソニー、アップルが若干リード。ただ、あくまで3機種比較の結果で、通話音質はどれでも十分高音質ですね。
【ポイント6】空間オーディオ
新トレンドの機能として、空間オーディオ機能もチェックしてみました。ちなみにテクニクス「EAH-AZ80」はこれに類する機能はないので比較対象外です。
ソニー「WF-1000XM5」といえば、AmazonMusicで配信中の「360 RealityAudio」対応。一方、アップル「AirPodsPro(第2世代)」はAppleMusicで「ドルビーアトモスによる空間オーディオ」を配信しています。
▲ソニー「WF-1000XM5」は「360 RealityAudio」
▲アップル「AirPodsPro(第2世代)」はAppleMusicで「ドルビーアトモスによる空間オーディオ」
ただしソニー「WF-1000XM5」は意外と制約が多く、AmazonMusicでは個人最適化は不可(Deeserのみ対応)、ヘッドトラッキング機能はAndroidの一部スマホかつYouTubeのコンテンツのみになります。
アップル「AirPodsPro(第2世代)」はiPhoneユーザーならメジャーなAppleMusicで使えてヘッドトラッキングも有効。またNetflixやPrimeVideoの作品も空間オーディオによりサラウンドで視聴でき、臨場感抜群で非常に効果的です。
▲アップル「AirPodsPro(第2世代)」はNetflixでも使える空間オーディオがとても有効
利用シーンを考えると空間オーディオ関連はアップル「AirPodsPro(第2世代)」がよく整備されていますね。
【ポイント7】アプリ機能
アプリによるカスタマイズ機能もチェックしてみました。
ソニー「WF-1000XM5」はアプリの多機能が特徴。
▲ソニーのアプリ「Headphones Connect」
外音取り込みの取り込み量カスタマイズ、イコライザーの開放、アダプティブ・サウンド・コントロールによる切り替えの設定など様々な設定が可能。「ファインド・ユア・イコライザー」という音質カスタマイズを手助けしてくれる機能も搭載しています。
アップル「AirPodsPro(第2世代)」はiOSに設定画面が組み込まれていてボタン操作等はカスタマイズ可能ですが、ノイズキャンセル強度調整はなく、音質カスタマイズ機能も限定的。
テクニクスはオーディオ関連のカスタマイズが充実。
▲テクニクスのアプリ「Technics Audio Connect」
特にノイズキャンセルを100段階で調整可能というところは、あの違和感が苦手という人には嬉しい機能。イコライザーもプリセット、カスタマイズともに揃っています。
アプリはどんな機能が欲しいか次第ですが、ソニー「WF-1000XM5」はアプリ自体の操作性も含めて最も良く作り込まれています。
<取材・文/折原一也>
折原一也|1979年生まれ。PC系出版社の編集職を経て、オーディオ・ビジュアルライター/AV評論家として専門誌、Web、雑誌などで取材・執筆。国内、海外イベント取材によるトレンド解説はもちろん、実機取材による高画質・高音質の評価も行う。2009年によりオーディオビジュアルアワード「VGP」審査員/ライフスタイル分科会副座長。YouTube
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